日刊鹿島アントラーズニュース

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2019年11月8日金曜日

◆鹿島が鹿島であるために。内田篤人が語るアントラーズとJリーグの未来/インタビュー(GOAL)



内田篤人 Atsuto.Uchida



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 鹿島アントラーズは現在リーグ制覇に最も近い位置にいる。明治安田生命J1リーグ戦残り4節時点で首位に立つ。毎年なんらかのタイトルを獲得している鹿島。「鹿島らしさ」とはよく語られる言葉で、移籍してきた選手はすんなりと「鹿島らしい」選手に変わる。では鹿島はなぜ鹿島であり続けられるのか。内田篤人が語るインタビュー前編。ここにはその強さのヒントがある。【聞き手=飯尾篤史/写真=徳丸篤史】


■優勝争いの中で足りないもの




――次の対戦相手である川崎フロンターレは先月、ルヴァンカップで優勝し、3年連続でタイトルを獲得しました。昨シーズンの開幕前、内田選手は「(前年に)川崎にタイトルの味を覚えさせてしまったのは脅威だ」と話していましたが、その危惧が現実のものになってきましたね。

「タイトルを獲るって、そういうことだと思います。僕が以前、鹿島にいた頃、フロンターレはずっと2位だった。でも、フロンターレのようにチームとしての形があって、選手も揃っているクラブがタイトルを1回獲ると、バババって獲れるようになる。あのとき(17年シーズン)、僕はまだこのチームにいなかったですけど、あのタイトルは鹿島が獲っておかなければならなかった。改めて、そう思いますね」

――内田選手と鹿島にとって、この先もしばらく厄介なライバルになりそうだと。

「Jリーグ全般を見渡しても、フロンターレの戦い方はハッキリしているし、本当に良いゲームをしている印象が強い。そんなチームがタイトルの獲り方を知ってしまったんだから、難しい相手になっていくと思います」

――一方、鹿島もACL、ルヴァンカップと続けざまに敗退したものの、そのショックを引きずらず、ここまでリーグ戦9戦無敗です。そこはさすがだなと。

「これまで鹿島はタイトルをたくさん獲ってきましたけど、落としたタイトルもたくさんある。3冠を達成したのは2000年だけで、それ以外のシーズンは、このタイトルは獲れたけれど、あのタイトルは落とした、という連続なので。もちろん、本気で全部狙ってはいるんです。でも、すべては獲れない。だから、切り替えというものに慣れているはず。

 タイトルを獲れなかったあとの1週間の準備と次の試合がどれだけ大事か、クラブとして分かっている。そこは、剛さん(大岩剛監督)も口酸っぱく言ってますから。獲れなかったことに落ち込むより、リベンジするチャンスがある、という気持ちのほうが強いと思います」

――2016年のリーグタイトルは、チャンピオンシップを制して掴んだものなので、鹿島が純粋にリーグ優勝を果たしたのは、実は3連覇を達成した2009年が最後。つまり今のチームで年間優勝の経験があるのは、曽ヶ端準選手、遠藤康選手、川俣慎一郎選手、内田選手の4人だけです。

「あ、そうなんですか……。僕もドイツにいたので、その間にひとつくらい獲っているイメージがありましたけど、(サンフレッチェ)広島、ガンバ(大阪)、フロンターレ……言われてみると、確かにそうですね」

――数少ないリーグ優勝経験者として、ここから先、何が重要になると思いますか?

「なんだろうな……選手の雰囲気というか、練習や試合中の雰囲気は、もうちょっと欲しいな、と思います」

――もっとピリピリしたほうがいい?

「僕も言葉にはできないですけど、優勝するときの雰囲気には、ちょっと足りていない気がします。もちろん、このままでも優勝できるかもしれないけど、3連覇したときのような雰囲気とは、ちょっと違うかな」

――その雰囲気を作るために、内田選手はここからチームにどんなアプローチをしていこうと考えていますか?

