◆◆サッカーダイジェスト / 2020年6月25日号
これまでやっていたサッカーで一番手応えを感じた
5月28日発売のサッカーダイジェストでは、「Jリーグ歴代最強チーム」と題し、現役選手や元日本代表など総勢50名に“歴代で最強だと思うチームトップ3”を選んでもらっている。ここでは鹿島や浦和で計10個の主要タイトルを獲得してきた興梠慎三(浦和)の“トップ3”を紹介しよう。
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「興梠慎三が選ぶ“最強チームトップ3”」
1位:2016年の浦和レッズ
2位:2009年の鹿島アントラーズ
3位:2003年の浦和レッズ
トップ2は僕が在籍していたチームから選びました。
1位は16年の浦和。年間勝点74はリーグトップで、クラブでも歴代最多と、その数字が強さを物語っています。当時はミシャ(ペトロヴィッチ監督)のサッカーがハマって、負ける気がしませんでした。前年までに築いた自慢の攻撃力はそのままに、この年は守備も整備され、リーグ最少失点も記録しましたから。
守備を安定させたという点で(遠藤)航の加入は大きかった。後ろからうまくバランスを取ってくれました。でも守備だけでなく、なによりミシャのサッカーはなにより、どこからでも崩せるのが特長で、誰かが飛び抜けていたわけではなく、全員が活躍していた印象です。
(駒井)善成の仕掛けも頼もしかったし、俺とチュンソン(李忠成)、武藤(雄樹)のトリオも相手にとっては嫌だったはず。たしか「KLM」とかって呼ばれていたなあ(笑)。
またなんと言ってもチームの一体感を生み出したミシャの手腕が素晴らしかったです。チャンピオンシップの決勝で鹿島に負けてしまったけど、僕がこれまでやっていたサッカーで一番手応えを感じていました。プレーしている僕らも楽しかったし、おそらく観ているファン・サポーターも面白かったと思う。そういう意味で僕のベストチームです。
その浦和と同じくらい強かったのが、リーグ3連覇を果たした時の鹿島です。正直1位はどちらにしようか迷いました。この年の鹿島もほとんど負ける気がしませんでしたから。相手から対策されていたけど、まったく苦にならなかったんですよね。
09年の鹿島はタレントも揃っていた
普通は1、2点差では気が抜けないけど、当時は1点取ったら「あ、この試合は勝ったな」って自然と思えるような。そんな心の余裕がありましたね。
タレントも揃っていました。前年に連覇した時のメンバーがほとんど残っていて。例えばFWだったらマルキ(マルキーニョス)と俺がレギュラーで、その他にも(田代)有三さんがいて、大迫(勇也)が新人として入ってきて。誰が出ても同じように質の高いサッカーができたし、ハイレベルな競争が生まれていました。その緊張感が結果につながったんじゃないかな。
なかでもマルキは凄かったです。大事なところでしっかりと点を取ってチームを勝たせられるし、難しいクロスも簡単に合わせて決めてしまう。スーパーシュートも多くて、まさに頼れるエースって感じでした。
3位には、観戦者目線で03年の浦和を選びました。鹿島とのリーグカップの決勝を観て、かなり驚いたのを覚えています。なんといっても、あの2トップが本当に凄まじかった。エメルソンと田中達也さんです。
ふたりともスピードが抜群で、決定力も高い。特にエメルソンを初めて見た時の衝撃は今でも忘れられません。当時僕は高校生で鹿島入りが内定するくらいの頃だったんですけど、「この世界でやるのか」って思わされました。不安半分、楽しさ半分みたいな感じでしたね。
アラウージョやフェルナンジーニョと強烈な助っ人が揃っていた05年のガンバも候補に挙がりましたけど、エメルソンと達也さんの2トップがいた頃の浦和には、それ以上のインパクトがありました。
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取材・文●多田哲平(サッカーダイジェスト編集部)