日刊鹿島アントラーズニュース

Ads by Google

2017年5月26日金曜日

◆広州と済州で見たJリーグ勢の敗戦。 鹿島&浦和、完封負けの共通点は?(NumberWeb)


ガックリと肩を落としてピッチを去る浦和の選手たち。過酷な条件でもいかに気迫を持って戦えるか……が試された一戦となった。

 出場4クラブ中、ガンバ大阪をのぞく3クラブが1位でグループリーグを突破した今季のACL。決勝トーナメントラウンド16第1戦、Jリーグ勢はアウェーでの試合に挑んだが、勝利したのは川崎だけ。鹿島、浦和が敗戦を喫する結果となった。

 鹿島は負傷者が相次ぎ、19日の川崎戦では0-3と完敗するなど直近のJリーグで2連敗中。そして、浦和も昇格組の清水相手に3-3と勝ちきれなかった。そんなチームの現状がそのままACLの結果に繋がったと考えることもできる。

 中国広州での鹿島、そして、韓国済州での浦和の姿から感じたのは、状況に応じて対応できない試合運びの拙さ、大胆さや迫力の欠如でもあった。

 試合後、両チームの選手が口にしたのは、「ボールの失い方の悪さ」であり、相手の得意とするカウンターを防げなかったことだった。

「得点が取れない」と昌子源が語り、柏木陽介の言う「失点の多さ」という自分たちの課題を背負ったまま、ホームでの第2戦を迎える。

試合のテーマは明確だったが、すぐに故障者が出て……。

 5月23日。6万人近い収容者数を誇る天河体育中心体育場のスタンドは広州のサポーターで埋め尽くされていた。そして、20時キックオフにもかかわらず、気温28度、湿度83%という悪条件に加え、強い雨が降る中、試合が始まった。

「まずは前半を0で抑える」

 鹿島アントラーズの面々はそのテーマのもとピッチに立った。

 植田直通、西大伍、町田浩樹、レオ・シルバ、遠藤康が負傷欠場。本来ボランチの三竿健斗をCBで起用、FWには金森健志、右サイドには伊東幸敏が先発リストに名を連ねるスクランブル態勢での試合だった。

 むし暑さに加えて、ピッチも決して良い状態とはいえなかった。

「芝にデコボコがあったから、そこに足をとられないように試合前から気にかけていた」と話した金森だったが、前半16分、芝にひっかかるような形で、足を捻ってしまう。プレーは続行したが、長くは続かなかった。

攻撃陣とDF陣との意識のズレが出てしまう。

 前半の広州恒大に怖さはなかった。

 鹿島は前線からのプレスが功を奏し、好機が生まれていたが、決めきれない。逆に広州はボール奪取後、鹿島のボランチ周辺のスペースを使い、絶好機を演出する。鹿島はGKクォン・スンテの好セーブと相手のシュートミスに救われた。

「とにかくシュートで終わってほしい」

 昌子は攻撃陣へそう伝えたという。

 そうすれば、相手にカウンターのチャンスを与えずにすむと考えたからだ。しかし、昌子の要求通りに試合は運ばなかった。

「ボールの失い方が悪い」とDF陣は考える。

 逆に攻撃陣は、「もっと押し上げてほしい」と感じていたかもしれない。

 それでも、前半を0-0で抑えたという点で鹿島はミッションを達成した。

「攻められていても“やられている”感じはなかった」

「後半になれば、相手も落ちてくるだろうから、自分たちにチャンスが来ると話していた」と伊東が振り返る。しかし、後半開始早々に、金森の負傷が悪化し交代。

「相手の嫌がるプレーをすること、前からプレスをかけていく守備を意識した」と話す金森の不在が影響したのか、そこから広州恒大の攻撃の圧力が増し、60分以降の鹿島は完全に受け身の状態に。そして、75分、右コーナーキックからパウリーニョにゴールを決められる。

「攻められてはいたけれど、“やられている”という感じはなかった。にもかかわらず、あのコーナーキックのとき、足が止まってしまった。集中が切れないように、俺や(三竿)健斗がずっと声を出し続けていた」と昌子。

