日刊鹿島アントラーズニュース

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2016年9月14日水曜日

◆失点増加で不安定な戦いが続く鹿島 守備陣が見たその要因とは?(Sportsnavi)


http://sports.yahoo.co.jp/column/detail/201609120015-spnavi

石井監督のリーグ復帰戦でリスタートを切りたかったが……

敵地で勝利を挙げ、石井監督の復帰戦を飾りたい鹿島だったが……

 体調不良を訴えて8月27日の第10節、横浜F・マリノス戦(2−2)を休養した石井正忠監督の復帰後、最初のリーグ戦となった9月10日の第11節・柏レイソル戦。ファーストステージ覇者の鹿島アントラーズは敵地で勝利を挙げ、Jリーグチャンピオンシップ(CS)に向けて確かなリスタートを切りたいところだった。

 この日の陣容は、ベテランGK曽ケ端準がいつも通りゴール前に陣取り、最終ラインは9月3日の天皇杯2回戦・カターレ富山戦で負傷した西大伍に代わって伊東幸敏が右サイドで先発した。センターバック(CB)は日本代表に選出されるも、左内転筋の違和感を訴え離脱した昌子源がファン・ソッコに代わって復帰し、ブエノとコンビを組んだ。

 左サイドバック(SB)は山本脩斗が務める。ボランチは小笠原満男が控えに回り、永木亮太と柴崎岳の2人が先発した。2列目は右に成長著しい鈴木優磨、左には土居聖真が入り、赤崎秀平と金崎夢生が2トップを形成するという形だった。

 鹿島としては、相手の助っ人外国人のディエゴ・オリヴェイラ、クリスティアーノを軸とする攻撃陣を封じるところから、慎重にゲームを運びたかった。

「ディエゴ・オリヴェイラ選手を見ていて『何が特長なんだろう』と考えていたのですが、くさびを受けにいっても、すごいと思う部分はなかった。前半は(攻撃の)起点になるシーンもありませんでしたし、自分とブエノの関係も悪くなかったと思います。僕自身、ブエノのカバーができていたし、自分のミスで危ない場面を作られても、ブエノがカバーに入ってくれていました」と昌子は前半の守備に手ごたえを感じていた。

「駆け引きに負けた」鹿島らしくない失点シーン

柏戦の先制点の場面は、実に鹿島らしくない失点シーンだった

 しかし、後半に入り柏が若きスピードスター・伊東純也を投入すると状況が一変する。後半13分、茨田陽生の縦パスに反応した伊東が右サイドを抜け出してクロスを上げた瞬間、ブエノと伊東幸敏はディエゴ・オリヴェイラに巧みに逆を取られ、一発を浴びてしまった。

「純也がボールを上げる瞬間、DFが前を取ろうとしたので、それを逆手にとって2歩後ろに移動した。それで完全フリーになれたので、あとは合わせるだけだった」とディエゴ・オリヴェイラはしてやったりの表情を浮かべたが、鹿島の守備陣は大きなショックを受けたようだった。

「完全に駆け引きに負けた」と伊東がガックリと肩を落とす一方、昌子も「伊東選手が入ってきて、ああなるのは分かってたいたから、(山本)脩斗君に『極端に縦は切っていいよ』とは言ってたんですけれど……。相手のやりたいことをやられたという感じです」と悔しさをにじませた。実に鹿島らしくない失点シーンだった。

 その6分後にはペナルティーエリアでブエノがクリスティアーノを倒してPKの判定。しかし、ベテラン守護神の鋭い読みが光り、2点目は与えなかった。これで巻き返しの可能性が広がったが、この日の鹿島は最後まで踏ん張り切れなかった。

 後半36分、自分たちの攻撃が中途半端な形に終わり、中盤で奪われたボールを柴崎らが奪い返しにいくも寄せ切れず、小林祐介から右サイドのオープンスペースに走り込んだクリスティアーノに縦パスを出されてしまった。クリスティアーノは豪快なドリブルから右足一閃。これはさすがの曽ケ端も反応できず、スコアは0−2となりこのまま試合は終了。鹿島は石井監督体制でのリーグ戦再出発を白星で飾ることができなかった。

セカンドステージはここまで11試合で17失点

「今日は球際のところで全部負けていた。監督は(続投という)答えを出したわけで、僕たちはそれに応える立場だったのに、勝負弱さが出てしまった。自分たちが戦う姿勢を出せていないことに情けなさを感じました。監督が戻って、天皇杯に勝ったからいいわけではないのに、それでOKみたいな雰囲気があった。それが今の僕達の弱さです。優勝争いをして、セカンドステージ、年間王者の座を奪いにいくチームのやることではないと思います」と昌子は試合後の取材ゾーンで自戒を込めて言った。

 彼がこれだけ厳しい発言を繰り返すのも、常勝軍団の絶対的ベースである守備の踏ん張りが利かないことが大きい。川崎フロンターレの失速も追い風となり、ファーストステージを制した後、彼らの守りは急激に崩れ始めた。

