日刊鹿島アントラーズニュース
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2015年11月15日日曜日
◆金崎が5年ぶり代表復帰戦で見せた新たな姿。心技体が完璧なハーモニーを奏でた鹿島での日々(BIGLOBE)
http://news.biglobe.ne.jp/sports/1114/fot_151114_6853487309.html
いい意味で裏切った金崎の補強
敵地で12日に行われたシンガポール代表とのワールドカップ・アジア2次予選。約5年ぶりに日の丸を背負ったFW金崎夢生は、前半20分に代表初ゴールとなる鮮やかなボレーを決めてチームを快勝に導いた。ヴァイッド・ハリルホジッチ監督の先発抜擢に応えた理由をたどっていくと、今シーズンの開幕直前に加入した鹿島アントラーズで刻まれてきた、心技体のすべてが完璧なハーモニーを奏でた日々に行き着く。
秋の気配が漂ってくると、Jクラブの強化責任者はシーズン終盤戦の戦いを見守りながら、次のシーズンへ向けた準備を始める。現有戦力を見極め、移籍市場をにらみながら補強ポイントをあれこれ思案する。
残り1節となったセカンドステージで2位につけている鹿島アントラーズも、もちろん例外ではない。在任20年のスペシャリスト、鈴木満取締役強化部長は「来シーズンへ向けた編成をいろいろと考えている」と公言してはばからない一方で、嬉しい悲鳴も漏らしている。
「そういうときにナビスコカップの決勝戦を見ると、そんなにいろいろとやらなくてもいいかな、と思うくらい選手たちは頑張ってくれた。実際、ナビスコを取ったことによって、得られたものがものすごくある。ナビスコの前と後とを比較すると、いまのチームはワンランク上に来ている。本当はもうちょっとシーズンがあるといいんだけど、2009年シーズンを最後にリーグ戦のタイトルは取れていないわけだから、本当に強いチームにしていかなきゃいけない」
連覇を狙ったガンバ大阪を3対0で一蹴し、約3年に及んだ無冠の時間に終止符を打った10月31日のナビスコカップ制覇は、アントラーズに常勝軍団と呼ばれてきた自信と誇りを取り戻させた。
そして、来シーズンも継続してタイトル争いに絡み続けていくための最初の一手が、ナビスコカップ決勝の直前に打たれている。鈴木強化部長が明かす。
「ポルトガルのポルティモネンセへ、ムウ(金崎夢生)を完全移籍で獲得するオファーを出しました」
来年1月31日までの期限付き移籍で、金崎がポルティモネンセから加わったのは2月10日。中盤のサイドの選手層を厚くする意味合いが込められた緊急補強は、鈴木強化部長をはじめとするフロントの期待をいい意味で裏切った。
トップを務める能力が備わったフィジカルと強靭なメンタル
兵庫県の強豪・滝川第二高校から2007年に加入した大分トリニータ、そして2010年に移籍した名古屋グランパスでは、サイドを主戦場にしたドリブラーだった。
2013年1月にブンデスリーガのニュルンベルクへ、その年の9月にはニュルンベルクとの契約を解消してポルトガル2部のポルティモネンセへ移籍。2014‐15年シーズンは背番号「10」を託され、17試合で9ゴールという記録を残した金崎は、2年の間にプレースタイルを大きく変えていた。
おそらくは異国の地で、生き残っていくために試行錯誤を繰り返してきたのだろう。頼もしそうな視線を向けながら、鈴木部長が今シーズンの金崎の軌跡を振り返る。
「あんなに頑張る選手だとは思いませんでしたよ。チームにいい影響を与えてくれましたよね」
最前線で相手のセンターバックと壮絶なバトルを繰り返す。体を張ってボールを収める。最終ラインの裏へ泥臭く抜け出す。貪欲なまでにゴールを狙う強靭なメンタルは、幾度となくアントラーズを鼓舞してきた。180cm、70kgのボディにはトップを任せられる能力がほぼ完璧に搭載されていた。
ファーストステージの開幕戦、2戦目こそサイドでの先発だったが、古巣グランパスと対戦した第3節からは1トップもしくは2トップの一角をゲット。リーグ戦でMFカイオに次ぐチーム2位の9ゴール、ナビスコカップでは決勝を含めた5試合で5ゴールを量産した金崎は絶対的な存在となった。
アントラーズは金崎よりも前に、FW高崎寛之を徳島ヴォルティスから完全移籍で獲得している。左ひざの大けがで2014年10月から長期離脱を強いられている、FWダヴィの穴を埋める補強だった。
そのダヴィはセカンドステージの開幕戦から復帰するも、10試合に出場して無得点。高崎もリーグ戦では無得点のまま、8月に入ってモンテディオ山形へ期限付き移籍している。
来シーズンへの期待を膨らませるいぶし銀のプレー
シーズンの開幕前に描かれた青写真が狂いかねない状況を救った金崎は、来シーズンを戦う上でも必要不可欠。完全移籍への切り替えは、何よりも真っ先に着手すべき補強策だったわけだ。
ナビスコカップを制してから1週間後。ホームのカシマスタジアムに横浜F・マリノスを迎えたセカンドステージ第16節でも、金崎は味方のゴールにつながるいぶし銀のプレーで魅せている。
開始10分。自陣でボールを奪うと、MF遠藤康が約40mのドリブル突破でマリノス陣内へ切り込む。左後方をカイオがトップスピードでフォローする状況で、金崎は2トップを組んだ赤崎秀平とともに左から右へ、斜めの軌道を描くフリーランニングで中澤佑二と小林祐三を幻惑する。
