◆明治安田生命J1リーグ ▽第28節 鹿島 2―2 浦和(3日・カシマスタジアム)
浦和戦は2点を追いつかれてのドローに終わった。取材エリアで選手の空気は重かったが、岩政大樹監督は違った。「結果として勝ち点1は悔しいが、選手たちが取り組んでいることが先週からの2週間で、ここまでいく(進む)という手応えに関しては、思っていた以上のものが得られている」。チーム構築に前向きな言葉を残しただけではなく、口調にも自信を深めた様子がうかがえた。
ただ、レネ・バイラー監督退任を受け、監督に就任してから1勝2分け1敗。緊急登板という事情があるにせよ、多くのタイトルを手にしてきたクラブは「良し」と受け止めない数字だろう。だが、現役時代から鹿島のことを理解しているはずの岩政監督は「(この成績を)気にしていない」と即答。理由を「これまでの鹿島のメンタリティーで選手たちに接していないから」と語った。
確かに湘南戦以外の3試合はチームに前進と光を感じた。川崎に敗れたとはいえ、リーグ戦7年間未勝利の相手を完全に押し込んだ。1トップ2シャドーで臨んだ浦和戦の前半は、相手がボールを奪いに来られない状況だった。勝利につながらなかったのは、同監督が指摘するようにセットプレーの守備や、交代選手がパワーをもたらせていないことが挙げられる。幹の部分で相手を圧倒しているが、枝葉の部分で勝ち点を失っている。それらを克服していくのは「次のステップ」というのが指揮官の認識だ。
「内容は良かった」。勝てなかった試合で、この言葉を嫌う選手が多かった。小笠原満男はもちろん、内田篤人、大迫勇也らも「勝たなきゃ意味ない」とクラブ伝統が先に立ち、避けてきた。成熟した選手、チーム状況があれば、内容で満足できないのは理解できる。だが、今は「新しい鹿島を作る」という目標を掲げ、歩み出したばかり。チームの積み上げ=内容。ここにフォーカスするのは合理的だ。選手から勝つことへの欲求が足りない様子も感じないのだから、なおさらだ。
チームは結果を得て、自信を深め、強くなる。一方で、結果が出ずとも内容を信じ、強くなるチームもある。優勝には内容、結果の両面が必要になるが、今の鹿島は内容を信じて進む方が、開拓精神にあふれる今の選手にも合うと感じる。若い選手が多かった2007年もオズワルド・オリヴェイラ監督が示した内容を信じ、新しい黄金期の扉を開いた。
「結果が出ていないとは思っていない。ピッチで見せている景色はあると思っている」と岩政監督。課題を一つひとつクリアし、確かな一歩を刻みながら、新時代の扉に近づいていく。(鹿島担当・内田 知宏)
◆【番記者の視点】内容と結果。重点を置くべきは? 浦和戦ドローの鹿島・岩政大樹監督の考えを読み解く(報知)