 セットプレーに関しては特に気を配った。

「足がつったり、疲れが見えている選手もいた。パウリーニョのマーカーへもうひと声かけていれば、失点はしなかったかもしれない」と昌子は悔やむ。

鹿島の策である「前半を0で抑える」は成功したが。

「ACLはJリーグとは違うから、挑発してきたり、相手はイヤらしいプレーもしてくる。それを真に受けたら、勝てない。最後は意地でもマイボールにしようとする気持ちの差が出たとも感じる。得点のチャンスはあったのに、みすみすそれを逃してしまった」

 チームメイトに対して厳しい言葉を重ねた昌子から感じたのは、強い自責の念だった。

 どんな試合内容であっても、どんな失点シーンであっても、失点は失点でしかない。その責を担うのは、センターバックだ。そんな覚悟が伝わってくる。

 同点に追いつくべく、攻勢を仕掛けようとした矢先、右サイドバックの伊東が負傷交代する不運もあった。86分に投入した鈴木優磨へのファールでFKを得るがそれも決めきれず、4分間のアディショナルタイムを経て、1-0のまま試合は終了する。

「前半を0で抑える」ことには成功した。

 しかし、そのぶん慎重な入り方にはなったはずだ。

 結果論にはなるが、それほど勢いのなかった相手に対してもっと積極的にいくこともできたかもしれない。

 金森、伊東の負傷や後半に勢いを増した相手など、想定外の出来事も少なくなかったはずだ。そういう中で最少失点での敗戦。チーム状況を考えれば、そう悲観すべきではないのかもしれない。それでも1点が遠かった。

「勝ちたかったけどね。次、勝てばいいだけだから」

 短くそうコメントした小笠原満男の嗄れた声が、苦闘を物語っていた。

済州の武器がカウンターなのは分かっていたが……。

 翌24日、韓国済州の総合運動公園。

 平日15時キックオフの試合に訪れたのは2000人に満たない観衆だった。

 済州ユナイテッドのホームスタジアムでもある済州ワールドカップ競技場では、U-20ワールドカップの試合予定があり、やむなく照明設備もないこの小さな競技場での日中開催となった。

 済州の選手は、士気を高めるように大きな声を発しながら、アップをしている。その様子には、プロチームではなかなか見られない、尋常ではない気迫が漂っていた。

 済州はグループステージでガンバ相手に大量得点を挙げて突破を果たしていた。彼らの武器がカウンターであることは、浦和レッズの選手たちも十分に意識していた。そして、その中心となるのが10番のマルセロだということも。

 指揮官はそのエースの対応に阿部勇樹を指名する。

先に失点し「早々にプランが崩れた」という選手も。

 3バックの前にアンカーのように阿部が立ち、柏木は1列高い位置に立つ。そして、前線は興梠慎三とズラタンの2トップ。3-5-2という“策”で挑んだ。

 しかし、キックオフ直後からマルセロの対応に阿部が苦慮している様子が伝わってきた。

 落ち着きなく、最終ラインに吸い込まれるようなポジショニングは阿部らしくなかった。

「10番は真ん中にいるわけでもなく、ポジションを変えるし、11番、22番と3人で流れたりもするから」

 そんな不安定な状態の阿部が入れた縦パスをインターセプトされ、簡単に先制点を許してしまう。シンプルで素早いその攻撃は、広州恒大以上の迫力があった。

 失点したことで、「早々にプランが崩れた」と振り返る選手もいた。

 槙野智章、森脇良太が攻め上がり、遠藤航と阿部だけが残る最終ラインの前に浦和の選手はいない。そこに立つのは、縦パスを奪取しようと狙う済州の選手だった。

 にもかかわらず、浦和はマイボールになるとその中央へパスを入れてしまう。当然ボールは奪われる。何度も数的優位な状態でシュートを許した。再三のピンチを西川周作が救い、相手のシュートミスにも助けられた。

「後ろでボールをキープするとか、簡単に縦に入れるんじゃなくて、ひとり飛ばしてパスをまわすとか、相手にもたせるような状況を作っても良かった」と阿部。しかし、遠藤の1バックや遠藤と阿部の2バック状態が続き、相手の術中にはまったままだった。