「いや、僕はこれまでと変わらず、やります。それに雰囲気って、一人で作れるものでもないので」

――みんなが感じて、変わっていくというか。

「そうですね、スタジアムの雰囲気とか、試合中の雰囲気というのは。ただ、今はまだ、ちょっと違うな、と感じています」


■鹿島にとって変化のシーズン





――それにしても鹿島は、新しく入った選手が、いつの間にか“鹿島らしい”雰囲気をまとっていますよね。犬飼智也選手、白崎凌兵選手、小泉慶選手、上田綺世選手……。一緒にやっていて、そうした新しいメンバーの成長は、どういう風に感じています?

「もちろん、活躍できる、できない、というのは、その選手の実力やポテンシャルによる部分が大きい。ただ、鹿島は入って来る選手に優しいチーム。プレースタイル、生活面含めて、サポートしてくれますからね、選手やスタッフが。だから、馴染みやすい面はあると思います。

 慶なんて、J2(柏レイソル)で試合に出られていない状況で移籍して来て、パンと入って活躍できている。それは、彼の凄さでもあり、鹿島のいいところでもある。ファミリーとして、サッカーに集中できる環境をみんなで作れるのは、鹿島のひとつの特徴だと思いますけどね」

――小笠原満男さんや中田浩二さんがよく、「何かを教えてもらったわけではない。自分で学んできた」と言っていたので、新しく来た選手に対して優しいというのは、少し意外です。新加入選手に対しても、「自分で見て学べよ」というスタンスだと思っていたので。

「もちろん、手取り足取り教えるなんてことはないですよ。でも、このチームは勝つために何をしたらいいかをまず考える。入って来た選手とのポジション争いに負けないのも大事だけど、入って来た選手がしっかり働けなければ勝てない、ということも分かっている。だから、みんなで手を差しのべる。鹿島に来る選手も、ここで優勝したいと思って入ってくるので、目標はひとつ。そのために何ができるか」

――先日、小池裕太選手にインタビューしたら、内田選手にアドバイスを貰ったと。「闘う姿勢をもっと見せないといけない。自分もそういう見られ方をされて損をしてきた。演技でもいいから、もっと出したほうがいい」と。

「監督の目にどう映るかは、特に最初のうちは大事。裕太は向こう(ベルギー)でも、そこで苦労したみたいだけど、特に外国人監督は、頑張ってます、という姿勢が分かりやすいのが好きですから。裕太はポテンシャルがあるけれど、性格面で損した部分があったと思う。

 そもそも裕太のような飄々とやるタイプが、しっかり戦えるようになったら、みんなに伝播するんですよ。そこは、彼がもう少し年齢を重ねたら、分かることかもしれない。でも、ここに来る選手って、みんな性格がいい。会話をしていても、人として、しっかりした選手が多いな、って感じます」

――そういう選手を、強化部がちゃんとピックアップしているんでしょうね。

「Jリーグが始まって以来、選手選びについては一貫してやってきたんだろうな、って思いますね」

――メンバーが多く変わった、というところで言うと、鹿島にとって今季ほどタイトル獲得が重要になるシーズンはないのではないか、と感じます。小笠原満男という偉大な選手が去り、内田選手を新リーダーに据えて、新たなスタートを切ったシーズンなので。

「そう言えば、クラブの今年のスローガンも、“かわる”だったんですよね。満男さんが引退して、親会社も変わり、移籍に関しても、これまでとは変わりましたよね。僕や満男さん、ヤナギさん(柳沢敦)、浩二さんが海外に行った頃と違って、鹿島で2、3年やって出ていく時代になった。それが、これからのスタンダードになると思います。

 ただ、鹿島は日本のトップチームだと思っているので、ある意味当たり前というか。変な話、鹿島がヨーロッパに選手をバンバン送り出すようでなければ、日本サッカーはダメだとも思っていて」

――日本のトップクラブとしての義務であり、宿命だと。

「そう。満男さんが引退して、夏には主力選手が3人も移籍したシーズンに、それでもタイトルを獲る。これは本当に大事なこと。ここでひとつ獲れたら『さすが鹿島、これだけ変わっても強いんだ』という印象を周りに植え付けられますからね」


■ドイツやスペインを手本にできることはある





――若い選手が次から次へと海外に飛び出していくなかで、いかに戦力を維持し、チームを回していくか。いち選手である内田選手が考えることではないかもしれませんが、ドイツで7年間プレーして、いろいろなクラブを見てきた中で、何かアイディアはありますか?

