日刊鹿島アントラーズニュース

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2022年7月9日土曜日

◆上田綺世がベルギーで飛躍するために必要なこと。分岐点となる「シーズン二桁得点」の壁(Sportiva)






 鹿島アントラーズの日本代表FW上田綺世が、ベルギー1部のセルクル・ブルージュへ完全移籍した。移籍金は100万ユーロ(約1億4000万円)と言われ、ストライカーとしての能力が高く評価されての渡欧だ。

 カタールW杯での活躍も期待される上田の価値はどこまで高まるのか?

 ベルギーリーグは西ヨーロッパのサッカーマーケットの入り口である。とりわけストライカーにとっては、その傾向が顕著だ。

 たとえば、コロンビア代表のカルロス・バッカは、2011-12シーズン途中、欧州初挑戦でベルギーのクラブ・ブルージュを選んでいる。1年目は半年で3得点だったが、2年目は25得点で得点王に輝いた。これで堂々、スペインの強豪、セビージャへの移籍の道をつかんでいる。

 他にも野心的ストライカーたちがしのぎを削り、道を切り拓いている。

 セルビア代表FWアレクサンダル・ミトロヴィッチは2013-14シーズン、母国のクラブからベルギーのアンデルレヒトに移籍し、2シーズンでそれぞれ16得点、20得点を記録し、イングランドのニューカッスル・ユナイテッドへ移籍。ポーランド代表FWウカシュ・テオドルチュクも2016-17シーズン、西欧への玄関口として同じくアンデルレヒトに移籍し、22得点、15得点と大暴れ、イタリアのウディネーゼへ移籍した。

 2シーズン連続で15得点以上を挙げると、確実に有力クラブへの移籍の流れが作られる。ケースによっては1シーズンでも、得点王に近い成績を残せば、ビッグクラブへの移籍の可能性が広がる。

 上田は、それだけの得点を獲れるだけの実力を持つ。得点パターンが多く、クロスやラストパスを呼び込むだけではなく、自ら相手をかわしてミドルレンジから豪快なひと振りでゴールを決められる。

 ベルギーリーグのレベルは、そこまで高くはない。単純には比べられないが、Jリーグとほぼ同等だろう。もちろん、外国人として戦う重圧はあるし、さまざまな人種や文化がぶつかり合う環境のなかでの勝負になるので、その点の難しさはあるか。


大台突破は鎌田大地と鈴木優磨


 ただ、上田は海外のディフェンダーを苦にしないところがある。東京五輪、あるいはそのテストマッチでも、激しく体を当てられてもボールコントロールの精度が落ちなかった。そもそもポジション取りがうまく、準備動作で相手に差をつけられる。欧州の選手のほうがクロスボールの質はおしなべて高いだけに、背後を取ったファーでのゴールは増えるかもしれない。

 日本にいる時以上に、ストライカーは単純に数字がモノを言うポジションだ。どれだけポストプレーが華麗で、中盤の選手のようにボール扱いがうまく、きれいなパスも出せ、サイドへ流れて幅を作れても、ゴールが獲れないFWは「怖さ」がなく、相手にあしらわられる。チームにとっての武器にならないのだ。

 そこで、まずはリーグ戦での二桁得点が目標になる。

 過去、日本人FWが数多くベルギーに挑戦しているが、二桁の壁を越えられた選手は意外に少ない。鈴木隆行、小野裕二、永井謙佑などは1点を獲るのに四苦八苦していた。複数シーズン在籍した久保裕也は最多で7得点、同じく豊川雄太も最高7得点だった。

 ちなみに昨シーズンでは鈴木武蔵(ガンバ大阪)がKベールスホットVAで6得点、林大地(シント・トロイデン)が7得点、原大智(シント・トロイデン)は8得点だった。悪くはないが、一桁では「飛躍」に直結しないのだ。

 二桁に乗せることができたのは、2018-19シーズンにシント・トロイデンで12得点の鎌田大地(フランクフルト)と、2020-21シーズンにシント・トロイデンで17得点を記録した鈴木優磨(鹿島アントラーズ)のみである。鎌田は純粋なストライカーではないが、ベルギーでの活躍がジャンプアップのきっかけになった。また、鈴木はセリエAへの移籍などが噂されるも、交渉がまとまらなかった。その後に帰国を余儀なくされたのは不運としか言えない。

 上田がチームメイトとコミュニケーションをとって連係を作ることができたら、二桁はおろか20得点越えも見えてくるだろう。

「僕は常に考えてサッカーをしています。茨城の小さな世界だけで生きてきましたが、そこでも他人を観察して。なんとなくですけど、考えを確立してきました」

 法政大学サッカー部時代の最後のインタビューで上田はそう語っていた。彼はアントラーズでユースに"落第"し、高校進学で道を広げている。自分を見つめ、自身をアップデートさせてきたのだ。

「小学校のころ、クリスティアーノ・ロナウドのドキュメントをテレビで見たことがあって、ロナウドに『クリスティアーノ・ロナウドをどう思うか?』という質問があるんです。それに彼が『大好きだよ』と答えて、小学生だと『ヘンなの』って恥ずかしがるかもしれない。でも僕は、素直に格好いいなって共感しました。自分が好きだからこそ、もっと高めたいって思えるんだろうなって」

 その上田は、どこまで自分を高められるのか。ベルギーは入り口に過ぎない。そこでゴールを決め、W杯でも得点を奪えば、価値は高騰するだろう。1年後には10倍の価値になっていても不思議ではない。2、3年後には世界的ストライカーの仲間入りも......楽しみな挑戦が始まった。




◆上田綺世がベルギーで飛躍するために必要なこと。分岐点となる「シーズン二桁得点」の壁(Sportiva)





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