京都橘との強豪対決に2-0快勝、PK弾の小見「今までPKを外したことがない」
第99回全国高校サッカー選手権は2日、浦和駒場スタジアムなどで2回戦16試合が行われ、前回ベスト8で優勝候補の一角である昌平(埼玉)は京都橘(京都)に2-0で快勝し、2年続けて3回戦に進出。3日の3回戦で初出場の創成館(長崎)と顔を合わせる。
高川学園(山口)との1回戦で九死に一生を得た。昌平は後半40分まで0-2の劣勢に立たされ、ここから同点にしてPK戦勝ちというドラマチックな展開で初戦をものにしていた。こういう試練を乗り越えたチームは強いものだ。難敵と見られた京都橘を無失点に封じ、優勝候補らしく勝ち上がった。
相手の3バックは長身揃いとあり、単純なクロスや空中戦勝負を避け、1トップのFW小見洋太に守備ラインの背後を狙わせるパスを多用。そんな戦略が続いていた前半20分、2年生MF平原隆暉が中央やや左から軽やかなドリブルでペナルティーエリアに進出すると、相手DFに倒されてPKを獲得した。
これで先制点が生まれる可能性は100パーセントに近くなった。「今までPKを外したことがない」と絶対の自信を持つ、来季J2アルビレックス新潟に加入する小見がキッカーを担当するからだ。
GKにコースこそ読まれたが、ゴール右隅に確実に沈めた。少し長めの助走を取り、小刻みな歩行で時間をかけながら前進して右足でズドンと蹴り込んだ。
「先輩からPKの蹴り方を考えたほうがいいとアドバイスされ、1年生の冬から今のやり方に変えました。それまでは外したこともあるけど、変えてから失敗していません」
先制ゴールを奪ってから4分後に追加点をものにした。J1鹿島アントラーズ入りするMF小川優介が、左の小見にサイドチェンジのパス。巧みにコントロールしてゴール前にラストパスを送ると、平原が左足で押し込んで心強い2点目を決めた。
1回戦はボランチで先発した平原だが、藤島崇之監督は今回トップ下で起用。「両サイドからアタックし、ボランチを含めたトライアングルでゲームを作りたかった」と説明し、J1鹿島に入る左のMF須藤直輝と1年生アタッカーの右MF荒井悠汰の特長を生かすためにも、ピカ一の技術を誇る平原を中央に配置し、プレーメーカー役を担わせたのだ。
前半は完全に昌平の試合となり、このリズムを堅持しながら後半も優位に進行させた。
攻撃の大黒柱にも染みつく守備意識の高さ「絶対に点を取らせたくなかった」
1回戦で6点を挙げた京都橘はリスタートが得意だ。J1に昇格した徳島ヴォルティスに加入内定のエースFW西野太陽と、FW木原励の決定力は脅威の的で、DF金沢一矢の“遠投”にも細心の注意が必要だった。
後半28分には西野に強シュートを打たれたが、DF唐木晃が素早く体を寄せてブロック。同32分には金沢の左ロングスローを起点に、DF小山凌がポストをかすめる際どい一撃を放った。
しかし危なっかしい場面はこの2度ほどで、昌平は前線、中盤からの厳しいプレスや複数での囲い込みという守備の持ち味も存分に発揮した。須藤は「強烈な2トップにやらせないようにした。自分も相手のウイングバックとの駆け引きができた」と攻撃の大黒柱でさえ、高い守備意識が染み込んでいるのが昌平の強みだ。
小見も京都橘の2トップへライバル心をたぎらせ、得点源であるセットプレーになると体を張った守りを見せていた。「僕は木原くんをマークしていましたが、あの2トップには絶対に点を取らせたくなかった」との思いで守備に回っていたそうだ。
前半23分に須藤がGKと1対1になりそうな場面で切り返してしまい、チャンスをつぶした。小見は2-0の同28分、縦パスに反応して出てきたGKもかわし、無人のゴールに打ち込んだが、左に外して頭を抱える。藤島監督は「決め切るところで決められなかったのは反省点」としたが、チームは埼玉県予選も試合を重ねるごとに洗練されていった。3回戦はさらに質の高い内容になる期待が膨らむ。
「1回戦であんなにいい試合をしてくれた高川学園さんのためにも、僕らは勝たないといけない」
須藤は恩返しができた思いとともに、これから先の戦いにさらなる闘志をにじませたことだろう。
(河野正 / Tadashi Kawano)
◆初戦で“九死に一生”…昌平が漂わせた優勝候補の風格 “10番”須藤「僕らは勝たないといけない」(FOOTBALLZONE)