「耐える」気迫が尋常ではなかった済州の選手たち。

 浦和の選手たちのキャリアを考えれば、帰陣することやテクニカルファールで、試合のリズムを変える巧みさや相手をいなす巧妙さも見せられるべきだ。それこそ、アウェーなのだから、失点を防ぐ慎重な戦いという選択肢も必然だっただろう。

 もちろん、敵地での1点の価値は大きい。

 0-0よりも1-1、1-0で負けるより、2-1での敗戦のほうが有利なのだから、得点を奪いに行く思惑も理解できなくはないが……。

 それでも、0-1のまま時計は進む。

 後半は相手のプレスも弱まり、自陣に引き込んだ状態でペースダウンした。浦和もショートパスで崩す時間帯も増えたが、ゴールを決めきれない。

 李忠成が投入され、さらに高木俊幸を投入し、攻めの姿勢を高め、敵陣へ押し込むことはできたが、密集度が増し、そこでのミスが大きなピンチを招く危険性も高まっていた。

「集中を切らすな!」とでもいうように、済州の選手たちがお互いに声を掛け合い、手を叩き、鼓舞し合う。彼らにも余裕はなかったのだろう。「とにかくここを耐えよう」という気迫が漂ってくる。

 そして、終了間際。

 ボール奪取に成功した済州は、簡単に前線にボールを送る。それを受けた選手がそのままゴール前までドリブルで運び、放ったシュートがゴールネットを揺らした。

一番の問題は問題点を試合中に修正できなかったこと。

 最初の失点後、ペトロビッチ監督の指示により、ボランチの位置に下がった柏木は、「相手はカウンターを狙っているのだから、そこまで下がっても意味が無い」と感じていたという。最終ラインまで下がる場面さえあったくらいだ。もちろん、槙野と森脇の位置は高く、森脇も惜しいシュートを打ってはいたけれど……。

「監督からも『行け』という指示があったけど、カウンターを狙っているチームに対して人数をかけて攻めるべきではなかったのかもしれない」と好機を演出した後半の戦い方にさえ悔いを残していた。

 試合後の選手たちは、「もっとこうすればよかった」と数多くの改善点を口にしているが、「それ(修正)を試合中にできなかったことに問題がある」と阿部は指摘している。

 昨季リーグ最少失点で勝ち点を積み上げた浦和だったが、今季はその手堅さが失われた印象が強い。今季加入したラファエル・シルバの不在がその原因とは考えづらい。失点が多くともそれを上回る得点が決まれば、試合には勝てる。しかし、ホームアンドアウェイで戦う、ACLの決勝トーナメントはそういうわけにはいかないだろう。ホームでの失点の持つ意味は大きいのだから。

 試合終了の笛が鳴ると、済州ユナイテッドのほとんどの選手がピッチに座り込み、しばらく立ち上がれなかった。

 勝負に対する粘り強さや執念がそこにはあった。

環境云々よりもメンタル面での改革の必要性を感じる。

 ACLで苦戦するJリーグ勢を見ていると、泥臭さや激しさという面で物足りなさを感じる。

 クリーンでフェアなプレーを推奨するJリーグ。

 その意義は小さくはない。

 しかし、国際試合となるとその国内基準では戦えない。

 Jリーグ勢のACLでの活躍をバックアップするためにスケジュール調整などハード面での改善はなされているが、プレーの質というソフト面での改革の必要性を改めて感じた。

 そして、これは欧州チャンピオンズリーグでも感じることだが、国が変われば、チームのスタイルにも違いがある。たとえば欧州CLにおいてハイプレスでセビージャをくだしたレスターのように、自分たちの強みで勝負することで、格上と思われる相手を圧倒することも可能になる。

 ホームでの第2戦、確かに失点は怖い。けれど、シンプルに自分たちのスタイルで勝負することがもっとも効果的な打開策だと思う。

 そして、追い込まれた状態だからこその“意地”を見せてほしい。

http://number.bunshun.jp/articles/-/828133




Ads by Google

日刊鹿島

過去の記事