日刊鹿島アントラーズニュース

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2022年8月9日火曜日

◆なぜ鹿島ヴァイラー監督“電撃解任”はサポーターの反発を招いたのか…小泉社長がSNSで経緯説明も(THE PAGE)






 鹿島アントラーズは7日、レネ・ヴァイラー監督(48)との契約を双方合意のもとで解除したと発表した。クラブ史上初のヨーロッパ出身指揮官として、今シーズンから指揮を執るスイス人のヴァイラー監督のもとで一時は首位に立った鹿島だが、直近のリーグ戦5試合で3分け2敗と失速。鹿島の小泉文明代表取締役社長(41)は自身のツイッターで「成績をはじめ総合的に判断、議論し合意した」と理由に言及したが、ファン・サポーターの激しい反発を招いている。


3分け2敗で4位後退…「総合的に判断、議論し合意」


 ヴァイラー監督の退任が鹿島から発表された直後の7日午後2時すぎ。鹿島の小泉社長が自身のツイッター(@Koizumi)を更新し、指揮官を代える理由に言及した。

「成績をはじめ総合的に判断、議論し合意したことであり、レネ監督のこれまでの働きに感謝しております。また、このような状況になっていることは監督だけの問題ではなく、強化部をはじめ経営側にも反省点があり改善すべきことがあります」

 鹿島もリリースで、クラブ史上で最短となる、就任から約半年でヴァイラー監督が退任する理由を「フットボールにおける現状と今後の方向性について協議した結果、双方合意のもと契約を解除することとなりました」と説明した。小泉社長のツイートはこれを踏襲した形だが、直後からファン・サポーターの激しい反発を招いている。

 ホームの県立カシマサッカースタジアムにサンフレッチェ広島を迎えた、6日の明治安田生命J1リーグ第24節で鹿島は0-2で敗れた。横浜F・マリノスに0-2で完敗した7月30日の第23節を含めて、直近のリーグ戦5試合で3分け2敗と失速。一時は首位に立っていた順位を、広島戦を終えた段階で4位に下げていた。

 もっとも、サッカー界全体では「まだ4位」という状況とともに、指揮を執って1年目のヴァイラー監督の突然の交代は驚きを持って受け止められた。対照的に鹿島のファン・サポーターの大半から批判されているのはなぜなのか。

 ロングボールを駆使し、縦に速いサッカーを標榜するヴァイラー監督のもと、上位戦線につけていた鹿島の失速は、いま現在もJ1得点ランキングの1位タイに名を連ねるFW上田綺世(23、現サークル・ブルージュ)の移籍を抜きには語れない。

 上田が最後にJ1でプレーしたのは、6月26日の名古屋グランパスとの第18節。直後の柏レイソル戦を2-1で制し、続くセレッソ大阪戦では3-3で引き分けた鹿島だが、北海道コンサドーレ札幌戦以降のリーグ戦4試合でわずか1ゴールにとどまっている。

 移籍するまでに10ゴールをあげていた上田が抜けた穴はあまりにも大きく、必然的にもう一人のFW鈴木優磨(26)に大きな負担がかかる悪循環が生まれる。リーグ7位タイの7ゴールをあげている鈴木だが、夏場の過酷な戦いで後半途中から消耗する展開が続き、直近の3試合ですべて先発フル出場するも無得点が続いている。

 日本人選手が若くしてヨーロッパへ新天地を求める傾向を踏まえれば、鹿島も上田の移籍に備えておく必要があった。ましてや2010年以降の鹿島は内田篤人、大迫勇也、柴崎岳、植田直通、昌子源、安部裕葵らが次々と海外へ移籍している。

 しかし、鹿島の動きは鈍かった。しかも上田に続いて3年目のFW染野唯月(20、現東京ヴェルディ)までが7月に期限付き移籍。フォワード陣が深刻なコマ不足に陥り、結果として極端な得点力不足に悩まされる戦いを余儀なくされた。

 鹿島は今月1日、ナイジェリア出身のFWエレケ(26)がベールスホット(ベルギー)から加入すると発表した。身長190cm体重88kgのサイズを誇るエレケは、2018-19シーズンにルツェルン(スイス)でヴァイラー監督のもとでプレーしている。

 日本でプレーするにあたってはヴァイラー監督が率いる状況も影響したはずだし、指揮官自身も「フィジカル的に強い選手で、個人で打開する能力がある」と大きな期待を寄せていた。それだけに、エレケの合流前の解任はちぐはぐ感が否めない。

