ジーコはU-15の国際大会「日本ブラジル友好カップ」を主催 井手口も11年大会に出場
日本代表の11月の欧州遠征において、メンバー最年少だった21歳のMF井手口陽介(ガンバ大阪)は2試合連続でスタメン出場。10日のブラジル戦(1-3)では、後半17分にDF槙野智章(浦和レッズ)のヘディング弾をアシストした。そんな井手口の活躍を、ブラジルで喜んでいる人物がいる。“サッカーの神様”ジーコだ。
ジーコは毎年8月、リオデジャネイロにあるジーコサッカーセンターで「U-15日本ブラジル友好カップ」という大会を主催。今年で20年目を迎えた公式大会で、ブラジル全国から20近いビッグクラブが集結する。
U-15のカテゴリーとしては、これだけの規模と参加チームのレベルを維持し、長い歴史を刻む大会は、ブラジルでも他にない。それだけに、プロや代表への“登竜門”としても有名だ。
その中に、日本からも毎年、鹿島アントラーズやJリーグ選抜をはじめ、4〜6チームが参加している。その2011年大会に、Jリーグ選抜のメンバーとして出場していたのが、G大阪ジュニアユース時代の井手口なのだ。
マルセロらビッグネームもこの大会で頭角
ジーコは、選手の育成におけるU-15世代の重要性を常に語ってきた。国土の広いブラジルでは、この世代で他の州の強豪クラブと対戦できる機会は少ない。一方、日本も今でこそ下部組織の活動が盛んだが、以前はこの世代での国際交流というのは難しかった。
そんな両国の少年たちに、新たな経験の機会を与えたいというのが、ジーコの大会発足の目的だった。
ブラジル代表の日本戦メンバーの中でも、MFウィリアン(チェルシー)やGKアリソン(ローマ)、DFマルセロ(レアル・マドリード)、MFフィリペ・コウチーニョ(リバプール)らが、この大会で頭角を現した。
ジーコは「ブラジルでは、この大会から多くのプロや代表選手が輩出されている。Jリーグの村井満チェアマンが教えてくれたんだが、日本でも、この友好カップでプレーした49人の少年が、Jリーグでプロとしてプレーしている、もしくはプレーしたそうだ。それは我々にとって非常に良いこと。トップチームでプレーできる選手たちを発掘できる、という意味でも、この大会がいつでも重要なものであったということだ」
「おめでとう、日本。おめでとう、井手口」
そして、今年の大会の真っ最中のことだ。8月31日、日本代表がオーストラリア戦で勝利し、アジア予選を突破したというニュースが飛び込んできた。そのワールドカップ出場権の獲得を決定的なものにする2点目のゴールを決めたのが、井手口だったのだ。
それを聞いたジーコは、息子か教え子の快挙であるかのように、それはもう喜んで、井手口と日本代表にメッセージを寄せてくれた。
「井手口が? そうか、それは良かった。おめでとう、日本。おめでとう、井手口! 再び大陸予選を突破したこと、そして6大会連続のワールドカップ出場に。これからもハードに頑張ることだ。ブラジル・ワールドカップより、良い結果を出してくれることを願っているよ」
そして今回、ブラジル戦でも存在感を示した井手口に、ジーコのメッセージに対する返事をもらった。
「あの大会に出場することで、あの年代からブラジルに行って、慣れない環境でやらせてもらいました。いろんなチーム、しかも、南米のチームとやることなんかないから、すごく良い刺激をもらったし、自分にとっては、あの年で本当に良い経験ができたんじゃないかなと思います。これから、もっともっと活躍して、ジーコさんにもっと見てもらえるように頑張りたいですね」
大会名にもなっている「日本とブラジルの友好」が、少年時代の大会中に限らず、プロになり、代表に上り詰めてからも続いていく――。それもジーコにとっての、大きな喜びの一つに違いない。
【了】
藤原清美●文 text by Kiyomi Fujiwara
ゲッティイメージズ●写真 photo by Getty Images
井手口と“神様”ジーコの意外な関係 「もっと活躍して、見てもらえるように…」