日刊鹿島アントラーズニュース

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2021年5月17日月曜日

◆鹿島、横浜FMに大勝!(サッカー批評)






■5月15日/J1第14節 鹿島アントラーズー横浜Fマリノス(カシマ)


土居聖真のハットを呼び込んだ「後半の戦術変更」


 Jリーグの誕生日である5月15日に、鹿島アントラーズが横浜Fマリノスをホームに迎えた“オリジナル10対決”は派手な打ち合いとなった。

 白のユニフォームに身を包んだトリコロール軍団が先制したが、その後鹿島が5得点を奪って大勝してみせたのだ。相馬直樹監督が就任してこれで公式戦無敗試合数は「9」。リーグ戦の連勝は「4」に伸びた。

 11試合無敗の横浜Fマリノスと、相馬監督就任後の公式戦9試合で6勝3分と無敗で推移する両チームの激突は、試合開始直後から激しい展開となった。互いに激しくプレスをかけてボールを奪いにかかり、中盤では激しいぶつかり合いが展開された。マリノスはサイドからFW前田大然やFWエウベルがドリブルで仕掛ければ、鹿島はサイドに人数を密集させてレーン移動のパスを織り交ぜながら前進しようとした。

 そんな試合で先制したのはアウェイチームだった。DF町田浩樹を振り切って左サイドを突破したエウベルが中にクロス。これをFWオナイウ阿道が頭で合わせたのだ。ここ3試合を完封していた鹿島としては難しい展開になるかと思われたが、“常勝軍団”の復活を期す名門は流れを引き寄せる術を取り戻している。40分、伝統の8番を背負うFW土居聖真がセットプレーの流れから得点。試合をイーブンに戻して見せたのだ。


■土居にとってプロで初めてのハットトリック


 前半は互いに激しさを見せながら1-1で折り返し、後半も同じ展開が繰り広げられるかと思われたが、後半開始わずか30秒ほどで鹿島がスコアを動かした。MF白崎凌兵のスルーパスに抜け出した土居がGKとの1対1を冷静に決めてこの日2点目。横浜Fマリノスをリードする展開に持ち込んだ。

 さらにその5分後には、土居の裏へのパスに抜け出したMF松村優太が、DFティーラトンに倒されてPKを獲得。キッカーとなった土居がこれを左隅に決め、リードを2点に広げる。この試合で最前線起用された8番は、これでこの日3得点目。土居にとってはこれがプロで初めてのハットトリックとなった。

 その2分後に今度はMF荒木遼太郎がゴールを決めてリードをさらに広げると、74分にオナイウに1点を返されたものの、3分後に今度は途中出場のFW上田綺世が得点を決めて横浜を突き放す。試合終了間際に横浜FマリノスのMF天野純にさらに1点を返されながらも、終わってみれば5-3で勝利。圧巻の得点力で、J2に降格経験のない“オリジナル10”のチーム同士という唯一のカードを制したのだ。

 前半の激しいぶつかり合いから一転、後半開始直後に立て続けに得点を決めて試合の流れを一気に引き寄せた鹿島。実は、前半と後半で戦い方を変えていた。


■前半と後半の戦い方の違い


 前半と違い、後半の鹿島は徹底してマリノスの背後を狙い続けた。土居の2点目は白崎凌兵が相手選手を引き付けながら裏にスルーパスを出して、土居が抜け出したもの。PKを獲得したのも、松村優太の裏へ抜け出す動きに合わせて土居が裏にスルーパスを出したところからだった。さらに荒木のゴールも、レオ・シルバの右サイドからのグラウンダークロスを蹴り込んだものだが、レオ・シルバが右の裏を突いたことでできたチャンスを生み出した結果だった。

 こうした得点シーン以外にも、鹿島はマリノスの背後を狙って繰り返しチャレンジした。その結果が、後半開始直後の連続得点につながったのだ。

 前半も背後を狙うことはあったが、回数自体は非常に少なかった。むしろ、サイドでボールを回そうとする動きが優先され、最初の20分間で早めに背後を突いたシーンは13分の土居、16分の松村などわずかしかない。ただ、この2回はチャンスになっていたため、それをしっかりと狙っていったのだ。