「まず、そういうことに関して、鹿島はフロントがしっかりしているので、あまり考えたことがない。実際、獲ってくる選手が次々と活躍しますもんね。白崎も、慶も。相馬(勇紀)はちょっとケガをしていますけど、いいモノを持っているし、(上田)綺世だって。だから、そこは選手が口出しすべきではないし、全部任せて、選手はサッカーに集中すべき。で、今回はそういう質問をされたので答えますけど(笑)」

――それを大前提としたうえで(笑)。

「そう(笑)。ドイツで感じたのは、下からバンバン出てくるんですよね。特にシャルケは、ユースがすごく強いんですよ。バイエルンよりも優勝している。U-18、U-19のカテゴリーの監督が素晴らしくて、その監督に大金を払っているらしいです」

――そこにお金を掛けているんですね。

「ユースから上がってきた選手も、パッと思いつくだけでも、ユリアン・ドラクスラー(PSG)、ジョエル・マティプ(リヴァプール)、マヌエル・ノイアー(バイエルン・ミュンヘン)、レロイ・サネ(マンチェスター・シティ)……彼らはみんなシャルケのユース出身。もう、毎年バケモノが出てくる感じ。例えば、トップチームの誰かがケガをしたりすると、紅白戦の人数が足りなくなるので、ユースからひとり、ふたり加わるんですけど、モノが違う。それに、1カ月後とかに再びやって来ると、ものすごく成長している」

――ドイツは本当に育成システムがしっかりしているんですね。

「ドイツにおいて、サッカーが最も人気のあるスポーツで、サッカー第一というのも大きいと思いますけどね。あと、お金があるので、他クラブから選手を獲れてしまう。シャルケも、ラウール(・ゴンサレス)や(クラース・ヤン・)フンテラールを獲りましたから」

――Jリーグでは、ヴィッセル神戸がそうしたカラーのクラブになってきました。

「そうですね。神戸みたいな、大枚をはたいて世界の大物選手を獲る、っていうクラブがあってもいいと思います。そのあと、続いてほしいな。いや、大物を獲り続けろという意味じゃなくてね。(アンドレス・)イニエスタや(ルーカス・)ポドルスキから、ヴィッセル神戸だけでなく、Jリーグ全体でしっかり学んで、全体のレベルを上げて、次につなげてほしい。オーストラリア(Aリーグ)も以前、(アレッサンドロ・)デルピエロを獲得したじゃないですか」

――シドニーFCが獲得しましたね。

「でも、一過性のものというか、そのあと、リーグのレベルが上がったわけじゃない。ACLで対戦しても、昔のほうが強かったと感じるくらい。それを日本がやっちゃいけないと思う。せっかく神戸が獲ってくれたんだから、システムにしても運営にしても、彼らから学ぶこと、ドイツやスペインを手本にできることって、たくさんあると思う」

――そうやってJリーグのレベルが上がっていけば、選手たちのレベルも上がり、見る人も楽しめる。

「そうなれば、ヨーロッパのスカウトも、Jリーグをもっと見てくれるようになると思う。僕や(香川)真司がドイツに行った頃は、ドイツでも日本人選手の評価が高かった時期がありましたけど、今は海外移籍の最初のステップがベルギーやオランダ、ポルトガルになってしまった。Jリーグのレベルが上がって、最初からシャルケやドルトムントにいきなり移籍できる流れにまたなれば、面白くなる。そうなったら、僕も『見に行きたい』って思うもん」

――フェルティンス・アレーナにね。そうしたら「ウッシーが戻ってきた!」と、歓迎ムードになるでしょうね。

「そうそう。個人的な想いとしたら、シャルケに誰か日本人が行ってほしい。それが鹿島の選手だったら、なおうれしいですね」

◎11月8日公開【後編】内田篤人が見据える完全復活の道に続く




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