3月3日、サンティアゴ・ベルナベウで、リーガエスパニョーラ第27節レアル・マドリード対ヘタフェの試合が行なわれた。ホームで対戦した第8節を欠場した柴崎岳にとっては、自身の欧州移籍を後押しした、2年前に日本で行なわれたクラブW杯以来の対戦となったが、鹿島アントラーズの一員として2ゴールを決めた前回のようなパフォーマンスを見せることはできなかった。
試合は、レアル・マドリードがガレス・ベイルとクリスティアーノ・ロナウドの2得点で3対1と勝利。火曜日に行なわれるチャンピオンズリーグ(CL)のPSG戦にはずみと自信をつける結果となった。
特にエースのクリスティアーノ・ロナウドのコンディションの上昇を感じさせたことは大きなプラス材料だ。前半終了間際に見せたDF2人を外してからの左足のシュートも、後半33分の相手DFより高い打点でのヘディングで決めた2点目も、その真価を発揮したものだった。さらにケガから復帰したマルセロが途中交代で好プレーを見せたことも、パリでのCL決戦に向けて大きな収穫となった。
柴崎が出場したのは後半14分。セルヒオ・モラに代わって背番号10番はピッチに立った。その交代直前には、ヘタフェ番記者が試合後に「今後あいつがプレーすることはない」と激昂していたシーンが起きていた。ナチョ・フェルナンデスへの軽率なプレーにより、ロイク・レミーが2枚目のカードをもらい退場したのだ。
こうして柴崎はヘタフェが数的不利な状況に追い込まれてからの出場となった。1人少ないうえ、両チームの力の差からみても、ヘタフェが自陣に閉じ込められている時間が長くなることが予想される。ホセ・ボルダラス監督は一発で局面を変えることのできる柴崎にチャンスメイクを期待してピッチに送り出したのだろう。
だが、肝心のボールはなかなか回ってこなかった。
交代直後こそ、相手にカットはされたものの縦パスを出すなど”らしさ”の見えるプレーはあった。しかし、時間の経過とともに柴崎は守備に奔走するようになり、徐々に姿を消していく。終盤、右サイドに回ると、ケガ明けとは思えないほど積極的に攻撃参加を見せるサイドバックのマルセロと対峙したが、その勢いあるプレーを止めることができないまま、試合終了の笛が鳴り響くのを聞いた。
試合前の地元紙の予想では、アマト・エンディアイエが出場停止中であることから、柴崎の先発を予想する声も多かった。その根拠のひとつに、柴崎がカンプ・ノウでのバルセロナ戦に先発出場したことが挙げられている。柴崎は日本人で唯一、レアル・マドリードとバルセロナから得点を決めた選手であり、昨シーズンもテネリフェの選手として1部昇格プレーオフで得点を決めるなど、大一番で強さを発揮してきた実績があるからだ。
だが蓋をあけてみれば、ここ数試合と同様にベンチスタートだった。ヘタフェは、柴崎がケガをしている間に、それまでベンチ要員だったアンヘル、さらにフランシスコ・ポルティージョが結果を出して定位置を獲得、チームを牽引する選手となっている。
また、冬の移籍市場ではラス・パルマスからレミー、そして下部組織からは、アマト同様にスピードが売りの19 歳のコンゴ人メルベイユ・ヌドキートが加入した。シーズン開幕のとき以上に、前線の定位置争いは激しくなっている。このレアル・マドリード戦も、ボルダラス監督にとって、もはや背番号10番が絶対的な選手でなくなったことを示すスターティングメンバーだった。
試合に出ればインパクトあるプレーを見せている柴崎だが、ここまで数字に残る結果はホームでのバルセロナ戦で見せた強烈なボレーの一発だけ。今、柴崎にとって必要なのは泥臭くても結果を出すことだ。そしてその結果を出すためには試合に出場しなければならならい。しかし、出場は何ひとつ保証されていない。
「鶏が先か、卵が先か」――柴崎はいま、そんなジレンマに苛(さいな)まれているのではないだろうか。
「レアルに強い」柴崎岳。リーガでの初対決はクラブW杯の再現ならず