 7月2日のセカンドステージ初戦・ガンバ大阪戦(1−3)を皮切りに、ここまで11試合で17失点を喫しているのだ。この数字はセカンドステージ最少失点の浦和レッズ、G大阪の約2倍(両チームの失点数は9)。ファーストステージは17試合を10失点の最小で乗り切った鹿島だけに、いかに失点が大幅に増加しているかがよく分かる。

昌子、植田が分析する失点増加の要因

昌子のCBのパートナーが定まらず、連係が落ち着かないことも失点増加の要因の1つと考えられる

 その要因を分析してみると、昌子のCBのパートナーが植田直通、ファン・ソッコ、ブエノと頻繁に変わることで、連係があまり落ち着かないことや西と山本の両SBが高い位置を取り過ぎて、相手に裏を突かれる回数が多いこと。攻撃陣やシステムの変化によって前からのプレッシングがうまく連動しないことなどが挙げられる。こうした中で、最終ラインの統率役である昌子は、負の連鎖に歯止めをかけようと努力を重ねてきたという。

「セカンド(ステージ)に入ってから、まずSBの位置を修正することに取り組みました。ウチの失点パターンは大伍君や脩斗君が高い位置を取った時、背後のスペースを使われて、クロスを入れられる形が多い。僕らCBも先に触りますが、そのクリアが中途半端になって、セカンドボールを拾われて決められるというパターンが多かった。それを踏まえて、SBの位置を後ろ目にするよう仕向けていきました。

 それ以外にも変化をつけないといけないと思い、CBの位置取りを変え、自分が右、ソッコが左に入る形にしました。自分が右にいた方が大伍君の攻め上がりの特長を消さずに済む。大伍君も僕を信頼して後ろのカバーリングを任せてくれたので、だいぶ問題は改善されたと思います」と昌子は7月23日の第5節浦和レッズ戦(1−2)から8月10日のスルガ銀行チャンピオンシップ、インディペンディエンテ・サンタフェ戦(0−1)にかけての公式戦4連敗を抜け出した後、努めて前向きに語っていた。

 しかし、石井監督の進退問題もあり、鹿島は横浜FM戦、柏戦とリーグ2戦未勝利と再び足踏み状態に陥った。柏戦は右サイドに伊東が入り、CBも昌子が左、ブエノが右と普段と異なる形でスタートしたことも混乱の一因になったのかもしれないが、誰が出ても安定した戦いができなければ、年間王者の座はつかめない。

 セカンドステージに入ってからミスが増え、コンスタントに出場機会を得られなくなった植田も責任の一端を感じているようだ。

「(柏戦を)外から見ていて、単純にラインが低すぎると思いました。もっとラインを上げれば、ディフェンスも楽になるし、みんなも楽になる。(ラインを上げることは)すごくきついかもしれませんが、ちょっとした頑張りでチーム全体も変わってくると思います。失点はCBの責任ですし、そこを全部僕たちが背負うくらいの気持ちでやらないといけない。僕自身も日頃の練習から細かいところにこだわって、チームを軌道に乗せられるようにしたいです。自分が成長しなければいけないと強く感じます」と強調していた。

 ファーストステージでは昌子・植田のCBコンビが機能していたからこそ、通算失点を10に抑えられたと言っても過言ではない出来だった。その好連係を取り戻すことが、鹿島復活への早道かもしれない。

見直しが必要なのは守備陣だけではない

守備陣だけでなく、中盤から前線の選手たちが守備意識を高めることも必要だ

 加えて、守備陣だけでなく、中盤から前線の守備意識を今一度、高めることも肝要だ。鹿島は世代交代の時期を迎えており、攻守の要である小笠原が出場しない試合も徐々に増えている。激しい寄せを厭わない小笠原がいれば、危ない場面でしっかりとボールを奪ってくれるが、永木と柴崎のコンビになるとその部分では甘くなりがちになる。

 特にデュエル(1対1の競り合い)の脆さという課題を抱える柴崎は守備面のレベルアップに努めなければならないし、永木もゲームコントロールやハードワークといった自身の特長を鹿島というチームでより発揮できるよう仕向けていくべきだ。永木はそんな自覚を強めているという。

「僕も鹿島に来て、少しずつ試合に出られるようになったので、もっと自発的にやっていかなければいけない。下を向いていてもしょうがないし、前に向かって進んでいくしかないと思います」と湘南ベルマーレ時代にはキャプテンマークを巻いていた男は良い意味での割り切りを口にした。

 目下、鹿島は勝ち点14の11位に沈む。年間順位も勝ち点53の3位と、川崎、浦和の2強に大きく水を開けられている。すでにCS出場権を確保しているとはいえ、セカンドステージ残り6試合で復調できなければ、年間王者にも手が届かないだろう。

 差し当たって、9月17日の第12節ジュビロ磐田戦で無失点を目指す必要がある。エース・金崎夢生を筆頭に、攻撃陣の得点力不足も課題だが、失点を限りなくゼロに近づければ、攻撃陣もリスタートやカウンターから勝機を見いだすことができる。それこそが常勝軍団がJリーグ発足以来、積み上げてきた勝利の方程式だ。その原点に回帰すべく、昌子を中心に一丸となって守りの修正を図ることが求められる。

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