 もっとも、鹿島が補強で後手を踏む状況は今夏の移籍市場に限らない。

 このオフに犬飼智也(29、浦和レッズ)と東京五輪代表の町田浩樹(24、ユニオン・ザンジロワーズ)と2人のセンターバックが移籍した。札幌からリオ五輪韓国代表のキム・ミンテ(28)を獲得したが、現状では犬飼と町田が抜けた穴を埋められず、ボランチを主戦場とする三竿健斗(26)がセンターバックに回るケースが多くなった。

 さらに新型コロナウイルス禍で外国人の新規入国が制限されていた影響で、ヴァイラー監督の合流が開幕後にずれ込んだ。キャンプからチームをまったく指導できなかっただけでなく、夏場の補強を含めて万全な陣容を編成できなかったからこそ、指揮官だけにすべての責任を押しつけるのはおかしいと批判がわきあがった。

 鹿島は昨年4月にも成績不振を理由に、指揮を執って2シーズン目を迎えていたブラジル出身のザーゴ監督を解任。クラブOBの相馬直樹コーチ(現大宮アルディージャ監督)が監督に昇格し、最終的には4位まで巻き返した。

 それでも相馬監督との契約延長を見送り、スイス人のヴァイラー監督を招へいした。鹿島史上で初めてとなるヨーロッパ出身の指揮官として注目されたが、当初は黎明期から掲げられてきたブラジル人監督を継承する予定だった。

 コーチ、強化育成課長、強化部長、そしてフットボールダイレクターとして鹿島の歴史のすべてに関わり、昨年末に退任した鈴木満氏(現強化アドバイザー)から、最終的にヴァイラー監督を迎え入れた経緯を聞いたことがある。

「ブラジル人で若くて、ヨーロッパの現代サッカーを勉強している指導者をジーコと一緒に探した。しかし、ブラジル国内でも外国人監督が増えている。いろいろとリストアップしたなかで5人ぐらいとリモートで面談したなかで、いまの鹿島のサッカーを理解しながらアップデートさせる仕事に一番適応できると判断した」

 ザーゴ元監督もブラジル出身ながら、ヨーロッパサッカーの薫陶を色濃く受けていた点が決め手になって鹿島に迎え入れられた。ジーコが礎を築き、歴代の外国人監督だけでなく、外国籍選手のほぼ全員をブラジル人で占めてきた路線からの転換は、歴史や伝統にこだわりすぎれば時代に取り残される、という危機感が共有されていたからだ。

 大きな変革を掲げたからこそ、我慢も求められる。しかしながら、鹿島および小泉社長による説明が抽象的だった点も大きな反発を招き、鈴木氏の後任に就いた吉岡宗重フットボールダイレクターにも批判の矛先が向けられる状況を招いている。

 ヴァイラー監督だけでなく、今シーズンに就任したドラガン・ムルジャ・コーチ、マヌエル・クレクラー・フィジカルコーチとの契約も解除された。7日時点で後任監督は発表されていないが、今シーズンに就任し、開幕直後はヴァイラー監督に代わって指揮を執ったクラブOBの岩政大樹コーチ(40)の就任が有力視されている。

 前出の鈴木氏は時代とともに変わらなければいけない部分がある一方で、絶対に受け継いでいかなければいけないものもあると強調していた。それは昨シーズン限りで鹿島のテクニカルディレクターを退任し、ブラジルへ帰国したジーコが植えつけたスピリット、チームの結束力と一体感、勝利へのこだわりの三位一体となる。

 情報通りに岩政コーチが監督に就任すれば、昨シーズンに続いてクラブのOBに火中の栗を拾わせる形になる。仮定の話になるが、相馬元監督と同じように緊急登板という形で終えれば、鹿島が大事にしてきた結束力と一体感が再び大きく損なわれる。

 IT企業のメルカリが経営権を取得し、取締役会長の小泉氏が鹿島の社長に就いて3年あまり。ツイッターで「選手、チームスタッフ全員が一致団結して向かってまいります」ともつぶやいた同氏の舵取りがあらためて問われるなかで、ライバル勢の追随を許さない、リーグ最多の20冠を誇る常勝軍団が転換点を迎えようとしている。

(文責・藤江直人/スポーツライター)




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