ゴールという結果、最前線での存在感、一見ヤンチャにも見えるピッチ上での一挙手一投足含め、スター性抜群の鈴木優磨。三笘薫や久保建英ら日本代表選手の多くが欧州を主戦場としている今、彼の存在はJリーグにとって貴重なのは間違いない。
岩政大樹監督も鈴木優磨に絶対的な信頼を寄せている。3~4月にかけてリーグ戦4連敗を喫した際、周囲からは「優磨を外せ」というネガティブな声が高まったが、指揮官は「いかにして優磨のよさを出すべきか」を熟考し続けた。2022年前半に上田綺世との2トップで輝きを放った彼自身のパフォーマンスに思いを馳せ、垣田裕暉との2トップ採用を決断。そこから5戦4発の固め取りを見せている。
本人も今のゴールラッシュが自分1人の力だとは決して考えていない。
「沢山の人が俺に携わってくれて、今の俺が成り立ってる。今日もピッチに入る時に『これだけ素晴らしい環境でできるのは当たり前じゃない』と思ってた。ファンの多さを見ても分かる通り、本当に鹿島が作り上げてきたものは大きいし、僕たちが壊さないように、続けていけるようにしなきゃいけないって思う。身が引き締まる思いです」
ジーコの御前で決勝弾を挙げた名古屋戦後、神妙な面持ちでこう語っていたが、彼は謙虚さと義理堅さも確かに持ち合わせている。「素の鈴木優磨」を岩政監督もチームメートもよく分かっているからこそ、信頼が揺らぐことは全くないし、看板エースとしてチームを引っ張ってくれると確信しているはずだ。
■「アントラーズって特別な試合はあまりなくて」
4月23日のアルビレックス新潟戦からのリーグ5連勝で勝ち点22の5位に浮上した鹿島。首位・神戸とのポイント差は7とまだ大きいが、岩政監督が選手として初タイトルを取った2007年は13節時点で首位・ガンバ大阪と8差の9位。そこから凄まじい巻き返しを見せ、最終的に浦和レッズを抜いて逆転優勝したことを考えれば、まだまだチャンスはあるはずだ。
96年生まれの鈴木優磨は当時小学生。鹿島ジュニアの一員としてその光景を見ていたはずだ。イタリア・メッシ―ナから夏に復帰し、背番号40をつけて異彩を放った小笠原のパフォーマンスも覚えているに違いない。今、その偉大な番号をつけ、ピッチに立っている彼も大先輩のようなリーダーシップと結果を残す必要がある。
「アントラーズに関わる人なら分かると思うんですけど、やっぱりアントラーズって特別な試合はあまりなくて、どの試合も同じモチベーションでのぞむのが僕が知ってるアントラーズだし、僕が見てきた先輩方の姿。つねに高いパフォーマンスを出せるように頑張りたいと思います」と名古屋戦後にコメントした通り、5月20日の次戦・FC東京戦以降も高値安定を維持することが肝要だ。
最終的に大迫越えを果たし、鹿島のスターからJリーグ屈指のスターへ飛躍を遂げられるのか。2023年のラストに鈴木優磨がどう大化けしているかを楽しみに待ちたい。
(取材・文/元川悦子)
『どの試合も同じモチベーションで臨むのが僕が知ってる鹿島だし、僕が見てきた先輩方の姿』
— 日刊鹿島アントラーズニュース (@12pointers) May 18, 2023
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