日刊鹿島アントラーズニュース

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2020年5月16日土曜日

◆忘れられぬ27年前の“開幕戦ハットトリック“。ジーコの「祝砲」が日本サッカーにもたらした恩恵(THEダイジェスト)






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「役者が違う」とは、まさにこういうことをいうのだろう。人々の熱が凝縮されるひのき舞台で、とんでもない伝説を生み出してしまうのだから。

 “Jリーグ”と名付けられた日本サッカー界初のプロリーグの幕開けは、1993年5月15日だった。華やかな演出のなかで、オープニングセレモニーが続き、「Jリーグは今日ここに大きな夢の実現に向かって、その第一歩を踏み出します」と、川淵三郎初代チェアマンが高らかに宣言。早いもので、あれから27年が経つ。

 記念すべき開幕カードは、ヴェルディ川崎(現・東京ヴェルディ)対横浜マリノス(現・横浜F・マリノス)。当時の日本サッカー界を牽引する2強の対決だ。東京・国立競技場に5万9626人の大観衆を集め、19時29分にキックオフされた。

 試合は19分にマイヤーの豪快ミドルが決まり、V川崎が先手を取る。だが、後半の立ち上がり14分間で2得点した横浜Mが逆転。そのままスコアは動かず、開幕戦を飾っている。

 翌16日、残る4試合が各会場で行われた。

 なかでも大きな驚きをもってその結果が国内外に伝えられたのが、鹿島アントラーズ対名古屋グランパスだろう。だれひとりとして予想だにしなかったであろう5-0の大差で、ホームの鹿島が名古屋を粉砕したのだ。

 勝利の立役者は紛れもなくジーコだった。当時、40歳。世界の第一線を退いていたとはいえ、卓越したスキルと戦術眼に衰えなど見られず、情熱と向上心にあふれるリーダーシップも相まってチームを戦う集団へと引き上げていた。

 そんな大御所が耳目を集める開幕戦で、いきなりハットトリックを成し遂げたのだから、鹿島のファンやサポーターが狂喜乱舞しないわけがない。

 どのゴールも称賛に値する素晴らしいものだった。

 1点目は25分。相手選手同士が交錯し、そのこぼれ球にいち早く反応した。ペナルティエリア外からのシュートだったが、鮮やかなドライブがかかり、ゴールネットを揺らした。

 2点目はその5分後だ。伝家の宝刀である直接FKを決めてみせた。固唾を飲んで見守る観客の期待に見事にこたえるあたりが、やはりスーパースターたるゆえんだろう。「ただただ唸るしかない」と、鹿島のチーム関係者は口をそろえていた。

 そして、3点目は63分。相手陣内でいったんタメを作ったジーコは、左サイドを駆け上がるアルシンドに展開。すぐさまゴール前に走り込み、アルシンドからのリターンクロスを左足のインサイドボレーで叩き込んだ。シュートの瞬間は、窮屈そうな体勢になったものの、正確なインパクトでゴールを奪った。

 ジーコの名がJリーグの歴史に刻まれた瞬間でもある。J1では過去235回のハットトリックが記録されているのだが、二番目や三番目ではなく、その一番手。こうした付加価値は何ものにも代えがたい。

 だが、ジーコはどこまでもジーコだった。

「自分のハットトリックよりチームの勝利のほうが重要。いいスタートを切ることができた」と、常に“チームのために”を強調するジーコらしいコメントを残している。

 以前、このような話をしていたのを思い出す。

「自分がハットトリックを決めて一度だけ試合に勝ち、ほかの2試合に負けてしまうくらいなら、1点ずつでいいからチームのためにゴールし、3試合すべてに勝ちたい」

 世界に名の知れたジーコのハットトリックは話題性が抜群だ。テレビや新聞、雑誌など、さまざまなメディアによって大々的に取り上げられた。海外からの目をJリーグに引き付けるきっかけにもなった。

 試合当日のカシマスタジアムには外国人記者が多く、英国のサッカー専門誌である『ワールドサッカー』の編集長も取材に訪れていたと聞く。というもの、1986年のメキシコワールドカップ得点王のリネカー(元イングランド代表)が名古屋に在籍していたからだ。

 ジーコの前に、すっかり引き立て役に回されてしまったものの、実は最初にゴールネットを揺らしたのはリネカーだった。オフサイドの判定によって取り消されたのだが、当時すでにVARが導入されていたら、得点が認められていたかもしれない。そのくらいきわどいシーンではあった。

 とはいえ、勝利に貪欲な鹿島の勢いを最終的に制御できなかったであろうが。

 カリスマ性あるジーコに率いられた鹿島は結果を出し続けることで、その知名度を瞬く間に高めていく。Jリーグ開幕から四半世紀が過ぎ、最多20冠を誇る強豪として君臨しているわけだが、クラブの礎を築いたジーコを抜きに鹿島の歴史と伝統は語れない。

 今、改めて思う。

 強烈なインパクトを残し、珠玉の伝説となったジーコのハットトリックは、日本サッカー界にとって新時代の到来を告げるにふさわしい祝砲でもあったのだ、と。

文●小室功(オフィスプリマベーラ)


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