日刊鹿島アントラーズニュース

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2017年2月20日月曜日

◆アジアでの戦いをにらみながらの頂上決戦 ゼロックスで感じた、鹿島と浦和の強み(Sportsnavi)


蛍光ピンクのセカンドユニホームでゼロックスに臨む鹿島は4人の新戦力がスタメン出場

 新しいシーズンの開幕を告げるFUJI XEROX SUPER CUP(以下、ゼロックス)。今年は昨シーズンのJリーグと天皇杯を制した鹿島アントラーズ、そしてリーグ年間1位(チャンピオンシップ=CSでは2位)の浦和レッズというカードになった。ゼロックスは、本来的にはJ1チャンピオンとカップウィナーによる「頂上決戦」だが、今回は鹿島が2冠を達成したことにより、くしくも昨年のCS決勝のカードが再現されることとなった。ちなみにゼロックスは今回が24回目だが、この顔合わせは意外にも今回が初めて。会場となる日産スタジアムは、空気は冷たいものの快晴に恵まれ、4万8250人の観客を集めた。

 ゼロックスという大会が素晴らしいのは、当該チーム以外のサポーターにも楽しめる「仕組み」が施されていることだ。前座試合の「NEXT GENERATION MATCH」では、各クラブユース所属の選手が出場するが(今年はFC東京U−18の久保建英に注目が集まった)、ピッチ外で不思議な盛り上がりを見せるのがJリーグマスコット総選挙。実際、自分のサポートクラブのマスコットが、しかお(鹿島)やレディア(浦和)よりも上位となることに、密やかな溜飲を下げているファンも少なくないはずだ。今年、1位となって栄えある「センターポジション」を獲得したのは、サンフレッチェ広島のサンチェ。2年ぶり2回目の栄冠であった。

 前座と余興が終わったところで、いよいよメーンイベント。配布されたメンバー表を見て、まず注目したいのが新戦力の起用である(以下、カッコ内は前所属)。鹿島はGKに不動の守護神、曽ヶ端準ではなくクォン・スンテ(全北現代=韓国)を起用。この他にも三竿雄斗(湘南ベルマーレ)、レオ・シルバ(アルビレックス新潟)、ペドロ・ジュニオール(ヴィッセル神戸)がスターティングリストに並んだ。浦和は対照的に、新加入選手でスタメン起用されたのは菊池大介(湘南)のみ。ただしよく見ると、興梠慎三はベンチスタートだし、柏木陽介や槙野智章はベンチにも入っていない。

 柏木については「前日練習で足を痛めた」(ミハイロ・ペドロヴィッチ監督)そうだが、それ以外の陣容については3日後のACL(AFCチャンピオンズリーグ)を考慮したものと見ていいだろう。火曜日にアジアの戦いがあるのは鹿島も一緒だが、浦和はオーストラリアでのアウェー戦(キャンベラでウエスタン・シドニー・ワンダラーズと対戦)。遠征の負荷を考慮すれば、十分に納得できるラインナップだ。このゼロックスは「現時点の実力」のみならず、ACLも含めた長いシーズンを占う「総合力」が試される一戦と言える。

ペトロヴィッチ監督の修正で同点に追い付いた浦和

前半は優位に立つも2失点を喫した浦和は、興梠と武藤の連続ゴールで同点に追い付く

 キックオフは13時35分。試合開始から25分くらいまでは、ずっと浦和がポゼッションを保ちながら、ほとんどの時間帯を相手陣内でプレーし続けていた。とはいえ、この展開は鹿島も織り込み済み。「浦和が相手だと、僕らがボールを持つ時間はそんなに多くはない」という昌子源の言葉どおり、序盤の鹿島は相手の攻撃をじっと耐え忍んだ。もっとも、攻める浦和にもジレンマがあったことは留意すべきだろう。「前半は攻撃がうまく組み立てられていなかったし、もう少し前が(ボールを)収めてあげないと後ろも入れづらくなる。逆にカウンターをあれだけ食らうときつい」とは武藤雄樹の証言である。

 武藤の懸念は、前半39分に現実のものとなる。西大伍のダイアゴナル(斜め)のドリブルからファウルをもらい、鹿島がペナルティーエリア中央付近でFKのチャンスを得た。今季からJリーグでも採用される、バニシング・スプレーでボールと壁の位置が示されると、レオ・シルバが味方に細かい指示を与える。しかし蹴ったのは左利きの遠藤康。浦和GK西川周作は反応できず、弾道はゴール右隅へ。これが決まり鹿島があっさり先制する。さらに43分には、レオ・シルバがインターセプトからスルーパス。土居聖真を経由して金崎夢生が放ったシュートは、ゴールポスト右にはじかれたものの遠藤が詰めて、鹿島が追加点を挙げる。