左前方にポッカリと空いたスペースへ侵入してきたカイオが、遠藤からのスルーパスをダイレクトで叩き込んだ。
「フリーになった僕を見てくれた味方に感謝したい」
後半19分にも追加点をゲットし、入団2シーズン目で堂々の2桁ゴールに到達させたカイオが笑顔を弾ませれば、遠藤も自分だけの力でマークしたアシストじゃないと力を込めた。
「ムウや(赤崎)秀平がスペースを作ってくれたので、自分はカイオにパスを出すだけでした」
負けはもちろん、引き分けてもサンフレッチェ広島の優勝が決まった一戦。キックオフ前の時点でリーグ最少失点を誇ったマリノスの堅守に風穴を開け、守っては危なげなく零封する。
サンフレッチェとの勝ち点差は3。得失点差が大きく開いている関係で逆転は難しく、したがってホームに名古屋グランパスを迎える22日の最終節がシーズン最終戦となる可能性が極めて高い。
金崎を見つめる鈴木優磨。若手の成長にも好影響
それでも来シーズンへと可能性がつながっていくと、鈴木強化部長は力を込める。
「かつて三冠をとったときによく見られた、相手のボールホルダーを数人で囲んでボールを奪うディフェンスが復活してきている。マリノス戦でも強かったときの鹿島のような、相手をじっくりと料理していくサッカーができていた。これをベースにしていきたいという思いがあるから、名古屋にしっかりと勝って、自分たちのなかにちゃんと残していかないといけない」
鈴木強化部長が描く来シーズンの青写真。その最前線の軸として位置づけられる金崎がアントラーズに与えている効果は、何もピッチ上におけるパフォーマンスおよび結果だけにとどまらない。
ユースから昇格を果たしたルーキーで、9月12日のガンバ戦でリーグ戦初出場初ゴールの快挙を達成した19歳、FW鈴木優磨は金崎の眩しい背中を常に見つめている。
「自分のプレースタイルに一番近いフォワードの選手。あの人からどれだけ盗めるか。前線で体を張るところや、ゴール前にどんどん姿を現すところなどを盗んで、自分のプラスにしていきたい」
鈴木のサイズは180cm、68kg。金崎とほぼ同じだからこそ、偶然にも同じシーズンからチームメイトとなった先輩のすべてを脳裏に焼きつけている。
10月17日の柏レイソル戦。後半24分に金崎が同点ゴールを決めれば、アディショナルタイムには途中出場していた鈴木がプロ2点目となる決勝ゴールを決めて初の揃い踏みを果たす。
U‐22日本代表候補にも名前を連ねる、アントラーズの次代が託されるホープの成長を加速させる役割をも、金崎は自然体を貫くなかで担っていることになる。
ハリルホジッチ監督も関心を寄せた強さ
そして、夏場から1対1の攻防を意味するフランス語「デュエル」を選手に求めてきた、日本代表のヴァイッド・ハリルホジッチ監督も当然のように金崎へ関心を寄せる。
指揮官本人もしくはコーチ陣がアントラーズの試合を視察するときには柴崎岳、昌子源、遠藤に加えて、夏場からは金崎がチェックすべき選手のリストに加えられるようになった。
迎えた11月5日。シンガポール、カンボジア両代表と敵地で対戦するワールドカップ・アジア2次予選に臨む代表メンバーに、約5年ぶりの復帰となる金崎の名前を書き込んだハリルホジッチ監督は、ずっと追ってきた選手と位置づけた上で、26歳のFWを招集した理由をこう説明している。
「(いままでの日本代表は)真ん中に少しパワーが足りなかった。センタリングを有効に利用できる選手がいないか探していた。国内に若い選手を含めて何人かFWはいるが、今回は金崎をダイレクトに見てみたい。
彼はここ数ヶ月、かなりいいプレーをしている。真ん中だけでなく、たくさんの場面に動いてくれる。身体の大きさはそこまでではないが、デュエルのなかで体を使えるし、戦う意識がある。ヘディングも上手い」
マリノス戦後に金崎がハリルジャパンに合流したことで、金崎の代理人をまじえた交渉はまだ行われていない。一方で鈴木強化部長はすでに金崎と個人的な話し合いの席をもち、完全移籍に切り替えたいというアントラーズとしての考えを告げている。
充実感溢れる表情を見せたシンガポール戦後
「そうしたらムウは『嬉しいです』と言ってくれました。11月30日までには契約上でいろいろと決めることになっているので、(詳しい話は)そのころになると思います」
約9ヶ月の在籍に終わったニュルンベルクでは4試合の出場にとどまった。捲土重来を期して移ったポルトガルリーグ2部の戦いの場では、おそらく日本人の想像も及ばない困難に直面したはずだ。
だからこそ、約2年半ぶりにJリーグの舞台で記したパフォーマンスが認められた証となる、完全移籍のオファーが金崎のモチベーションを否が応でも高める。
鮮やかな左足ボレーから代表初ゴールを叩き込んだ前半20分の直後を含めて、シンガポール代表戦でフル出場を果たした金崎は充実感あふれる表情を何度もテレビ越しに見せた。
トリニータ時代から、自分が信じたことをほとんど曲げない一本気の性格を貫いてきた。いま現在も思うところがあるのだろう。アントラーズでも、そして日本代表でもメディアに自分の言葉で語る機会は訪れていないが、金崎が胸中に抱く思いはその一挙手一投足から熱すぎるほど伝わってくる。
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