日刊鹿島アントラーズニュース

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2019年11月12日火曜日

◆“追われる”から“追う”へ。それでも、鹿島に負の空気が漂わない理由(GOAL)






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 鹿島アントラーズは9日の明治安田生命J1リーグ第31節で川崎フロンターレに0-2で敗戦。10試合ぶりの黒星を喫し、首位からも陥落した。優勝レースにおいて“追われる立場”から“追う立場”になってしまったが、鹿島の選手・監督からはまったく負の空気は漂わない。勝負はここから――。そう前向きに考えることができるのは、なぜなのか。そこには鹿島ならではの確かな強みがあった。【取材・文=飯尾篤史】


■自滅に終わった川崎戦





 したたかで勝負強い鹿島アントラーズと、圧倒的な攻撃力を誇る川崎フロンターレ――。その両者が、まるで入れ替わったような展開だった。

 首位に立つ鹿島と、逆転優勝の可能性をわずかながら残す川崎との一戦は、多彩な攻撃を仕掛けた鹿島が決定機を何度も作り出していた。

 だが、勝ったのは、劣勢だったはずのアウェーチームだった。

 耐え凌ぎながらセットプレーから先制すると、反撃に出る相手をいなし、カウンターからダメ押しゴールを奪ってみせた――。

 まるで往年の鹿島のような試合巧者ぶりを発揮した川崎が、優勝戦線に踏みとどまると同時に、鹿島を首位から引きずり落としたのである。

 「1週間準備をしてきた展開に持ち込めたのですが、単純なセットプレーと自分たちの攻撃時のセットプレーからのカウンターで失点してしまった。ビッグゲームでは1点が重要になると常々言っていたのですが……」

 そう悔やんだのは、大岩剛監督である。先制される62分までは間違いなく鹿島のペース。伊藤翔、レオ・シルバ、セルジョーニョが迎えた決定機をモノにしていれば、スコアがひっくり返っていても不思議ではない。それだけに、鹿島の自滅と言えた。


■いま、思い起こす3連覇の経験





 残り4試合で迎えた大一番で、お株を奪われるような展開で敗れたことをどう見るか――。

 ACL、ルヴァンカップに続き、リーグタイトルまで逃してしまうのか、かつてのような勝負強さを失いつつあるのか……。

 「なに、みなさん、暗い感じで」

 囲み取材における、しんみりとした雰囲気を振り払ったのは、この日2試合ぶりに先発出場を果たした内田篤人である。

 「大事なのは、最後にどこにいるかだから。今日も内容は良かったし、終わったなっていう(首位との)勝点差でもない。上と3差。残り3試合。あるでしょ。俺が上にいたら、残り3つもかって思うもん。チャンスは全然あると思うよ。そういうなかでも勝ってきたからね、先輩たちは」

 なるほど、たしかに3連覇を飾った07年、08年、09年シーズンも鹿島は首位を独走したわけではない。07年は最終節で浦和レッズを抜いて逆転優勝を飾り、08年は28節になって首位に躍り出た。09年も28節終了後に首位の座を明け渡したものの、32節で再び首位に浮上し、3連覇にこぎつけた。

 その3連覇を、内田とともに選手として経験した大岩監督は、試合後のロッカールームで選手たちにこう語りかけたという。

 「残り3つ、勝てば絶対に上にいる。冗談じゃないよ。信じていいから」

 まさに、勝負はここから――。その肌感覚を、日本で最も多くのタイトルをチームに獲らせてきたサポーターも十分理解しているようだ。痛み分けに終わった川崎との前回対戦や、同じくドローに終わった前節の松本山雅FC戦のあとには厳しい声が飛んでいたが、この日はチャントを歌って選手たちを鼓舞し、励ましていた。


■重要なのは負けたあとの切り替え





 残り試合を見ると、3位の鹿島はサンフレッチェ広島、ヴィッセル神戸、名古屋グランパスと、首位のFC東京は湘南ベルマーレ、浦和、横浜F・マリノスと、2位の横浜は松本、川崎、東京と顔を合わせる。

 最終節に直接対決が残っていることからも、ドラマティックなエンディングが用意されていそうな雰囲気が漂っている。このまま終わりそうもないぞ、というような。

 鹿島が今、2003~06年、13年~14年のように世代交代の時期に差し掛かっているのはたしかだろう。いや、小笠原満男というリーダーが引退し、親会社が変わり、チームの中心となるはずの若い選手たちが海外に飛び出して行った今は、単なる世代交代よりもずっと難しい時期に差し掛かっている。

 それでも、タイトルが獲れるかどうか――。

 「鹿島は負けたあとの切り替えが一番うまいチーム」と内田は胸を張る。日本で最も多くのタイトルを獲得してきたが、すべてのタイトルを獲ったわけでない。逃したタイトルも少なくないが、それでも20冠を成し遂げられたのは、気持ちの切り替えがうまいからだと言うのだ。

 「タイトルを獲れなかったあとの1週間の準備と次の試合がどれだけ大事か、クラブとして分かっている」

 まさに鹿島は今、次の広島戦までの2週間をどう過ごすのかが問われている。そして残り3試合で常勝軍団たるゆえんを見せつけられるか。

 鹿島にとって、威厳とプライドと未来を懸けた3試合になりそうだ。

取材・文=飯尾篤史


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