「大きな舞台で本当に感じたことがないぐらいの緊張感や楽しさがあった。またあの舞台でやりたいと思えたので、そこに向かって取り組んでいきたい」
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◆初の大舞台は不完全燃焼に終わったが、新たな景色を見られたのは財産。荒木遼太郎は「次の目標はワールドカップ」に向けて走り出す【パリ五輪】(サッカーダイジェスト)
「感じたことがないぐらいの緊張感や楽しさがあった」
スペインに0-3で敗れ、U-23日本代表のパリ五輪での戦いは準々決勝で幕を閉じた。掲げたファイナリストという目標には届かなかったが、選手たちにとって世界で戦うための指針を知る機会になったのは間違いない。
MF荒木遼太郎(FC東京)もそのひとり。アンダー世代から代表に入っていたものの、世界大会に出場した経験はない。東福岡高でプレーしていた2019年のU-17ワールドカップも怪我の影響で参加できず、今回のパリ五輪が初めての世界大会で、大舞台を待ちわびていた。
鹿島に所属していた21年にヤングプレーヤー賞を受賞した一方で、22年と23年は怪我に悩まされて低迷。思うようにプレーできず、代表からも遠ざかっていたが、今季に加わったFC東京で復活を遂げた。開幕からゴールを重ね、最後の最後で代表に復帰して手に入れたパリ行きの権利。失うものは何もない。全力で今の自分を表現するだけだった。だが、現実は甘くなかった。
グループステージでパラグアイとの初戦(5-0)ではFKからFW藤尾翔太(町田)のゴールをお膳立てしたが、73分からの出場でプレータイムは限定的。続くマリ戦(1-0)はベンチから戦況を見守り、イスラエルとの最終戦(1-0)で初先発を果たすも、ゴールに絡むことはできずに79分で途中交代となった。そして、迎えたスペイン戦。0-2の状況となった84分からピッチに送り出されたが、何もできずに終わった。
「少し試合期間が空いていたので、最初は慣れないところもあった。100パーセントでやれたかというと、そうではなかったとも感じる」と、大会前から抱えていた怪我が完全に治り切ってなく、コンディションが万全ではなかったのは悔やまれるが、初めての世界大会で新たな景色を見られたことは財産となった。荒木は言う。
「結果的に悔しさが残るけど、今後のサッカー人生において価値のある大会だった」
個の能力が高く、パスワークに秀でたスペイン。南米らしい無骨なチームだったパラグアイ。勝利への執念やタフネスさが武器だったイスラエル。真剣勝負の公式戦で、異なるタイプの相手と戦えたことは次につながる。
「大きな舞台で本当に感じたことがないぐらいの緊張感や楽しさがあった。またあの舞台でやりたいと思えたので、そこに向かって取り組んでいきたい」
世代別代表での活動は終わったが、次に目ざすべき舞台はワールドカップとなる。
「パリ五輪はハードなスケジュールだったので、そこに対応できるようにしないといけない。一度経験したので、キツさも理解したし、この状況でどうやって身体を回復させていくか。次の試合に向けてのリカバリーも含めて、いろんなことを感じたので、今後に活かしていきたい」
不完全燃焼で終わったパリを経て、青赤軍団のファンタジスタはどのような成長を遂げていくのか。これで終わりではない。
「次の目標はワールドカップ。まずはチームに戻って結果を残す。そこからまたやっていきたい」
新たなスタートを切った荒木は自らの価値を証明すべく、クラブでさらなる研鑽を積む。
取材・文●松尾祐希(サッカーライター)