日刊鹿島アントラーズニュース

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2022年12月17日土曜日

◆鹿島アントラーズの新スタジアム構想どうなった? 発表から1年、鹿嶋市と隣の潮来市誘致表明も具体案なく(東京新聞)






 茨城県立カシマサッカースタジアム(鹿嶋市)を本拠地とするサッカーJ1・鹿島アントラーズが新スタジアムを整備する構想を打ち上げてから、1年が過ぎた。鹿嶋市と、隣接する潮来市が誘致を表明しているものの、現時点で具体案は浮上していない。一方、県は将来的に民間主導の運営に切り替える検討を始めている。(長崎高大)

 「新スタジアム建設を、今後10年の一つのポイントにしたい」。鹿島の小泉文明社長は昨年10月のクラブ創設30周年の記者会見で、現スタジアムの老朽化などを理由に新スタジアム構想に言及。2026年ごろまでに方針を決めると説明した。

 現スタジアムは県の施設だが、06年からは鹿島が指定管理者として運営や維持管理を担う。県によると、東日本大震災や塩害の影響で維持管理費は増加傾向にあり、昨年度は5億6000万円が投じられた。

 会見から1年が経過したが、新スタジアムの立地や規模、費用など具体的な内容は現時点で未定だ。鹿島に取材を申し込んだが、「昨年10月の発表以降、新たに情報提供できる状況ではない」との回答だった。

 新スタジアムを巡り、最初に誘致を公に表明したのは潮来市だった。原浩道市長が今年8月24四日の記者会見で、土地の整備や渋滞対策に約40億円を充てる考えを示した。

 その5日後の29日、鹿嶋市の田口伸一市長も記者会見で「市内に本拠地を置いてもらうことは市民も望んでいる。誘致に向け対応していきたい」と名乗りを上げた。

 鹿島がホームタウンと位置付ける鹿行地域5市のうち、潮来と鹿嶋以外の3市は今のところ誘致に乗り出す構えは見せていない。

 県は、将来的なスタジアムの民営化を示唆する。

 県政策企画部の北村孔敬(よしゆき)部長は十一月の県議会本会議で「スタジアムの将来を見据え、自治体主導の『コストセンター』から、利益を生む民間主導の『プロフィットセンター』での展開を目指す考えを整理した」と答弁。ただ、進捗状況については「アントラーズ主導で、魅力ある利便性のあるスタジアムとはどういうものか、鹿行各市とどのような連携ができるかを検討しているところだ」と述べるにとどめた。


◆「『潮来アントラーズ』派はほとんどいない」


 鹿島アントラーズは、Jリーグ創設時からの「オリジナル10」のうち、一度もJ1から降格しておらず、名称も変えたことのない唯一のクラブだ。仮に本拠地が潮来に移った場合、クラブ名はどうなるのかなど気になる点は多い。潮来市民の声を聞いてみた。

 潮来サッカースポーツ少年団の運営に携わる保護者の石井涼子さん(37)は「観戦もしやすくなるし、いろいろと便利になると思う」と移転自体には期待しつつ、「これまでの長い歴史もあるし、移転したとしても名前まで変える必要はない」と話した。

 JR潮来駅に隣接し、鹿島の選手やサポーターもよく訪れるというイタリア料理店「イタリアン・ガレージ」の経営者、村田康次さん(61)は「潮来なら塩害の心配はないし、JRの駅と高速のインターがあって利便性もいい」。自治体間の誘致合戦になることは望ましくないとして、「一番大事なのは鹿島に鹿行地域にいてもらうこと。地域全体での連携が必要だ」と強調した。

 名称の問題については、「サポーターの間でよく引き合いに出されるのがディズニーランド。千葉県にあるのに『東京』を名乗っている。『潮来アントラーズ』にすべきだと考える人はほとんどいないと思う」と語った。

 他にも、潮来駅前や周辺の店舗で尋ねて回ったが、名称変更を主張する市民には出会えなかった。

 鹿嶋市民はどう考えているのか。市商工会青年部アントラーズ応援委員会に所属する同市の建設業山町浩信さん(40)は「鹿嶋市以外に移転するのは、ある意味ばくちになる」と、市外への移転には否定的だ。

 選手たちが鹿島神宮で必勝祈願してスタジアムまで歩く行事「必勝ウオーキング」などを挙げ、「鹿嶋はサポーターにとって既に『聖地』」と指摘。「創設以来30年応援してきて、ホームタウン5市の中でも鹿嶋市民は特に応援熱が高い。移転先で同じように盛り上がるかどうかは分からない」と疑問を呈した。

 潮来市では来年2月の市長選に向け、現職の原浩道氏と新人の元市議沼里(ぬまり)真一郎氏の二人が立候補を予定している。

 新スタジアム誘致を表明した原市長に対し、沼里氏は「市の財政は40億円も負担できるような状況ではないし、鹿嶋市でずっとやってきたアントラーズの歴史も考慮すべきだ」との見解だ。選挙戦の争点の一つになる可能性もある。


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