日刊鹿島アントラーズニュース
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2017年6月30日金曜日
◆【ライターコラムfrom岡山】「J2で突き抜けた存在に」FW豊川雄太が苦悩の末に得たストライカーの感性(サッカーキング)
豊川雄太のストライカーの感性が研ぎ澄まされてきた。
J2リーグ第20節・松本山雅FC戦でチームを敗北から救うゴールをゲット。片山瑛一のロングスローによってゴール前にスクランブルが起きると、豊川はディフェンダーの間を擦り抜けるように走ってルーズボールに一人だけ反応してネットを揺さぶった。片山のロングスロー→こぼれ球→豊川フィニッシュという形は第19節・FC岐阜戦に続いて2試合連続。敵味方入り乱れるゴール前で豊川独特の感性が岡山にゴールをもたらしている。
ただ、岐阜戦後も松本戦後も豊川の表情に笑みはなかった。2試合ともチームが引き分けに終わったこともあるが、「1試合に2点、3点取れる選手になりたい」。彼が追い求めている自分自身の姿はまだまだ高いところにある。次節でリーグ前半戦が終わる時点で6得点という数字に、豊川は飢餓感さえ覚えている。
レンタル期間を延長して今季も岡山で挑戦することを選んだ豊川は、『全試合先発と20得点』の目標を掲げてスタートを切った。明確な数字の目標を自分に課した理由は、レンタル元であり昨季はリーグと天皇杯の二冠を達成してクラブW杯で世界2位になった鹿島アントラーズでプレーするにふさわしい選手になるためだ。
「すごいレベルの高い日本一のチームでやることが一番」。大津高校を卒業して鹿島に入団した豊川は鹿島で活躍することをプライオリティの最上位に置いている。ただ、昨オフに大型補強をして競争力がどんどん高めている鹿島でプレーするには、自分に自信をもてる、周囲を納得させられる、数字が必要だった。
「普通の選手じゃ20得点は取れないし、J2ですけどその中で突き抜けた存在にならないとあのチームで試合に出ることができない。だから20得点なんです」
もっともサッカーは個人競技ではない。リーグ序盤戦に豊川は大事なことに気付かされた。目標の一つに挙げていた『全試合先発』は第6節にベンチスタートとなって早々に断念することとなり、第9節からは負傷も重なってピッチに立つことも叶わなかった。外から試合を見つめていた時期、豊川は徹底的に自分を見つめ直してチームのために走れていない自分に気付いた。
「自分がノッているときは走れるんですけど、でもそれは誰でもできる。うまくいかないときにチームのために自分から率先して走れているかっていうと、そうではない。そこがまだまだなんだなと思います」
そして第12節に先発に戻ってきた豊川は走った。何度も何度もスペースへ抜け出し、二度三度と相手を追い掛けていく。足が攣って69分にピッチを退くこととなったが、その後も豊川はチームで一番走ることを自分に課して試合に臨み、先発出場を続けた。
しかし彼はストライカー。走ってチームに貢献するだけでは充足感を得られないし、自分が求めている姿がそこにあるわけでもない。「走ることは大事ですけど、最近はそれが一番上に来ちゃっている部分があった。やっぱり点を取ることが一番大事」と再び頭の中を整理して臨んだのが第19節の岐阜戦。豊川は走り続けると同時にストライカーの感性を呼び戻してゴールネットを揺らした。
胸に大きな野望を抱く22歳のストライカーは、岡山で四苦八苦しながらシーズンを過ごしている。そんな豊川の姿を長澤監督もしっかりと評価し、「ようやく攻守にちゃんと力を使えるようになってきた。ボールを追い掛けるようになってきたんでそれだけでも成長だし、箸にも棒にもかからない試合もあったけど、ちょっとずつ脱皮してきている」と目を細めている。
求める自分の姿はもっと高いところにあるが、豊川は上を見るだけでなく足元も見つめて高みに向かうために必要なことを身に付けてきた。これから突入していくリーグ後半戦でゴールラッシュを見せる準備は整ってきている。
文=寺田弘幸
https://www.soccer-king.jp/news/japan/jl/20170629/606516.html
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