熊本の名門、大津高には今年、“植田2世”と評されているCBがいる。推薦合格ではなく一般入試で大津に入学。1年時には同学年の中でも控えの存在だった。だが、貪欲に吸収しようとする姿勢と、180cm台中盤の長身、そして抜群の運動能力を持つCB吉村仁志(3年)は2年時に評価を急上昇させると、今年6月にU-18日本代表入り。今やJクラブも注目する存在となっている。
その吉村は、W杯日本代表メンバーのCB植田直通と同じ住吉中出身。大津で飛躍して年代別日本代表の常連となり、そして鹿島入りした植田に憧れて大津へ進学した。地元が同じ吉村によると、植田は中学時代、サッカーよりもむしろ日本チャンピオンになったテコンドーで有名だったという。一方、サッカーでは無名の存在だったが、努力を重ねて階段を一歩一歩上り続けてW杯メンバー入りした。
その植田は、吉村にとって勇気を与えてもらっている存在だ。「身近な人がW杯に出るから、自分がこの先、(植田のように)これだけ頑張ったら自分もW杯に出れるかもしれないと思います」と吉村は自分自身に期待している。
大津時代の植田は高校ナンバー1DFと呼ばれ、3年時には主将。大津の後輩たちに伝わる植田の“伝説”があるという。「何年か前の総体の初戦の日にお腹空いたからコンビニに何か買いに行っている時に自転車で突っコケて、針縫う怪我を。それでもすぐ病院に行って縫ってもらって(包帯で)頭ぐるぐる巻きにしてそのまま試合に出たと聞いています」(吉村)。植田同様、抜群の空中戦の強さを持つ“2世”の吉村は、まだまだ接触プレーなどで痛がってしまうところがあるというだけに、怪我を怖れないプレーでゴールを守る先輩を見習っていきたい構えだ。
吉村は自身も目指すW杯で先輩に大暴れしてもらいたいと思っている。「どんな相手でも屈しない闘争心やどんな相手でも向かっていく強さだったり、高さを活かしたセットプレーや空中戦を見たいと思います」。植田の背中を追うCBは先輩の活躍を見て、また自身の目標値を高くする。
(取材・文 吉田太郎)
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大津の“植田2世”がW杯出場のCB植田に期待すること。「どんな相手でも屈しない闘争心や向かっていく強さを」