[大学サッカー・マン・オブ・ザ・マッチ]
[4.8 関東大学1部L前期第1節 法政大3-1駒澤大 味フィ西]
エースがいきなり全開だ。法政大の背番号20、東京五輪世代の代表にも選ばれるFW上田綺世(2年=鹿島学園高)は、前半35分にDF黒崎隼人(4年=栃木SCユース)のマイナスクロスを流し込んで先制点を決める。後半6分にはCKを合わせてマルチゴールを記録した。
しかしゴール後、上田の表情にあまり笑顔は見られなかった。「いろいろゴチャゴチャしたことがあったので」。“ゴチャゴチャ”があったのは試合前。当日着用するユニフォームを持ってくるのを忘れてしまったのだ。
いつもはチームが管理して試合当日の会場にユニフォームを持ち込むが、この日は前日の開会式でユニフォームを使用したこともあり、選手自身で翌日の試合に持ってくることになっていたが、それを忘れた。
試合は背番号を縫い合わせた応急ユニフォームで代用。本物のユニフォームは試合終盤に届けられたが、多くの人に迷惑をかけたという後悔が、ゴールを決めたという結果よりも、表情を引き締めさせた。
ただし、長山一也監督は「ちょっと抜けているところもあるが、それがFWらしいところ」と評価する。人間教育を重視するため、エースの不注意を擁護することはなかったが、「持っているものは良いものがある。もっともっと活躍してほしい」と愛弟子への期待を語る。
とにかくこの日の上田は何よりも反省が先にくる様子。昨年記録した12得点を超えたいかという質問にも「ゴール数よりもとにかくチームの勝利。勝つために必要なことは自分が点を取ることだと思っているけど、自分の記録には興味はない」とキッパリ。チームメイトへの感謝はこれからもピッチ上で返していくつもりだ。
(取材・文 児玉幸洋)