Jリーグ副理事長の原博実氏がスタジアムや視察先で見たもの、感じたことを率直に語る『超現場日記』。第2回は30日に行われたルヴァンカップ準々決勝第1戦の仙台対鹿島を視察した。
8月30日はJリーグYBCルヴァンカップ視察のために仙台へ。
試合開始前、ルヴァンカップのバックボードを背にニューヒーロー賞受賞者になりきって写真を撮るとルヴァン商品がもらえるという企画ブースに立ち寄ってみる。さらにSNSにて発信してくれると、抽選で8名様にノックアウトステージオープンドロー出席全選手のサイン入りトーナメント表も当たる。第2戦では皆さんも是非ブースにお立ち寄りください。私も仙台サポーターと一緒に写真に収まってみました。
さて、ルヴァンカップは準々決勝。この日の第1戦ではベガルタ仙台が3-1で鹿島アントラーズを破ったが、この日は率直に言って“ベガルタの日”だった。
仙台はGKシュミットダニエル、3バックに平岡康裕、大岩一貴、増嶋竜也、右アウトサイドに古林将太、左アウトサイドに中野嘉大、中盤は富田晋伍と三田啓貴、そして西村拓真と奥埜博亮の2シャドーに野沢拓也の1トップという布陣。
鹿島は日本代表に選ばれた昌子源、植田直通の両センターバックに代わり、ブエノと中盤から下がった三竿健斗。ボランチに小笠原満男とレオ・シルバ、右に遠藤康、左にレアンドロ。2トップに鈴木優磨と土居聖真を起用し、GKには久しぶりにクォン・スンテが入った。
前半はスコアレスで終了。鹿島の鈴木満強化部長とハーフタイムに話す。「今日は全然動けていない。このままでは良くない」と珍しく不安を口にする。さすが満さん、そのとおりの展開になる。最初に動いたのは鹿島。55分、西に代えて伊東を投入。しかし、その直後の60分、コーナーキックから中野が決めて仙台が先制。
2点目はまたしてもコーナーキックから。ブエノもクォン・スンテも久々の出番だったことを考えると、昌子と植田の不在がこの連続失点に微妙に影響していることは間違いない。
65分、鈴木に代わって金崎夢生を投入。鈴木は前半から仙台の激しいプレスにイライラが見られ、なかなか彼の良さを出させてもらえず。そんな時にでも冷静にしっかり結果を出せるようになれば、もう一皮剥けていくのだろう。その後、仙台は石原直樹が決定的なシーンが迎えるも決められず。対する鹿島が75分に1点を返す。さすが百戦錬磨のチームだ。
アウェイゴールを奪ったことで2戦合計スコアを考えれば悪くない状況になった鹿島だったが、79分に追い上げムードに水を指すような形でレアンドロが仙台の選手を踏みつけて一発レッドカード。この日、鹿島の選手たちは仙台の激しいプレスや審判の判定にイライラする場面が珍しく目立った。
試合の流れはこれで仙台に戻る。このまま終わりたい鹿島と追加点を狙う仙台の攻防。それを打開したのは仙台。85分、古林に代わって78分から出場した蜂須賀孝治が右サイドを突破し、再び奥埜が決めて仙台が3点目。
東京に帰るために泉中央駅まで走ると、鹿島サポーターの女性グループ6人と一緒の車両に。「原さん」と声をかけられる。「今日は残念でしたね」と言うと、「次ホームで2-0で勝ちます!」と力強い発言。こちらが試合のデータを見たり、他の試合情報をチェックしていると、「次のホームゲーム、U-21メンバーは三竿健斗だけじゃない」「センターバックがいないね」「西ができるか」「優麿は途中からのほうが力を発揮する」「ヘディングをもっと練習して欲しいね」「シュート4本だって。もっとトラップからシュートを速くしてほしいよね」と言った会話が聞こえてくる。
下手な解説者より鋭い意見だと感心していたら、思わず目が合ってしまった。
「東京までですか?」と尋ねると、「茨城まで帰りますよ。上野駅で乗り換えです」。別の方は「私は東京までなので、今日中には着けるかな。今度は仕事明けで新潟も行きますよ」とのこと。
サポーターのすごいパワーをひしひしと感じる。みなさん遠くまで本当にありがとう。こういうファン・サポーターの皆さんがいて、Jリーグは成り立っている。それを忘れてはならないとあらためて肝に銘じる。
地下鉄から東北新幹線に移動すると、そのグループとまた遭遇し、思わず会釈。新幹線の中もずっと話しながら帰るんだろうなと思わず想像してしまった。
ルヴァンカップ準々決勝第2戦、鹿島対仙台の一戦は9月3日18時キックオフ。鹿島もこのままでは終わらないだろう。セカンドレグが楽しみだ。
その前に今夜はまさに大一番。ロシア行きの切符を懸けた最終予選、日本対オーストラリア戦。スタジアムで、テレビの前で、みんなで心から応援しよう!
文=原博実
【原博実の超現場日記/第2回】敗れてもなお鹿島サポーターの深い愛情に触れる