日刊鹿島アントラーズニュース

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2020年7月3日金曜日

◆ザーゴ監督が刻んだ日本語タトゥー。 「父」への思いと鹿島変革への誓い。(Number)







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 右の手首には、「父」という日本語が刻まれている。

「18年前、父が亡くなったときにこのタトゥーを刻みました」

 今季から鹿島アントラーズの監督に就任したザーゴにとって、日本という国は幼少のころから身近な存在だったという。

「僕はサンパウロの片田舎の生まれなのですが、祖父の農家の隣に日本人が住んでいて、小さいときから日本の文化や教養にふれる機会が多くありました。ブラジルにも日本人の友達がいて、小さいときから日本は身近な存在でした。もともと非常にいい印象を持っていて、現役時代も一度は日本でプレーしたいと思っていたんです」

 実際に1996~'97年に柏レイソルでプレーし、今回が23年ぶりの来日となった。


「いつでもお寿司を食べられる」


 お寿司が大好きだ。毎年恒例となるシーズン開幕前の宮崎キャンプでは、「監督はガリまで食べるんですよ」とスタッフが笑顔を見せたほど。

「ブラジルでも週2、3回は寿司を食べに行っていました。日本では毎日食べられて、スーパーでも売っています。いつでもお寿司を食べられるのがとてもうれしい。寿司だけでなく、日本食は健康的で大好きなんですよ」

 まだ日本での生活は半年と経っていない。それでも日常の話を聞けば笑顔がこぼれる。


ブラジル代表で優勝、指導者にも恵まれた。


 現役時代は、選手としてブラジル代表まで上り詰めた。1999年のコパ・アメリカでは優勝を経験。ロナウド、ロナウジーニョ、リバウド、ロベルト・カルロス、カフーなど、名だたるメンバーとともに南米制覇を果たしている。

 指導者にもめぐまれた。

「選手時代はブラジルだけでなく、スペイン、日本、イタリア、トルコでプレーする機会を得ました。そこですばらしい指導者たちに出会いました。テレ・サンターナ、ファビオ・カペッロ、ズデネク・ゼーマン、そしてミルチェア・ルチェスク。彼らに共通していたのは、 勝利を追求するとともに、華麗なサッカーを展開することでした。ボールをつなぎ、試合を支配し、攻撃的な展開をしていく。選手時代はDFでしたが、その美しいサッカーに魅了され、指導者としての礎にもなっています」

 2009年、ブラジルのサンカエターノで指導者のキャリアをスタートさせると、ブラジル国内の各クラブで監督を経験し、イタリアのローマ、ウクライナのシャフタール・ドネツクではアシスタントコーチを務めた。シャフタールにはブラジルの若き有望な選手たちが集まり、活躍すればヨーロッパのビッグクラブへ移籍していくステップアップの場だったこともあり、若き才能を伸ばすことの意義を、身をもって学んだ。


ユース交流を活発化、新たな鹿島を。


 その姿勢はアントラーズの監督に就任しても変わらない。

 ユースとの交流を積極的に取り入れ、ユース選手の練習参加、ユースチームとの練習試合など、アカデミーとの連携はより活発化している。各選手の評価は中村幸聖ユース監督や小笠原満男テクニカルアドバイザーにフィードバックとして伝え、アカデミーの監督・コーチも中断期間に練習やトレーニングマッチを可能な限り見学するようにした。

 鹿島はアジアでの勝利、そしてその先にある世界を見据えて、今季を変革の初年度と位置づけた。強化のトップを務める鈴木満フットボールダイレクターは、「家に例えるならリフォームではなく、新築。大胆な改革の必要性を感じています」と語る。

 一貫した強化体制の構築を目指し、トップとアカデミーの全監督・コーチが集うクラブ内の組織「アントラーズ技術委員会」では、ザーゴ監督自らが自身の展開するサッカーの方向性について講義した。トップチームからアカデミーまで、全体でニュースタイルの共有を進めているところだ。


「チーム作りに魔法はない」


 改革の先頭に立つザーゴ監督自身は、「チーム作りに魔法はない」と考え、一つひとつメソッドをチームに落とし込んでいる。トレーニングの様子を撮影し、ミーティングでは選手たちが身につけてほしいことを映像に落とし込んで、可視化して伝えている。

「今シーズンは、自分たちからアクションを起こし、相手を動かしながら試合の主導権を 握るようなスタイルを目指しています。昨シーズンまでのリアクションを主体としたサッ カーとは大きく異なるので、練習メニューや映像分析を通じて多角的にアプローチしています」

 新型コロナウイルス感染症拡大防止のために、公式戦は中断した。試合ができない。練習ができない。先の見えない不安を抱えるなか、それでもザーゴ監督はポジティブに捉えた。中断期間中もオンラインでのミーティングや分析映像を通じてイメージを共有。スタイルの浸透に時間を費やした。


「中断期間は、すごくいい時間を過ごせました。今後対戦することになるチームの映像を数多くチェックすることができて、コーチ陣とさまざまな意見交換をしました。僕自身、かなりの量の情報をインプットすることができました。そして、チームコンセプトの確認です。中断前までにできていたこと、できなかったこと。これらを整理して、チームの戦い方における全体的なイメージをスタッフ全員で共有しました。チームの全体練習が再開されるまでに、選手たちへ要求する内容やテーマをコーチ陣のなかで統一することができました」


鹿島の選手は「プロフェッショナル」。


 5月28日、およそ2カ月ぶりに全体練習を再開した。

 世界で数多くのチームを率いてきた指揮官から見ても、再開後の選手たちの姿は驚きと頼もしさに満ちあふれていたという。

「もともと非常に高い意識と意欲を持って選手たちは日々のトレーニングに取り組んでくれていましたが、活動再開のタイミングで彼らを目にしたとき、『アントラーズの選手たちは“スーパープロフェッショナル”だな』と感じました。彼らの姿勢を見て、監督として非常にうれしく思いました。そのおかげで、活動再開後は非常にいいトレーニングをこなすことができています。監督である私も、心から公式戦の再開が待ち遠しい思いです」


左腕に刻みたい「母」の文字。


 中断期間中の4月6日、ザーゴ監督の母が亡くなったという報が伝えられた。

「残念ながら帰国できず、いまだに会えていません。僕は1人っ子なので、両親がしてくれた教育というものは頭や体に染み付いていて、常にそれに対する敬意を持っています。思い出はすべて頭のなかにあります」

 次にブラジルへ帰ったとき、決めていることがある。

「右腕に刻んだ『父』の文字は、記念にいつも思い出すために刻みました。同じように、逆側の左腕に『母』と刻むつもりです」

 2019年、ブラガンチーノでブラジル2部リーグを制した。ザーゴ監督は、楽しみにしている。母の墓前で国をまたいだリーグ連覇を報告することを。そして、左手首に「母」の一文字を刻むことを。


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