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新型コロナウィルスの感染の広まりで、Jリーグの開催が中断されてから約1カ月が過ぎた。日本だけでなく、欧州ほか南米など世界中でも広まり、試合観戦の楽しみが奪われている。
世界各地では、トレーニングもできないアスリートが多いが、Jリーグでは日々トレーニングが行われている。シーズンが開幕したばかりでの中断がどのような影響をクラブにもたらすのかはクラブそれぞれ異なるだろうが、鹿島アントラーズはこの事態を逆手に取ろうとしている。
元日に天皇杯決勝戦を戦い、1カ月足らずで新シーズンを迎えた鹿島。しかも、「今まではリフォームで補ってきたけれど、ここで新築しないと先がない」と、ザーゴ監督以下スタッフを総入れ替えしたチームは、ACLプレーオフに敗れた(0-1)だけでなく、ルヴァンカップ対名古屋(0-1)、リーグ開幕戦対広島(0-3)と公式戦3連敗で苦しいシーズンのスタートを切っていた。
「ほとんどキャンプができず、練習試合もやれていなかった。公式戦ではあるけれど、試合をしながら、監督が目指すサッカーを構築できるようにしていきたい」と語った選手もいる。
新監督が掲げた明確な新スタイル。
スキルの高い選手が集まり、勝利のために最善を尽くす。試合の内容以上に「結果」に強くこだわり、タイトルという果実をもぎ取ってきた鹿島。2018年にはACL優勝を果たし、毎シーズン優勝争いを繰り広げる常勝軍団だが、優勝からは3シーズン遠ざかっている。2016年にCSでのリーグ優勝は飾ったが、シーズン通してのリーグ制覇は2009年以来ない。
「ボールを保持し、ゲームを支配するサッカー」
ザーゴ新監督は明確にスタイルを掲げ、チームの改造に着手した。
新スタイルの確立は道半ば。
前線からハイプレッシャーをかけて、陣形をコンパクトに保ち、素早く攻守を切り替える。サイドバックは高い位置をとり、ボランチが2枚のセンターバックのサポートに回る。GKからのパスを繋ぎながら、ビルドアップしていく……。
その基本は特別目新しいものではない。しかし、先発のほぼ半数が移籍加入したばかりの選手で構成されているからか、監督の指示に従おうとするためなのか、パスミスが多発し、せっかく奪ったボールもすぐに相手に渡ってしまう。バックパスでやり直そうとするシーンも増える。
なによりも3連敗した3戦でノーゴールという事実が、チームの苦悩を物語っていた。
しかし中断期間中、J2やJ3のチームとの練習試合では勝利も記録し、チーム作りが進んでいるという手ごたえを感じられる結果が報じられていた。
実況までついた札幌との練習試合。
そして、3月21日。カシマスタジアムにコンサドーレ札幌を迎えた練習試合が行われた。
当然無観客での開催だが、メディアにも初めて練習試合が公開され、実況とともにDAZNでの中継も急遽決定した。日頃から試合映像を自主制作している鹿島だからこそ、対応できたのだろう。
「練習試合であっても同じカテゴリーが対戦する場合は公開したくないというチームも多いが、鹿島も札幌も公開してよいと言ってくれたことで、このような試合ができて非常にありがたい。キックオフ前から公式戦同様の形式で行われ、選手たちの緊張感も伝わってきた。
観客がいないのは寂しいけれど、選手たちがボールを奪い合う音や選手の声、スンテがあんなに日本語がうまいなんて想像してなかったし(笑)。選手たちのモチベーションの高さを感じられて、公式戦に近い良い試合だったと感じています」
試合を観戦した原博実Jリーグ副理事長が語るように、この日は世界でも稀な練習試合になった。
開幕戦から3人代わったスタメン。
11時キックオフで行われた45分2本。
鹿島のスタメンは2月23日の広島戦から3人の選手が代わった。負傷したレオ・シルバにかわり、小泉慶がボランチに入り、三竿健斗とコンビを組んだ。同じく負傷中の土居聖真にかわり、東福岡高校から加入したばかりの荒木遼太郎。
エヴェラウドとファン・アラーノがFWに並んだが、アラーノはトップ下にポジションをとる時間が多い。CBは犬飼智也と町田浩樹のふたり。サイドバックは右に広瀬陸斗、左は永戸勝也、GKはクォンスンテだ。
