日刊鹿島アントラーズニュース

Ads by Google

2022年3月1日火曜日

◆鹿島の“新10番”荒木遼太郎はすぐにでも欧州挑戦すべきか――。ベストなタイミングは?(サッカーダイジェスト)






移籍オファーが届いてもフルシーズンやり切るべき


 昨シーズンはJ1リーグで10得点・7アシストを記録するなど、プロ2年目ながら圧倒的な存在感を放った鹿島アントラーズのMF荒木遼太郎。今後も活躍を続ければ、海外からオファーが届くのもそう遠くはないと思われるが、オファーがあればすぐにでも欧州へ発つのがベストな選択なのだろうか。国内外のサッカーに精通する河治良幸氏に見解を伺った。

――◆――◆――

 結論から言うと、カタール・ワールドカップの時期を考えても鹿島の10番として、フルシーズンやり切るべき。

 若手選手の欧州移籍に絶対の正解は存在しない。個人差があることもそうだが、どんなに理にかなった形でも、相応のリスクは存在するからだ。その前提で荒木遼太郎の欧州移籍に関して、仮に具体的なオファーがあっても、Jリーグのシーズンオフまでは待つべきだと筆者は考える。

 確かに欧州のカレンダーは秋春制であり、向こうのオフに移籍できればチーム作りの立ち上げから参加できるメリットがある。戦術的なフィットだけでなく、欧州の環境に慣れるという意味で、冬より夏の移籍の方がアドバンテージがあるのは確かだ。

 ただ、荒木はアタッカーなので、ある程度出来上がったチームにオプションを加えるという形で、途中からチームに入っていきやすい。リーグやクラブを問わず、いきなり中心的な存在になるのは難しいが、オプションとして評価を上げながら環境に適応していく意味では冬の方が良いケースもあるだろう。

 そして、Jリーグで鹿島の中心としてフルシーズンやり切ることのメリットも大きい。確かに昨年の荒木は10得点・7アシストとブレイクしたが、それほどマークされない立場から結果を出して、次第に存在を高めていっての結果だった。「チームのエースナンバー」と荒木本人が自負する10番を背負う今シーズンは、正真正銘の中心として、厳しいマークをはね除けて結果を出していくことが求められる。

 鹿島はレネ・ヴァイラー監督に代わり、しかもコロナ禍で合流が遅れている状況で、2節の川崎フロンターレ戦などを見ても、新体制でいきなりのリーグ優勝はかなり難易度が高そうだ。それでも鹿島の中心選手としてさらに試合経験を積み、満を辞して欧州に羽ばたくのがベターではないか。


夏の海外移籍が及ぼす代表へのリスク


 もうひとつ、夏の移籍を勧めにくい理由がカタールW杯の時期(今年11月に開幕)だ。

 すでに欧州でプレーしている選手でも、このタイミングでの移籍には少なからずリスクがあるだろう。移籍して最初は、オン・オフで新しい環境に適応することを求められるからだ。荒木は現時点で代表候補に過ぎないが、夏にはパリ五輪世代をメインに東アジアE-1選手権に参加することが予定されている。この時期に欧州移籍となれば、大会の参加が難しくなるかもしれない。

 さらにカタールW杯があることで、欧州リーグも普段より長い中断期間になることも頭に入れる必要がある。4年に一度のW杯は移籍市場が大きく動くタイミングでもあるが、今回はイレギュラーな冬開催であるため、ここに補強のタイミングを持ってくるクラブも多くあると想定される。

 もちろん、断れないような5大リーグの強豪クラブから相応の移籍金でオファーが来れば、夏であろうと決断は必要かもしれない。しばしばビッグクラブのオファーは片道切符と言われる。要はカタールW杯や着実なステップアップのプランを投げ打ってでも挑戦したいと本人が考え、鹿島としても荒木に代わる戦力補強に向けて十分な資金を得られる場合は上記のようなセオリーから外れる形でも、止める理由はない。

 その最もホットな欧州クラブが、アンジェ・ポステコグルー率いるセルティックだ。仮にサイドバックやセンターバック、ボランチが本職の選手で、セルティックのメンバー枠に空きが出ているのであれば、それはひとつのチャンスだが、アタッカーに関してはセルティックのイン・アウトの動向を見ても、最も出入りも激しく、補強する余地がないほど埋まることは考えにくい。


Jリーグは欧州の中堅リーグと比べて見劣りしないレベルにある


 結局のところ移籍に絶対の正解はないなかで、ここ数年は遠藤航を筆頭に、Jリーグで十分に実績を作って欧州移籍した選手が成功し、日本代表の主力にも定着している理由としてJリーグの成長が挙げられる。言い換えると、そうした成功例を持っている欧州クラブや関係者は日本人選手を獲得するメリットを心得ており、先人たちのおかげで、そうしたクラブが徐々に増えてきているのは確かだ。

 ピッチの違い、ジャッジの違い、当たりの違いなど、欧州の環境で日本人選手がクリアしていくべきハードルはあるが、求められる判断スピードやクオリティという意味では、Jリーグは欧州の中堅リーグと比べて決して見劣りしないレベルにあるからこそ、タイムラグなく適応できているというのはあるだろう。

 ただし、最終的にはコミュニケーションの問題なども含めて、選手自身がどれだけ難しい環境を望んで、乗り越えていけるかで、成功失敗の確率も変わってくる。その意味で荒木がどちらになるかは現時点で誰も確証を持てないが、それでもトータルで考えて、鹿島で中心選手としてフルシーズンを戦い抜き、その絶好のタイミングで届いたオファーからベストのチョイスをしていくのが最善ではないかと考えている。

文●河治良幸




◆鹿島の“新10番”荒木遼太郎はすぐにでも欧州挑戦すべきか――。ベストなタイミングは?(サッカーダイジェスト)





Ads by Google

日刊鹿島

過去の記事