日刊鹿島アントラーズニュース

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2021年7月15日木曜日

◆【月間表彰】「常勝クラブ」のゴールを守る21歳 鹿島GK沖悠哉を元日本代表の守護神が絶賛するワケ(THE ANSWER)






スポーツチャンネル「DAZN」とパートナーメディアで構成される「DAZN Jリーグ推進委員会」との連動企画で、元日本代表GKとして活躍した楢﨑正剛氏は6月のJリーグの「月間ベストセーブ」に鹿島のGK沖悠哉選手を選出。名門クラブのゴールマウスを守る21歳を高く評価するワケとは――。(取材・文=藤井雅彦)




6月のベストセーブは「クロスからのシュートセーブ」 その選出理由は?


 スポーツチャンネル「DAZN」とパートナーメディアで構成される「DAZN Jリーグ推進委員会」との連動企画で、元日本代表GKとして活躍した楢﨑正剛氏は6月のJリーグの「月間ベストセーブ」に鹿島のGK沖悠哉選手を選出。名門クラブのゴールマウスを守る21歳を高く評価するワケとは――。(取材・文=藤井雅彦)

 6月の「月間ベストセーブ」を選ぶにあたり、楢﨑氏は対象試合をチェックしていた。候補となるシーンと選手をいくつかピックアップ。すると共通点があることに気づいた。

「セットプレーも含めて、偶然にもクロスからのシュートを止めるシーンを多く選んでいました。横からのボールは目で追いにくく、ポジション修正も難しい。サッカーではよくあるシチュエーションですが、実はGKの真価が問われます」

 ベストセーブに推挙したのは、6月20日の第18節鹿島アントラーズ対ベガルタ仙台での鹿島GK沖悠哉のセービングだ。

 スコアレスで迎えた34分、仙台が左CKを獲得。キッカーのMF関口訓充がニアサイドに鋭いボールを送り、マークをかいくぐったDF平岡康裕が頭で合わせる。このボールが沖の目前でFW西村拓真に当たり、コースが変わった。突然の出来事だったが、沖は瞬時に反応して右手一本で弾き出すことで難を逃れた。

 このシーンを楢﨑氏が分析する。

「まずCKの性質として、守備側はニアサイドの対応がとても難しい。あえてニアサイドのゾーンに人を割いてボールを跳ね返すのがセオリーですが、質の高いボールを入れられて、中に入ってくる選手とタイミングが合えばシュートを打たれてしまいます。それに対してGKは準備時間が少なく、このシーンのようにスクランブル状態のゴール前でイレギュラーなコース変化が起きることもあります。自分のタイミングで守れないという点で、高度なスキルを求められるセービングです」

 一度はシュートに反応するも、不意にコースが変わる。場合によってはお手上げになってしまうこともあるが、沖のセービングシーンでは幸いにも守備範囲内だった。

「体の近くにボールが飛んできたので運が良かった部分もありましたが、それでも反応が遅ければ弾くのは難しかったでしょう。反射神経や動物的な勘が求められ、ゴールの外にボールを弾く動作も簡単ではありません」

 プロ4年目の沖は鹿島アントラーズの育成組織出身で、今季は開幕から全試合ゴールマウスを守っている。東京五輪に出場するU-24日本代表の最終選考にも残っていたように世代を代表するGKの一人で、アグレッシブなプレーが持ち味の選手だ。伸び盛りな21歳のGKは百戦錬磨の楢﨑氏の目にどう映っているのだろうか。

「試合経験を重ねて大きく伸びているタイミングだと思います。もともとのアグレッシブなプレースタイルに加えて、安定感を向上させてコンスタントに力を発揮できれば、もっと上を目指せる選手になれるでしょう。そして鹿島という常勝クラブで若くしてゴールマウスを守るのは大きな責任やプレッシャーがあるはず。以前、ソガ(曽ヶ端準)と話した時にそういった精神面の重圧について話していました。沖選手にはそのプレッシャーに打ち克ち、日本を代表する選手になってもらいたい」


他にも似たシーンが! 朴一圭、前川黛也のパフォーマンスにも注目すべし


 未来を担う若手GKにエールを送った楢﨑氏は、6月度の次点セービングについても熱く語った。

 まずは6月23日の第19節横浜F・マリノス対サガン鳥栖の一戦から。67分、FWマルコス・ジュニオールとのワンツーで抜け出したFWエウベルの折り返しをFW前田大然がダイレクトで合わせたが、鳥栖のGK朴一圭が左足を出してブロックした。

「このシーンは相手の攻撃にスピードがあり、守備側の選手の戻りが遅れていました。ゴール前には相手選手が2枚くらいフリーの状態で、はっきり言ってGKとしてはかなり難しい。その中でも、どちらの選手に合わせて来る確率が高いか、そして防ぎやすいかをイメージしながら、ボールの軌道に合わせてシューターの狙いを定めたはずです。そういった予測があったからこそ勝負になり、好セーブが生まれました。朴選手からすると『してやったり』だと思います」

 さらに6月23日の第19節横浜FC対ヴィッセル神戸における開始早々のシーン。立ち上がりの3分、横浜FCはDF高木友也が左サイドからクロスを送り、ファーサイドに走り込んだFWクレーベがヘディングシュートを放つ。これに対してGK前川黛也は自身がポストに衝突しながら身を挺してゴールを守ることに成功した。

「ヘディングシュートにはいろいろな種類があって、ゴールライン上でとどまって対応するほうがセーブしやすい場合があります。距離を詰めるのとは逆に、横に動いてセーブするための時間を稼ぐという考え方です。前川選手はどうしてもお父さんが元日本代表ということで比較されがちですが、お父さんがクラシックなスタイルなのに対して、とても現代的なGKというイメージがあります。コンスタントに試合出場を重ねることで自信をつけていると思いますし、攻撃陣にタレントが揃っているヴィッセル神戸というチームで守備の重要性を体現している選手です」

 沖悠哉、朴一圭、前川黛也。Jリーグを盛り上げる守護神たちが最後尾に構えている。

■楢﨑正剛
 1976年4月15日生まれ、奈良県出身。1995年に奈良育英高から横浜フリューゲルスに加入。ルーキーながら正GKの座を射止めると、翌年にJリーグベストイレブンに初選出された。98年シーズン限りでの横浜フリューゲルス消滅が決まった後、99年に名古屋グランパスエイトへ移籍。2010年には、初のJ1リーグ優勝を経験し、GK初のMVPに輝いた。日本代表としても活躍し、国際大会では2000年のシドニー五輪(OA枠)、02年日韓W杯などに出場。19年1月に現役引退を発表し、現在は名古屋の「クラブスペシャルフェロー」に加え、「アカデミーダイレクター補佐」および「アカデミーGKコーチ」を兼任。21年からはJFAコーチとしても活躍している。


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