象徴として 天皇、皇后両陛下はなぜかくも国民に愛されたのか [ 毎日新聞社会部 ]
昨年の鹿島に続いて無茶な、ACLファイナリストは中3日で中東決戦。
[J1 32節] 浦和 0-2 川崎 /2019年11月5日/埼玉スタジアム2〇〇2
川崎フロンターレ戦を終えた浦和の選手・スタッフはとにかく慌ただしく、トレーニングウェア姿でバスに急いだ。試合が終わったのは11月5日午後8時30分頃、その30分後の午後9時過ぎには埼玉スタジアムを出発した。そして日付が変わった6日0時30分の定期便で中東へと向かった。
つまり浦和の選手たちは川崎戦の約4時間後、休む間もなく飛行機に乗り出国している。
浦和の公式ツイッターでは午前1時前、「無事に出国できました」と伝えている。多くの主力選手がベンチ入りしなかったが、エースの興梠慎三、復活した青木拓矢、チームを支えてきた阿部勇樹ら、つい先ほどまで負けた悔しさを露にし、試合後にも汗を流し顔を火照らしていた選手たちが、もうアジア王者を懸けた戦いに向かっていた。
もちろん、選手たちは一切文句を言わない。基本的にはシーズン当初から、ACL決勝進出時には、ここにカードが組まれることは決定していたからだ。
とはいえ、決勝進出と同時に発表された日程は、あまりにも理不尽であることを思い知らされる。客観的に見ても、理不尽だった。
・10月29日(火) サンフレッチェ広島(A)(決勝進出に伴い11月9日から変更)
~中2日(※移動で2日とも潰れている)
・11月1日(金) 鹿島アントラーズ(A)(決勝進出に伴い11月2日から変更)
~中3日
・11月5日(火) 川崎フロンターレ(H)(決勝進出に伴い11月23日から変更)
~中3日
・11月9日(土) ACL決勝アル・ヒラル戦(A)※時差6時間
川崎戦では鹿島戦から先発8人を入れ替え、主力をほとんど温存させた。突然の日程変更でもあり、すべての試合をベストで戦うことは正直言って無理な日程だった。Jリーグは、おそらくACLとJの「2冠」を狙うことを不可能にしている、と言って過言ではない。
もちろん、ACLに出場するチームは、厳しい日程が待っていることを覚悟して戦う。が、決勝進出と同時に2試合が広島、川崎戦が前倒しされ、これではまさに”罰ゲーム”だ。
しかも昨シーズンの鹿島アントラーズも、決勝第1戦から第2戦まで1週間のインターバルがあったなか、Jリーグ1試合がぶち込まれている。その時の課題を解決せず、また繰り返された。
ACLファイナリストは、Jリーグの優勝争いをしてほしくない――そんな状況だ。
昨年はワールドカップがあり、今年はシーズン前のアジアカップと12月にE-1アジア選手権が組まれている。そのため、ここでしかカードを組めなかったという状況ではある。とはいえ振り返れば、シーズン序盤やゴールデンウィーク、天皇杯との兼ね合いなどで十分調整できたはずだった。
結果的に、Jリーグから3年連続で決勝進出を果たした。ただ浦和、鹿島、それぞれの意地や覚悟が際立っていたからだと言え、果たしてJリーグや日本サッカー協会のサポートが十分だったか、と言われると首を傾げざるをえない。
プレミアリーグのリバプールFCを率いるユルゲン・クロップ監督はカップ戦を勝ち上がったことで、12月から年始にかけて超過密日程になるため「日程面は話し合う必要がある」と指摘。大会に参加しない(できない)とも示唆し、無茶なスケジュールに噛み付いたという。
Jリーグでは、超ハードな4連戦の最後にアジアの頂点をかけた戦いが組まれた。なぜ、ファイナリストに重い負荷をかけるのか。
現場で戦う選手やスタッフはどんな日程であろうと受け入れる覚悟だ。ただし、その代償の大きさも彼らは知っている。浦和や鹿島のフロントは、こうした問題にこそ声を大にして異議を唱えていいはずだ。
[取材・文:塚越 始]