日刊鹿島アントラーズニュース

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2024年7月8日月曜日

◆中田浩二・山本脩斗の両レジェンドを抜擢。体制強化で「優磨依存のチーム」をどう引き上げていくのか【吉岡宗重FDインタビュー②】(サッカーダイジェスト)






本人も世界で活躍し、ワールドカップに出るという夢を描いているはず。昨シーズンから海舟とは海外移籍のタイミングについて協議してきましたが、今回のオファーを総合的に判断して、我々もそれを後押したいと考えた。彼を売ることで確実に移籍金を取って、次の補強を迅速に進めていくことが重要なんです。


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◆中田浩二・山本脩斗の両レジェンドを抜擢。体制強化で「優磨依存のチーム」をどう引き上げていくのか【吉岡宗重FDインタビュー②】(サッカーダイジェスト)






「合計11人。ようやく充実した組織で動けている」


 国内随一の“20冠”獲得の原動力となった鹿島の鈴木満元FD(現フットボールアドバイザー)が2021年末に退任し、22年から常勝軍団の強化部門のかじ取り役を引き継いだ吉岡宗重FD。1978年生まれの彼は、中村俊輔や山口智と同い年。40歳そこそこで大役を担うのは、やはり重圧も少なくなかっただろう。

 そこから2年間の鹿島はレネ・ヴァイラー、岩政大樹、今季はランコ・ポポヴィッチと指揮官が目まぐるしく変わったが、まだタイトルに手が届いていない。

 吉岡FDは苦境に直面するたびにメディアの前に姿を現わし、現状を説明していたが、FD1人の力で全ての問題が解決するわけではない。やはり強化体制のテコ入れは鹿島にとっての重要な課題だったのだ。

 そこで、鹿島は2023年途中にレノファ山口FCなどでジェネラルマネージャー経験のある石原正康氏を招聘。今季開幕前には中田浩二、山本脩斗という両レジェンドを強化スタッフに加えた。

「1年前は事実上、現場の強化スタッフが自分1人だけで、チームや選手の状況把握、評価、補強や候補者のチェックなど全てをやらなければいけない状態でした。満さんのような有能なFDだったらそれでも回ったんでしょうが、やはり自分にはそこまでは難しいのが実情です(苦笑)。

 石原が昨夏に加わってくれて、今年からは中田浩二、山本脩斗も入ってきた。今は私と中田浩二、石原が強化担当として練習を見たり、現場に関する業務をこなしていて、山本にはプロ選手をチェックする専門スカウトとして動いてもらっています。今後は彼の見極めた選手リストから補強選手を絞る予定です。

 我々に加えて、椎本(邦一)さんと牛島(真諭)の新卒スカウト2人、フットボールアドバイザーの満さんと、他にも強化管理担当が計4名いるので、強化部は合計11人体制。ようやく充実した組織で動けていると実感しています」と吉岡FDは言う。

 鈴木元FDの退任前から「鹿島は強化部門に選手OBを入れて、将来のGM・FD候補を育てていくべき」という指摘があちこちから聞こえてきていた。しかしながら、鈴木氏が剛腕かつ非凡だったがゆえに、そのアクションが遅れがちになっていた。それは紛れもない事実だろう。

 吉岡FDは10年以上、鈴木氏のもとでノウハウを学び、それを受け継ぐべく努力してきたが、やはり選手OBがいた方が現場やクラブにとってもプラスだし、サポーターの理解も取り付けやすくなる。動きが遅れたことは否めない事実だが、ここへきて体制構築が進んだことで、今季の好成績もアップしたのだろう。

「私自身、考える時間や余裕も生まれてきました。満さんと長く一緒にやってきたとはいえ、責任者は全くの別物。より厳しさを感じながらやっています」と、吉岡FDも後半戦に向けて今一度、気を引き締めている。

 彼ら強化部門にとって目下、非常に重要な案件と言えるのが、海外移籍が決まった佐野海舟の穴埋めだろう。鹿島の場合、過去にも内田篤人、大迫勇也、柴崎岳、植田直通、鈴木優磨、上田綺世とチームの主軸として活躍していた若手が海外移籍を選んできたが、その流れは加速する一方だ。

 日本代表としてワールドカップを目ざそうと思うなら、もはや海外移籍はマストといっていい時代になっている。鹿島もその流れは止められない。だからこそ、選手の意思を尊重しつつ、確実に移籍金を得て、次の強化につなげていくというサイクルを作っていくことが肝要なのだ。


直近の神戸戦は1-3の逆転負け


「我々はこれまで数多くの選手を海外に送り出してきましたけど、大なり小なりの移籍金は取ってきました。

 ただ、選手が『お試しで海外に行く』という時代はもう終わった。今回の海舟に関しても、かなりの金額で評価してもらえましたし、本人も世界で活躍し、ワールドカップに出るという夢を描いているはず。昨シーズンから海舟とは海外移籍のタイミングについて協議してきましたが、今回のオファーを総合的に判断して、我々もそれを後押したいと考えた。彼を売ることで確実に移籍金を取って、次の補強を迅速に進めていくことが重要なんです。

 次のボランチ候補には岳もライコ(ミロサヴリェヴィッチ)もいますし、組み合わせで解決できるところもあると考えています」と、吉岡FDは佐野の売却で得られる資金を有効活用し、後半戦につなげていく構えだ。

 そのうえで、チームの成熟度を引き上げ、勝点を積み上げていく必要がある。そのなかでやはり重要になるのは、鈴木優磨に依存しすぎないチームバランスを見出すことだ。

 攻撃面の優磨依存というのは、昨年に比べて解消されつつある印象だ。が、チーム全体における彼の影響力というのは今もなお絶大である。30代の柴崎、間もなく30歳になる植田ら年長者たちも発信力を見せているものの、鹿島アカデミー出身で小笠原満男の40番を引き継いだ優磨には、「常勝軍団復活への強い意欲と責任感」が色濃く感じられる。

 それを吉岡FDはどう見ているのか――。

「優磨がすごく重要なプレーヤーというのは誰もが認めるところですし、本人の勝ちへのこだわりや意気込みというのも絶大。ただ、チャヴリッチや濃野(公人)らがゴール数を伸ばし、得点力が分散していることもあって、優磨が背負っているものは昨年よりも少し軽くなり、本人も自分のプレーに集中できるようになったという見方をしています。

 今季をスタートする前にポポヴィッチ監督と共有したのは『特定の個に頼るのではなく、組織で戦えるチームを目ざす』ということ。優磨は確かに頭抜けた存在かもしれませんけど、累積警告やアクシデントが起きた時に戦えないというチームだと優勝は難しい。私はそう考えています」

 吉岡FDはこう語気を強めていたが、直近の6月30日のヴィッセル神戸戦では優磨不在の攻撃をうまく構築できず、昨季王者に1-3の逆転負けを食らってしまった。

 最前線に陣取ったチャヴリッチがリスタートから先制し、最高のスタートを切ったのだが、ライン間に下りてボールをつなぎ、起点を作れる優磨がいなかったことで、攻撃がノッキングを起こしたのだ。

 厳しい現実をどう受け止め、今後に活かしていくのか。今こそ強化部門と現場が一致団結して、難局を乗り越えていくしかないだろう。

※第2回終了(全3回)

取材・文●元川悦子(フリーライター)



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