Jリーグの商品化細則が19年に改訂され、「クラブエリアライセンスグッズ」の販売が可能になった。“ライセンスグッズ”とは、クラブの <1>エンブレム、<2>ロゴ、<3>フラッグ、<4>マスコット を使用した商品のこと。この標章使用の一部認可権をクラブに与え、地域限定で販売できる制度を整えることで、リーグは各クラブのホームタウンに根ざした商品展開を後押ししている。
この制度で具体的に何が変わったのか。このほどエリアライセンスを使用して「アントラーズうまい棒」の販売を開始した、鹿島アントラーズに尋ねてみた。
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19年の商品化細則改訂前、ライセンスグッズ販売のハードルはやや高かった。
そもそもグッズには、メーカー名を表示しないもの(「キーホルダー」など)、表示するもの(「亀じるしの鹿島アントラーズどらやき」など)の2種類がある。このうち前者は従来の制度下でも、企業とクラブのやりとりのみで製造が可能だった。一方、メーカー名を表示する商品については、クラブでなくリーグが認可するシステムだった。
日頃クラブと付き合いのある地元企業でも、ライセンスグッズを作るには、リーグに問い合わせをしなくてはならない。これに尻込みして販売を断念した企業もあっただろう。鹿島アントラーズマーケティンググループの根本謙司さんは、「今まではクラブにご連絡をいただいても、『Jリーグにお問い合わせください』と言うしかなかった。1年間で10件くらいはそういったお問い合わせを頂いていた」と話す。
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商品化細則の改訂で生まれた「クラブエリアライセンスグッズ」は、流通をクラブの活動区域のみに限定して(オンライン展開は可能)、クラブ単独の認可で販売ができるもの。全国流通を対象としたリーグの認可よりも審査のハードルが下がり、地元クラブとスピード感あるやりとりができることで、企業にとってはライセンスグッズの販売が容易になった。
実際に鹿島では、本年度からエリアライセンスグッズの展開を開始し、既に漬物、梅干し、ヨーグルト、甘納豆、ピーナツクリームの5品目の販売が決まったという。食べ物だけでなく、鹿島神宮で販売されている「鹿島アントラーズコラボレーション御朱印帳」も、実はこの制度を利用した商品の1つだ。
茨城県から全国への流通を目指す企業にとっては、あまり関係のない話かもしれない。一方で県内に販路をもつ企業にとって、地元クラブのロゴが付いたライセンスグッズは、販売促進の一手となる。また、地域色の強いお土産としての展開にも応用ができる。
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Jリーグが行ったこの「ライセンスの部分的解放」が、クラブに金銭的なメリットをもたらすという見方もできる。従来の制度下では、Jリーグが一括して標章使用料を集め、これを各クラブに分配する形をとっていた。ところが新制度下では、標章使用料が100%クラブに入ってくる。地域の企業とライセンスグッズを展開したぶんだけ、クラブにも利益が生まれる。
鹿島アントラーズマーケティンググループの根本さんは、地域貢献の側面でも制度に恩恵を感じているという。「アントラーズを介して、ファン、サポーターの方に地域の事業者さんを発信することができる。(コロナ禍で)いちばんみなさんが困っているときに、こうした制度を始められた。おこがましいが、地域の事業者さん、農家さんのお役に立つきっかけになれる」と胸を張る。
今後は販売する商品のみならず、お祭りのバナーなどサービス露出も視野に展開を考えているという。Jリーグのライセンス解放は、クラブにさまざまな可能性をもたらしている。【杉山理紗】