 この試合に集まった観客数は1万1630人。今季最多となるサポーターに、見事なゴールショーを披露してみせた。5得点は今季最多得点。常勝軍団としての姿を取り戻しつつある。今季のザーゴ鹿島では見られなかった躍動が、選手に見られた試合でもあった。


4連勝の相馬アントラーズ「ザーゴ鹿島と違うもの」


 前半と後半で違った戦い方を見せた鹿島は、今季最多得点となる5ゴールを奪ってみせた。さらにFW土居聖真のハットトリックという豪華なおまけまで付き、チームとしてはこれで4試合連続で複数得点を奪ったことになる。好調な“相馬アントラーズ”はますます加速しそうだ。

 ザーゴ体制での今季のリーグ戦成績は2勝2分4敗と、8戦してわずか2勝。昨季の5位という成績を考えれば今季は優勝争いが求められていたが、それからは遠い戦績だった。そんな低迷から一転、4月17日に行われた徳島との初陣で完封勝利を収めると、公式戦を合わせて今も続く無敗を継続。リーグ戦の戦績は5勝1分0敗とまさにV字回復。

 さらに、ゴール数も増えて直近4試合で複数得点を奪っている。ザーゴ時代の8戦での1試合平均得点数が「1.25」なのに対し、相馬体制での6戦でのその数字は「2.5」。これは、リーグを独走する川崎フロンターレも視野に入る数字だ。


■現時点で見せる戦術的な柔軟性


 では、ザーゴ鹿島と相馬アントラーズではいったい何が違うのか。まず挙げられるのが、切り替えの早さだ。ザーゴ前監督も重要視していた部分ではあるが、今季はここでパワーを見せられなかった。たとえばこの横浜Fマリノス戦は、相手が強く来るチームということもあってか、そこでの切り替えはとても速かった。

 また、先述の柔軟性も挙げられる。この試合では、前半は横浜Fマリノスが求める“激しい展開”に引っ張られて相手にペースを与えてしまった部分があった。マリノスとしては、オープンな展開に相手を引き込むことで、そのスピード感の中で優位性を保ちたいという狙いがある。しかし、それを逆手に取って、後半は裏を突いていった。相手のプレスが激しく来ることから、引き寄せてスペースを作ることができていた。

 さらに言えば、前節の名古屋戦では今節とは異なるスターティングメンバーで戦った。名古屋戦と横浜Fマリノス戦の両方で先発したのは5人。過密日程の中を考慮して選んだことはもちろんだが、半数以上が変わる中で、戦い方も変えた。鹿島では右サイドバックで起用されることの多かった小泉慶をトップ下で起用。もともとはボランチの選手だった小泉を1トップの土居聖真の下で使うことで、その運動量で前線に繰り返し飛び出すのと同時に、前線での守備で相手に“圧”を感じさせたのだ。


■相馬監督「鹿島はチャレンジャー」


 相馬監督が就任してから1か月が経つが、それ以来、過密日程が続いており、おそらく戦術面では完全には落とし込めてない部分もあるだろう。それにもかかわらず、今季2勝しかしていなかったチームを6戦で5勝に導いた。名古屋戦では、2位のチームにシュートを1本も撃たせない完全ゲームまで達成してみせた。

 それでも、まだまだ前進する余地がある。MFピトゥカやMFカイキといった新加入外国人選手がさらにチームに溶け込むことで違ったクオリティを出せることはもちろん、戦術の浸透が進むことでさらに強さと対応力を発揮してくることだろう。

 また、この日PKを奪った松村優太や得点を決めた荒木遼太郎といった若手は、戦術が整理された今のチームのほうが、生き生きとプレーしている。さらなる成長が、チームの戦力を底上げしてくれるはずだ。

「自分たちがやれることをすべてやろう、ぶつけよう。チャレンジャーとして、今できることをすべてぶつけよう」

 相馬監督は、こう言ってトリコロールとの試合のピッチに選手を送り出したという。チャレンジャーとして高みを目指す鹿島が、“常勝軍団”の名を再び取り戻してみせる。


◆鹿島、横浜FMに大勝!(1)土居聖真のハットを呼び込んだ「後半の戦術変更」(サッカー批評)
◆鹿島、横浜FMに大勝!(2)4連勝の相馬アントラーズ「ザーゴ鹿島と違うもの」(サッカー批評)






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