日刊鹿島アントラーズニュース

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2017年11月7日火曜日

◇呪われているのか、フロンターレ。 はかなく夢は散り、8度目の準優勝(Sportiva)


 ここまでくると、何かに呪われてしまっているのかもしれない。川崎フロンターレのことである。

 11月4日に埼玉スタジアム2002で行なわれたルヴァンカップの決勝戦。川崎Fはセレッソ大阪に0−2と敗れ、またしても目前でタイトルを逃した。



 川崎Fはこれまでに2000年、2007年、2009年と同大会のファイナルに挑んだが、いずれも敗戦。「4度目の正直」を記した今回も、結果を出せなかった。ルヴァンカップだけでなく、川崎Fの歴史を紐解けば、リーグ戦では2006年、2008年、2009年と3度、2位となっており、記憶に新しいところでは今年元日の天皇杯決勝で鹿島アントラーズに敗れ、悲願のタイトル奪取は叶わなかった。

 国内三大タイトルで実に8度の準優勝。思わず「2位じゃダメなんでしょうか」と叫びたくなるほど、タイトルから見放され続けている。「シルバーコレクター」というありがたくない呼び名は、ますますこのクラブにふさわしいものとなってしまった。

 試合後、取材エリアに現れたMF中村憲剛は「悔しいです」と唇を噛みしめた。生え抜きの37歳のベテランにとっては、加入前の2000年を除き、7度目の準優勝である。その胸中は「なぜ勝てないのか」という、やるせない想いでいっぱいだろう。

「どれだけ(経験を)積んでいかないといけないのかという想いは、正直ありますけど……。(足りないものは?との問いに)それがわかっていたら、優勝していると思う」
 おそらく、経験値では川崎Fのほうが上だっただろう。しかしサッカーとは、どれだけの経験値を積み上げても同じ試合はふたつとなく、経験をもとに周到に準備をしても、想定外のケースが起こり得る。

 この試合で起きた想定外とは、開始1分の失点だろう。なんでもないボールを、センターバックのDFエドゥアルドがまさかの後逸。FW杉本健勇に難なく、先制点を叩き込まれてしまった。

「最初で失点したのは、今季はほぼ初めてだと思う。それがこの決勝にきてしまっては難しい。こっちは隙を見せずに、隙を突こうというところで失点してしまったので」(中村)

 この失点の持つ意味はあまりに大きかった。C大阪に専守防衛を徹底されてしまったからだ。

 スコアが動いた後の試合は、川崎Fの一方的な展開だった。ほとんどの時間帯でボールを保持し、細かいパスワークでC大阪ゴールに迫る。しかし、自陣で人数をかけるC大阪の堅守をこじ開けるのは、一筋縄ではいかなかった。

「向こうは死に物狂いで、1点を守ろうという戦いに切り替えていた」(中村)
 守りを固める相手をどう崩すか――。これが、この日の川崎Fの最大のテーマとなっていた。しかし、ユン・ジョンファン監督のもとで組織的な守備を手にした今季のC大阪は、実にタフな相手だった。「割り切って守備に専念して、後はカウンターを狙うだけだった」。MF清武弘嗣が振り返ったように、C大阪の割り切った対応は、川崎Fの攻撃を瀬戸際で跳ね返し続けた。

 つないでも、最後の場面を崩し切れず、ボールを失いカウンターを浴びる。ピッチでは、まるでリプレーを見ているような光景が何度も繰り返された。

 そこで感じたのは、川崎Fは実に「正直なチーム」だということだ。パスワークをベースに、サイドに展開し、バイタルエリアの連係で打開を試みる。失敗しても、ふたたび同じような攻撃を繰り出していくのだ。自らのスタイルに自信があるのだろう。やり続ければ、いずれ成果を手にすることができるはずだと。

 見方を変えれば、他に選択肢がなかったということもできる。たとえば、遠目からミドルシュートを放つことや、ロングボールをシンプルに入れるといった方法論が、川崎Fにはなかった。終盤に川崎Fは空中戦に強いFW知念慶を送り込み、前線の人数を増やしたが、あくまでつなぎにこだわって、このストライカーを生かす術(すべ)を示せなかった。

 パススタイルが確立している分、他の攻め手を備えていない。サッカーは相手があるスポーツである。相手の出方によって違った方法論を示すことも求められる。ましてや、専守防衛に割り切った相手である。同じことを繰り返すだけでは、ゴールを奪うことは難しかった。

 それでも終盤にパワープレーを仕掛けたが、そもそもそうした引き出しがないだけに精度が足りず、むしろC大阪の守備を楽にしただけだった。終了間際にはカウンターから2点目を奪われ、万事休す。川崎Fの夢は、はかなく散った。

 ポゼッションでもシュート数でも大きく上回りながら、スコアは0−2の完敗。採点や判定のない、ゴールがすべてを物語るサッカーというスポーツの揺らぐことのない真理が残酷な現実を浮かび上がらせた。

 C大阪の選手がカップを掲げる檀上の光景を、中村はどのような思いで見つめていたのだろうか。シルバーコレクターのレッテルは、チームだけでなく、中村にもまとわりつくものだ。

 それでも中村には、まだチャンスが残されている。残り3試合となったリーグ戦で、川崎Fは首位の鹿島に勝ち点4差の2位につけている(第31節終了時点)。たしかに状況は厳しいが、決して逆転が不可能というわけでもない。

「ここでシーズンが終わったわけではないので、どれだけここから切り替えられるかどうか。やっていくしかないと思います。まだ終わったわけではない。自分たちがここまでやってきたことがなくなるわけでもない」

 そう語気を強める中村が、シルバーコレクターの汚名を返上するときは、果たしてやってくるのだろうか。

呪われているのか、フロンターレ。はかなく夢は散り、8度目の準優勝

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