日刊鹿島アントラーズニュース

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2023年4月12日水曜日

◆アントラーズの危機「岩政を出せよ!」サポーターの罵声が飛び交い、昌子源は憔悴、鈴木優磨は「今日は勘弁してください」(Sportiva)




安西幸輝


 試合が終わっても、アウェーゴール裏に陣取った鹿島アントラーズのサポーターは帰ろうとはしなかった。「岩政を出せよ!」と罵声を飛ばすなど、怒りは収まらない様子だった。

 サンフレッチェ広島に逆転負けを喫した前節にも、一部サポーターがバスを囲む事態が起きたばかり。不甲斐ない戦いを続ける鹿島に対し、ファンの我慢は限界に達してしまったようだ。

「結果も内容もよくなかった。今季で一番悪かったんじゃないかと思います」

 柏レイソルに0-1で敗れたあとの会見で、岩政大樹監督は肩を落とした。

 選手たちも憔悴しきっていた。

 いつもは饒舌な昌子源は「今日はあまり言うことがなくて......。僕が試合に出てから勝っていないので責任を感じるし、自分のせいだなとすごく思う。その責任を自分のなかでも背負っていきたい」と言葉少なく取材陣の前をあとにした。

 鈴木優磨は「今日は勘弁してください」とひと言だけ残し、ミックスゾーンを通りすぎている。

 無理もないだろう。前節まで最下位に沈んでいた柏に今季初勝利を献上し、ついに3連敗。14位にまで順位を下げてしまったのだから、話す気力もなかったはずだ。

 たしかにこの日の鹿島は、いいところがなかった。とりわけ前半はアップテンポの展開のなかで連動性が備わらず、ロングフィードを打ち込んでは、跳ね返されるばかり。サイドのスペースを突いてもサポートが足りず、個の力で打開するしか術(すべ)はなかった。

 2トップに変えた後半立ち上がりに立て続けにチャンスを生み出したが、決定的なシーンにはなかなかつながらない。その後も選手を代え、形を変え、立ち位置を変えながら状況打破を試みるも決定打は生まれなかった。植田直通を前線に上げた最後のパワープレーも実らず、32分に失った1点を取り返すことはついにできなかった。


【選手の姿勢にも問題が?】


「僕たちは非常に流動的なサッカーをしていて、相手に捕まらないように、相手に読まれないようなサッカーを目指しています。そのうえで大事なのが、うしろで動かすテンポ。この数試合、相手を動かしながらどこを見ておくか、そして相手が来ないのであればどのように動かすか、というところを取り組んできました」

 岩政監督には明確なビジョンが備わっているはずだ。

 しかし現状は、その理想をピッチ上ではうまく体現できていないように映る。この柏戦ではボールをいい形で動かせず、相手を動かせないから、裏のスペースを一発で狙うフィードが多用され、理想とは程遠いサッカーに終始した。

「今日は特に、試合前にレイソルのやり方を踏まえて、そこを強調して出しました。だが、前半はそれが出せなかったというより、やろうともしなかったように見えた」

 この日に限って言えば、選手たちの姿勢に問題があったと指揮官は指摘する。

「いつもあまり僕は叱らないんですけど、ハーフタイムにかなり喝を入れました。前半はかなりのらりくらりと時間を過ごしてしまった」

 この敗戦が痛手だったのは、勝ち点はもとより、チームとしての上積みを得られなかったことだと岩政監督は言う。

「前節までは、自分たちが失った勝ち点よりも、自分たちが前進していることの実感があった。課題に対して取り組んで、プラスアルファを乗せて試合をするという繰り返しをしていて、そこに勝ち負けはついてきますけど、チームが進んでいればそこはあまり関係ない。ただ今日に関しては、前進したとは言えない試合だった」

 選手たちにも、その自覚はあるようだ。左サイドバックを務める安西幸輝は語る。

「サンフレッチェの試合の負け方と、今日の負け方は違うと思っていて。広島戦は2点やられてしまいましたけど、85分くらいまでは自分たちのサッカーができていた。今日の負けはちょっと違うという感じがします。もっと僕らがやらないといけないと感じました」

 ではなぜ、この日はやるべきことができなかったのか。岩政監督は「相手の出方もあったのかもしれませんし、今日はウチが1時間半ぐらいかけて移動してきて、身体が動かないところもあったのかもしれません」と話したが、その原因の追求が重要なポイントとなるはずだ。


【崩れつつある鹿島の伝統】


 一方で負けが込んでくれば、自らのサッカーに対する自信が揺らいでいく危険性もある。

 気がかりなのは、今季の鹿島は柏戦までに3敗を喫していたが、その相手は横浜F・マリノス、川崎フロンターレ、広島と昨季の上位3チームだった。いずれも1点差での敗戦とスコア的には僅差ながら、川崎と広島にはリードしながら終了間際の2失点で逆転負け。

 その負け方が、どうにも鹿島らしくはないのだ。1点を守り抜くサッカーで勝利を積み上げてきた鹿島の伝統とはあまりにも対照的な状況に、現状のチームの不安が浮かび上がる。

「大樹さんからの提示はいろいろありますし、それは選手がやること。僕らがこれをやれと言われてやるのも簡単ですけど、大樹さんは選手の個々を生かしたサッカーで、強い鹿島を取り戻すということをやってくれているので、それに応えられない僕らの責任かなと思います」(安西)

 選手たちは危機感をあらわにするが、まるでいいところのなかったこの柏戦を鹿島はどのように受け止め、どのように修正していくのか。

 今週末の15日には、ホームで首位のヴィッセル神戸との対戦を控える。不満を抱えたサポーターの前で、その真価が問われてきそうだ。


原山裕平(はらやま・ゆうへい)
スポーツライター。1976年生まれ、静岡県出身。2002年から『週刊サッカーダイジェスト』編集部に所属し、セレッソ大阪、浦和レッズ、サンフレッチェ広島、日本代表などを担当。2015年よりフリーランスに転身。




◆アントラーズの危機「岩政を出せよ!」サポーターの罵声が飛び交い、昌子源は憔悴、鈴木優磨は「今日は勘弁してください」(Sportiva)


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