5月15日に発足30周年を迎えたJリーグだが、オリジナル10で一度もJ2に落ちたことがないのは鹿島アントラーズと横浜F・マリノスだけ。横浜の国内タイトルは7冠だが、鹿島は同20冠。2017年AFCチャンピオンズリーグ(ACL)制覇を含め、常勝軍団の華々しい戦績は誰もが知るところである。
30年の長い歴史を振り返ると、タイトルを獲得した時代には必ずと言っていいほど「絶対的エース」と言える日本人の点取屋がいた。
90年代に活躍した長谷川祥之を筆頭に、2000年前後に活躍した柳沢敦、平瀬智行、鈴木隆行、2007~2009年の3連覇の頃に大きく飛躍した田代有三、興梠慎三、そして2010年台に看板FWとなった大迫勇也と、名前を挙げるだけでそうそうたるものがある。彼らが鹿島の攻撃陣をリードし、勝利をもたらしてきたのである。
小学校1年から鹿島のスクールに通い始め、アカデミーで成長し、2015年にトップ昇格し、プロ9年目を迎える鈴木優磨はまさに今、その系譜を継いでいる存在だ。
若い頃から才能を高く評価され、2018年ACL制覇時には大会MVPを獲得。2019年夏にはいったんベルギー・シントトロイデンに赴いたものの、2022年1月に古巣復帰。小笠原満男が背負っていた40番をつけ、チームの主軸としての自覚を強めていった。
■「腹が立っていたんで」
今季はキャプテンマークを巻いてプレーする機会も多く、ゴール数もすでにJ1得点ランク2位タイの7得点をゲット。「ここ一番で点の取れる男」だということを自ら実証している。その勝負強さは歴代の名FWたちに通じる部分だろう。
反面、ストレートな物言い含めて喜怒哀楽が前面に出るところは、さまざまな先人たちと異なる部分かもしれない。
Jリーグ30周年スペシャルマッチと位置づけられた14日の名古屋グランパス戦(東京・国立)でもそういったシーンがあった。前半12分に樋口雄太の右CKをヘッドで合わせた先制点がVAR判定で取り消されたことを不服に感じた背番号40は、前半29分に自ら奪った真の先制弾の場面で木村博之主審を睨みつけるようなパフォーマンスを披露。物議を醸した。さらに試合後のミックスゾーンでも「腹が立っていたんで」とストレートに発言。メディアを驚かせたのである。
4月15日のヴィッセル神戸戦後に罵声を浴びせたサポーターに対して「まだ巻き返せる」と大声で叫ぶなど、思ったことをハッキリと口にしたり、闘争心を前面に押し出すところは鈴木優磨の大きな魅力だ。しかし、その行動が誤解されがちな部分もある。
かつて所属したシントロイデンの関係者は「優磨はそういったパフォーマンス含めてサッカーを盛り上げようとしている人間」と語っていたが、その見方通り、彼は意外とサービス精神旺盛なタイプなのかもしれない。
注目される人間というのは賛否両論がついて回る。鈴木もそれを分かったうえで行動しているようにも感じられる。
(取材・文/元川悦子)
◆【鈴木優磨のスター性(1)】鹿島歴代エースの柳沢、興梠、大迫とは異なる姿。関係者が語る、「そういったパフォーマンス含めてサッカーを盛り上げようとしている」(サッカー批評)
「闘争心を前面に押し出す所は大きな魅力。しかし、その行動が誤解されがちな部分も」
— 日刊鹿島アントラーズニュース (@12pointers) May 18, 2023
◆【 #鈴木優磨 のスター性(1)】鹿島歴代エースの柳沢、興梠、大迫とは異なる姿。関係者が語る、「そういったパフォーマンス含めてサッカーを盛り上げようとしている」(サッカー批評) https://t.co/3sHNXz72wn pic.twitter.com/T5P5OV2UGO