 前半に2点のビハインドを負った浦和だが、後半はペトロヴィッチ監督の修正の妙が光った。ハーフタイムで李忠成に代えて興梠を同じシャドーのポジションで起用。さらに後半19分には、菊池と駒井善成を下げて、ジェフ千葉から復帰した長澤和輝と関根貴大をピッチに送り込んだ。そしてボランチの阿部勇樹を最終ラインに下げ、ワイドの右に関根、左に宇賀神友弥を移動させることで、反撃の態勢を整える。後半29分、自身のドリブル突破でPKのチャンスを得た興梠が、冷静にゴール右に決めて1点差。そのわずか1分後には、関根の右からのクロスにズラタンが頭で反応し、ポストにはね返ったボールを武藤が左足で押し込んで、ついに浦和が同点に追い付く。

 ゼロックスは同点で90分を終えれば、延長戦なしのPK戦となる。6年ぶりのPK戦をかすかに予感した後半38分、この試合最後のゴールが生まれた。浦和の遠藤航が、相手の縦方向のパスをGKへのバックパスで処理しようとした時、途中出場の鈴木優磨が背後から左足を伸ばす。ボールはコースを変えてGK西川の横をすり抜け、そのままネットを揺らした。「今日のピッチは水をまいていなかったので、ボールが止まりやすいのも把握していました。可能性があると思って狙った」とは、決めた当人の弁。結局これが決勝点となり、3−2で競り勝った鹿島が今季最初のタイトルを手にすることとなった。

鹿島の手堅い補強、浦和の選手層の厚さ

今季最初のタイトルを獲得した鹿島の石井監督。新戦力の融合に手応えを感じていた

「(融合まで)もう少し時間がかかると思っていたんですけれど、試合を通してコンディションと戦術理解を高めていくというところで、非常に早くチームの戦術も理解してくれていました。今日のパフォーマンスも、とても良かったんじゃないかと思います。出場機会のなかった、レアンドロや金森(健志)といった新しい選手の能力を融合させながら、高いレベルのサッカーを目指していきたいです」

 4人の新加入選手をスタメン起用した手応えについて、鹿島の石井正忠監督はこのように語っている。この試合で最もアピールしたのが、小笠原満男とボランチでコンビを組んだレオ・シルバであったことは、衆目の一致するところであろう。前半の2ゴールに絡み(1点目はボールに触っていないが、間接的には十分関与したと言える)、永木亮太と交代する後半24分まではディフェンス面でも大いに貢献した。他の3人についても、レオ・シルバほどの活躍は見せなかったものの、開幕前の時点で鹿島のサッカーにしっかりフィットしているように感じられた。及第点は与えていいだろう。

 エージェントの人間に話を聞くと、一様に「鹿島の補強は手堅い」と指摘する。確かに、クラブのスカウティングや編成のノウハウに、目を見張るものがあるのは事実だ。しかし「鹿島の一番の武器は何か」と問われれば、明確かつブレないスタイルとフィロソフィー(哲学)であろう。そしてそれは、新加入の選手にとっても「自分にどのようなプレーが求められるのか」という明確なガイドラインとなるはずだ。今季初めての公式戦で、4人の新加入選手が(程度の差こそあれ)鹿島のスタイルに順応したプレーを見せていたのは、そうした背景があったように感じられてならない。

 敗れた浦和についても言及しておこう。この試合のポジティブな要因について、ペトロヴィッチ監督は「カウンターを得意とする鹿島に対して同点に追い付き、逆転してもおかしくない展開に持ち込めたこと」を挙げている。実際、この日の浦和の戦いは、決して悲観するものではなかった。むしろ何人かの主力選手を温存しながら、J1王者に対して互角の戦いを見せたことは好材料だろう。ペトロヴィッチ体制となって6年目。選手層もかつてなく充実している。火曜日のACL初戦では幸先の良い結果を残してほしいところだ。

 今回のゼロックスで明らかになったのは、鹿島も浦和も、国内とアジアの戦いをイメージしながらチーム作りを進めているということである。前者は的確な補強、後者は選手層の厚さから、クラブとしての野望が明確に感じられる。思えば昨年のACLは、5月いっぱいで日本勢はすべて終戦となった。今年は国内リーグのみならず、アジアの戦いでもJクラブの熱き戦いを楽しませてもらいたい。待ちに待ったシーズン開幕は、もうすぐだ。

http://sports.yahoo.co.jp/column/detail/201702190001-spnavi

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