「おつかれさまで~す」
明るい笑顔と軽い会釈も交わるその挨拶の主はJ屈指のボールハンター、レオ シルバだ。イントネーションもほぼ完璧な日本人。目を閉じて彼の声を聞いたらあの容貌が思い浮かぶかはなはだ疑わしい。練習後にサポーターから呼び止められればにこやかに応じ、求められる前に手袋を外してサッと手を差し出す。その気さくな人柄は、すでに鹿島サポーターの心もギュッと掴んでいることだろう。
それはプレーの面でも変わらない。かつてボランチにルイス アルベルトが在籍していたことからブラジル人にはポルトガル語で指示を出すようにしてきた昌子源が、同じように声をかけようとすると「日本語でいいよ」と答えた。試合のなかで自分が飛ばす指示もつねに日本語だ。
守備力のすばらしさは誰もが知るところだが、より輝きを見せ始めたのは攻撃面。タメをつくり、角度をつけたパスを前線に通す様は「ビスマルクのよう」(クラブ幹部)と形容されるほど。FUJI XEROX SUPER CUP 2017でも浦和を相手に牙をむき、2点目はレオ シルバのパスから始まったカウンター。鹿島の心臓部分さえもギュッと掴んでしまった。
右へ左へ動きすぎる守備も、ボールを奪ってから自分で運んでしまおうとする攻撃も、鹿島のスタイルに完全にマッチしているわけではない。しかし、いま鹿島はレオ シルバを中心に動きだそうとしている。
文:田中滋(鹿島担当)
明治安田生命J1リーグ 第1節
2月25日(土)14:00KO カシマ
鹿島アントラーズ vs FC東京