◆明治安田生命J1リーグ▽第19節 柏1―2鹿島(2日・三協フロンテア柏スタジアム)
彼らがどんな時間を過ごしてきたかが、伝わってきた。CKから先制点を決めたDFキム・ミンテはチームメートから祝福を受け、ベンチ前でレネ・バイラー監督と強く手を合わせた。鈴木優磨からPKを譲られたFWエベラウド。左に勝ち越し点を突き刺すと、ベンチを含めて駆け寄った全員から笑みを向けられた。ともに19節目にして今季初得点。助っ人としては遅いくらいだ。
ミンテは開幕当初、ミスを連発し、先発から外れた。ただ、ベンチからピッチへ向かう彼のダッシュは点差に関係なく、いつもハツラツとし、見ている側の気持ちまで前向きにさせた。昨年から体調不良に悩まされたエベラウドも復帰後は、大きな体でボールを追う姿が印象に残る。出場機会の少ない彼らは練習でも同じ姿勢で、チームの空気を引き締めることに一役買っていたことは言うまでもない。
2人の得点後の光景を見て、内田篤人さんの言葉が思い出される。「鹿島っていうチームは、どんな人にも居場所を作ってあげる。(自分からは居場所を作りにくい)静かな人、試合に絡めない人にも居場所がある。それぞれの良さを認めるっていうことだと思う」。実際の効果までは言わなかったが、プライドを持つ助っ人が出番がなくとも「チームに貢献したい」と思うことと、無関係には思えない。
今季10得点をたたき出した上田綺世は、ベルギー1部のサークル・ブリュージュへ移籍が決まった。上田不在でもやっていけるか、を内外に示す必要があった柏戦。PKを譲った鈴木は「綺世が抜けた今、エベラウドにかかる期待は、すごく大きい。エベが決めて勝った試合だったら(次への力が大きくなる)。みんながエベのゴールを待っていた」と言った。今も「居場所を作る」伝統が引き継がれていることを示す1シーンだ。
「(先発できず)苦しい時期だったが、自分は絶対できると信じていた。腐ることなく頑張ってきたことが、結果に表れたと思う。アントラーズには良い選手が多くいる。自分たちの力を出していくことができれば、タイトルに近づいていける」とミンテ。バイラー監督が策を講じ、上田に託していた責任を、他の選手が引き継ぐプレーをみせた。今後を見据えても、ただの1勝ではなかった。(鹿島担当・内田知宏)
◆【番記者の視点】上田移籍の鹿島が団結の1勝 助っ人の2得点に「居場所を作る」伝統を見た(報知)