日刊鹿島アントラーズニュース

Ads by Google

2014年8月18日月曜日

◆アギーレジャパン入りへ鹿島・柴崎が持っている条件(THEページ)


http://thepage.jp/detail/20140816-00000003-wordleafs?pattern=1&utm_expid=72375470-13.UpXIhipGSW6sbq-ARZtzjw.1&utm_referrer=https%3A%2F%2Fwww.google.com%2F


[画像]アントラーズ・柴崎岳(写真:長田洋平/アフロスポーツ)


衝撃的なシーンだった。16日の鹿島アントラーズ対ヴァンフォーレ甲府のキックオフ直後。アントラーズのDF昌子源が自陣の深い位置から前線へ送ったロングパスの処理を、ヴァンフォーレのDF佐々木翔が誤る。胸でのトラップが大きくなったところへ、アントラーズのMF土居聖真が必死に足を伸ばして絡む。センターサークルのやや前方に転がるルーズボールへ、トップスピードで走り込んできたのがアントラーズのMF柴崎岳だった。右足でボールの位置を整え、間髪入れずに右足を振り抜く。距離にして実に35m。無回転の強烈な一撃はまず右へ曲がり、ゴールに近づくにつれて左へ滑るようにぶれていく。

ゴールネットが揺れたとき、時計の針はまだ19秒にしか達していなかった。ロングシュートに反応する時間が十分にありながら体勢を崩し、指先で触ることすらかなわなかったヴァンフォーレのGK荻晃太が脱帽の表情を浮かべる。「距離はあったんですけど……自分では(体勢を)修正できませんでした」。

後方で弾道を見ていた昌子が、ブレ球に翻弄された荻の心情を察するように、同期入団の柴崎のスーパーシュートに声を弾ませる。「蹴った瞬間に決まったと思った。荻さんが最初に右へ動いたのもわかる気がする。急に左へ曲がりましたからね。それくらいぶれていた」。

値千金の一発を守り切り、3連勝を飾った直後に、柴崎はクールな表情を崩すことなく今シーズン5ゴール目を振り返った。「立ち上がりということもあって、思い切って打っていこうと。前節の試合で攻撃的な姿勢が薄れていたので。こぼれ球を拾ってショートカウンターを仕掛けるのは、よくあること。3つくらいパスの選択肢があったけど、ファーストタッチでボールをいいところに置けたので、自分の体の反応に合わせて、あまり深く考えずに打ちました。タイミングがよかったし、いいイメージもあった。上手くいってよかった」。

今月11日に行われた就任会見で、日本代表のハビエル・アギーレ新監督はベースとなるフォーメーションを「4‐3‐3」とすると明言した。3人で形成される中盤は、アギーレ監督に率いられてワールドカップを戦ったメキシコ代表を見る限りでは、アンカーを配置した逆三角形型となる可能性が高い。

アンカーの前で左右に並ぶインサイド・ミッドフィールダーに求められる能力は3つ。守備おいてはボール奪取力を含めた1対1の強さ。攻撃においてはチャンスメーク力と決定力。何よりも90分間を通じて攻守に絡み続ける走力とスタミナとなる。いずれも就任会見でアギーレ監督が選手たちに求めた要素だ。

青森山田高校から加入して4シーズン目。22歳になった柴崎は、新生日本代表のインサイド・ミッドフィールダーを任せるのにふさわしいパフォーマンスを演じている。高度なテクニックと戦術眼、そして視野の広さから遠藤保仁(ガンバ大阪)の後継者としての期待をかけられてきた柴崎だが、今シーズンはさらにパワーアップしている。昌子が再び声を弾ませる。

「(柴崎)岳があそこまで走るから、オレらも走れる。アイツは間違いなく鹿島の心臓。例えば自分たちのゴール前でクリアしたボールが味方につながり、カウンターになっても、アイツはいつもゴール前まで走っている。フィジカル練習ひとつ取っても、アイツがいるからオレたちも『しんどい』とか『疲れた』と言えない。同期ですけど、アイツがいなくなれば別のチームになると言ってもおかしくないくらい、鹿島を支える存在になっていると思います」。

昌子の言葉を借りれば、柴崎の「走る」能力はほぼ百点。今シーズンは全20試合に先発し、後半31分にベンチへ退いた5月3日の柏レイソル戦を除けば、すべてでフル出場している。J1では現在、64試合連続先発出場を続けている。175cm、64kgの華奢な体には、無尽蔵のスタミナが搭載されている。

ならば「決定力」はどうか。過去3シーズンでマークした3ゴールを、すでに2つも上回っている今シーズン。直近の4試合で3ゴールと量産体勢に入った柴崎が、あらためて衝撃弾を振り返る。「ボールを押し出すように蹴れば無回転になると思ったし、キーパーの正面に飛べばぶれると思った。好調というよりは、いままでの積み重ねがやっと芽を出してきたと思っている」。

昨年7月の東アジアカップ代表に選出されながら体調不良で無念の辞退を余儀なくされたことで、ザックジャパン入りへのチャンスを逃した。今年4月に千葉県内で行われた日本代表候補合宿にも招集されたが、アピールする時間はあまりにも限られていた。

ヴァンフォーレ戦には、アギーレ政権に入閣した、イギリス人のスチュアート・ゲリングコーチが視察に訪れていた。28日に発表される予定の新生日本代表入りを、意識しなかったと言えば嘘になる。柴崎は珍しく、偽らざる本音を口にしている。「次のワールドカップのときは26歳。すごくいい年齢で迎えられると思う。最初から選ばれて、ずっと入っていたい。今日のようなパフォーマンスを続けていくことが、近道になると思う」。

22歳にして副キャプテンを務める今シーズンは、キャプテンのMF小笠原満男がピッチにいないときは左腕にキャプテンマークを巻く。ヴァンフォーレ戦でも後半43分から大役を任された。その理由をトニーニョ・セレーゾ監督はこう語る。「ベテランや若手に関係なく、チームのために献身的な犠牲心を持ってプレーできる選手にキャプテンを任せるのが鹿島の伝統だ。柴崎の両足は宝箱だ。開ければものすごい光を発する。必ず日本代表に選ばれる非凡な才能を、何とかして輝かせることだけを考えている」。

アギーレ監督は選手選考の基準として「国を背負うことに意欲的で。個人ではくチームでプレーして、勝利に貢献できる選手」という項目も掲げている。ピッチ上での能力に加えて、柴崎は「日の丸への憧憬」と「自己犠牲の精神」というメンタル面で合致することになる。

ワールドカップによる中断から再開された直後は3戦連続ドローと波に乗れなかったが、その後の3連勝で4位にまで浮上。首位の浦和レッズまで勝ち点4差で、完全に射程距離にとらえた。雨の中を応援に駆け付けたサポーターに訴えかけるように、柴崎が力を込める。「上位との対戦も残っているので、食らいついていきたい。今日のゴールはアバウトというか、個人技で取ったもの。次は味方とのコンビネーションで奪いたい」。

ナビスコカップはグループリーグで姿を消し、天皇杯では緒戦の2回戦でJFLのソニー仙台にまさかの黒星を喫した。残された唯一のタイトルとなるJ1制覇へ。クールなマスクの下に勝利とゴールと代表入りへの熱い思いを隠しながら、柴崎は名門アントラーズを力強くけん引していく。

(文責・藤江直人/スポーツライター)

Ads by Google

日刊鹿島

過去の記事