「前半は前からのプレスもあり、コンパクトに戦えて、監督の意図するサッカーができていたと思う」と町田の言葉通り、堅く守れていた。しかし、札幌のDF陣を脅かすことはなく、0-0で前半を終える。相変わらずパスミスも少なくなく、パスを繋いで攻撃のリズムを上げるところにまでいたらなかった。
相手を見て対応しはじめたルーキー荒木。
後半立ち上がり、右MFだった荒木の逆サイドにまでポジションを変えながら、動き始めた。
「相手を見ながら、そこに対応してプレーできたと思う。相手の裏をつくことを意識していた」と、ルーキーは試合出場を重ねることで手ごたえを得ているようだ。
そして、後半4分。左サイドからのパスを受けた三竿がワンタッチで前線へはたく。ボールを受けたアラーノがドリブルで相手をかわして、右足でゴールへ蹴り込み鹿島が先制する。
同18分。札幌の白井康介のクロスボールから、鈴木武蔵がヘディングシュートで同点弾。
同20分。今度はCKを町田がヘッドで決めて、鹿島が勝ち越す。
しかし、33分。広瀬がボールを持った鈴木と併走しながらも奪い切れず、ファールで鈴木を倒して与えたFKを鈴木が蹴る。途中出場の鹿島・遠藤康に当たってコースが変わりGKが反応できず、再び札幌が追いついた。
4失点に「理想とは程遠い」。
この日の練習試合では、45分2本のあとに、35分2本も予定されており、後半終盤になると、3本目に出場予定の選手たちがピッチに続々登場した。
鹿島も29分にCBをブエノと関川郁万に代えている。
そんな交代が「試合を終わらせる」という気持ちを緩ませたのだろうか。
42分、47分と右からのフェルナンデスのクロスをジェイに決められて、2失点する。4失点中3失点が右からのクロスだった。そして、鹿島は2-4で敗れる。国内の公式戦で最後に4失点したのは2018年シーズンの夏だった。
「公式戦と同じような状況。点が獲れそうなところで獲れず、自分たちで試合を難しくしてしまった。攻撃については、立ち上がりの25分間はよかった。後半も良い流れもあったがうまくいかなかった。
最後の2失点については、個人的なミス。やむを得ない。個人的に話をしたい。特になにかひとつというのではなく、チーム全体を作っている段階。選手たちは180度変わったサッカーを表現している。理想とするチームとはほど遠い。全体的には物足りなさを感じている」
試合後、新型コロナ感染予防、拡散防止のためビデオ通話で行われた会見でザーゴ監督は試合をそう振り返った。
伊藤翔「僕らはいま最下位」
1カ月ではまだ足りない。そういうことなのかもしれない。今季は降格チームがないことがすでに決定している。そのことについて問われ、伊藤翔はこう答えた。
「たしかに、チームによってはいろいろなチャレンジができるのかもしれない。でも、僕らは優勝やタイトルを目指すチーム。ただ現状では、そういうのはおこがましい。チームの完成度というよりも相手チームへの対応力。今日の札幌のような3バック、5バックになるチームに対して誰がどうつくのかというのは去年からの課題で、今日もアジャストできていない。戦術という意味でも、自分たちという意味でも。
なにより僕らはいま最下位。苦しい位置にいる。優勝はしたいけれど。これ大丈夫かという眼もあるはず。だけど僕らは改善していくだけ」
伊藤翔の言葉が強く印象に残る。1節が終わっただけだがJリーグで鹿島は最下位であるのは現実なのだから。
スタイルと勝ち点のジレンマ。
昨シーズン開幕時にも大岩剛前監督は、前線からプレスをかけて、コンパクトに戦い、ポゼッション率の高いサッカーを試みている。しかし、勝利を最優先とするなかで、ポゼッション率へのこだわりは消えていた。常勝クラブとしての矜持が、スタイルよりも勝ち点を重視したということなのかもしれない。
「いつ再開するのかわからないのが難しいところ」
ザーゴ監督の言葉は、すべてのクラブの監督が抱く想いだろう。再開すれば、過密日程が続くのは不可避だ。中断は鹿島にとってチャンスになるのか。今はまだ不透明だ。