日刊鹿島アントラーズニュース

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2018年4月11日水曜日

◆三竿健斗「簡単には解決しない」。 鹿島が悩む昨季終盤からの停滞感。(Number)





 地を這い、糸を引くような美しいパスだった。

 J1第6節の湘南ベルマーレvs.鹿島アントラーズ、前半7分でのことだ。オウンゴールで先制された鹿島は、その直後にカウンターを仕掛ける。左サイドでボールを受けた三竿健斗はフリーとなり、前を向く。

 戻り切れていない相手の陣地にはスペースがあり、前に走り込む金崎夢生、土居聖真、そして鈴木優磨へのパスコースが見えた。

「その中で、あのコースが空いているのが正直、びっくりした。浮き球だと時間的に相手が戻ると思ったんで、できるだけ早く優磨に届けようと思って」

“決めてくれよ”と言わんばかりの適度なスピード、絶妙なタイミングで、グラウンダーのパスが鈴木の足元に入った。鈴木は倒れ込んできたGKの動きを見て、浮かしたシュートで同点ゴールを決めた。

「イメージ通り。今、いい感覚を持っていると思います」

 三竿は、小さな笑顔を見せた。

日本ではプレッシャーを感じなくなった。

 ここに来ての“いい感覚”は、3月の日本代表ベルギー遠征で得たものだという。

 マリ戦、三竿は後半15分から長谷部誠に代わってプレーした。1点ビハインドの状態で攻撃的にプレーしたが、アフリカ勢特有のスピードやフィジカルの強さに最初は戸惑ったという。だが、後半アディショナルタイムに右サイドからクロスを上げて中島翔哉の同点ゴールをアシストした。

 続くウクライナ戦では後半36分に途中出場。欧州中堅国のプレッシャーの強さや球際の激しさを肌で感じたと言う。

「代表で2試合出たんですが、プレッシャーとかスピードとかは日本にはないものだった。そういうのを経験して戻ってきて、その感覚が今も残っている。なので日本ではあまりプレッシャーを感じなくなっています。そういう意味ではベルギー遠征で、いい感覚を持って帰って来れたかなと思います」

シュートに対する意識が高まれば。

 帰国後に風邪を引いたこともあり、この試合が復帰戦となったが、ボールを自ら刈り取り、攻撃ではパスを左右に振り分け、攻守にほとんどミスがなかった。

 あえて課題を挙げるとすれば、シュートを1本も打たなかったことぐらい。

「シュートは、ずっと狙っていたんです。前半1回打てるチャンスがあったんですけど、自分の中で周囲を使いながらという意識があったので……。その後、ボックスの角でサイドハーフが持った時にボールを要求したんですけど、タイミングが合わなかった。でも、イメージを持っていれば、またチャンスがくると思います」

 ここぞという時に効果的なシュートを打てるのは、より怖いボランチになるための条件の1つだ。湘南戦のようにいい形を作りながらも決められないのなら、ミドルやロングシュートで攻撃の形を変える必要性があるからだ。

チーム全体について聞かれると表情が。

 代表から戻ってきてから100%ではないにしろ、自分のイメージ通りのプレーがいい感覚で出来ている。それもあってか三竿の表情は比較的明るかった。だが、チームのことになると途端に表情が曇った。

「シーズン通して、いつもいい時ばかりじゃない。その時期が昨年はシーズン終盤に来て、今年は今がそういう時期だと思います」

 三竿の言葉からは、課題が解消されていないことを感じさせる。特に左サイドハーフのレアンドロが中に入る傾向があり、左サイドバックの山本修斗の前に広大なスペースが空いていた。攻撃は中央から右サイドに偏り、相手に読まれた。結果的に得点をなかなか奪えず、逆に左のスペースを突かれることが増えて失点を重ねた。

 湘南戦でも似た状況が散見された。相手の先制シーンでは、守備陣が右から中央に寄り、左サイドには大きなスペースが広がっていた。そこから岡本拓也にフリーでクロスを入れられ、オウンゴールを招いたのだ。

 試合後、湘南の選手は「相手の攻撃は真ん中だけで恐さはなかった」と話していた。押し込んでいたように見えた鹿島だったが、相手に攻撃を見切られていたのだ。

攻撃面にアイデアが出てきてはいるが。

 実際、攻撃の停滞感は数字にも明確に表れている。開幕後のリーグ戦5試合で失点は1のみに抑えていたものの、得点はわずかに2しか奪えず、複数点を挙げた試合が一度もない。これでは勝点3を得るのは厳しい。

「前の札幌戦よりも、ゴール前での崩しはみんなアイデアがあったし、流動的に3人目を使えている。そういう場面を90分通して増やしていきたい」

 こう話す三竿だが、まだまだ満足のいくレベルには至っていないのが現状だろう。

 大岩剛監督の采配にも少々迷いが見られた。後半24分、土居聖真に代えて安部裕葵を、後半34分には西大伍に代えて永木亮太を投入した。ボランチが本職の永木を右サイドバックで起用し、最後の交代カードは小笠原満男に代えてサイドハーフの金森健志が送り出された。ただ最終的にはアディショナルタイムに決勝ゴールを奪われた。

「もっとお互いに厳しく要求していく」

「あれだけ押し込んでいたのに、最後の最後にやられるのはもったいない。今、何かひとつの刺激でチームが変わるかどうかは分からない。そう簡単に切り替えることができないし、簡単には解決しないと思う。みんな苦しいけど、ここをみんなで乗り切らないといけないし、もっとお互いに厳しく要求していく必要があるんじゃないかなと思います」

 三竿は、厳しい表情でそう言った。

 鹿島は現時点でまだ2勝2分2敗、湘南戦では金崎が献身的なプレーを見せたように、チーム全体の士気は保たれている。だが三竿の「簡単には解決しない」という言葉を踏まえれば、楽観してはいられないだろう。

 19冠を誇る常勝・鹿島が大きな試練に直面している。


三竿健斗「簡単には解決しない」。鹿島が悩む昨季終盤からの停滞感。



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