日刊鹿島アントラーズニュース

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2023年12月12日火曜日

◆鹿島アントラーズ、5季連続無冠…“きっかけ”を手にするために必要な「伝統への回帰」。まずはカップ戦を狙え!(Qoly)



鹿島アントラーズ


12月4日、鹿島アントラーズは岩政大樹監督の退任を発表した。

明治安田生命J1リーグ最終節・横浜FC戦の翌日にリリースされた「お知らせ」は、2024シーズンを新監督と戦うことを意味する。

来季の指揮官(※本稿執筆時点で未定)はここ10年で8人目。特に2020シーズン以降の監督人事は、明確な方向性が定まらない現状を端的に表している。

今季のリーグ戦を5位で終えた鹿島は、ルヴァンカップが準々決勝敗退、天皇杯が3回戦敗退と5シーズン連続で無冠だった。

来シーズンのタイトル獲得に向けて、どのような手を打つべきか。近年の監督交代を振り返りつつ、補強面および戦術面の両方から考えを巡らせた。

ラスト5試合の基本システム

まずは、リーグ戦ラスト5試合の基本システムおよびメンバーを見ていこう。

守護神は今季リーグ戦全試合フル出場を達成した早川友基で、4バックは右から広瀬陸斗(または須貝英大)、植田直通、関川郁万、安西幸輝の4人。

センターバックは昌子源が今季大きく成長した関川をバックアップし、サイドバックは佐野海舟が試合途中から務めつつ、須貝が両サイドに対応した。

ダブルボランチは、抜群のボール奪取力で日本代表にも選ばれた佐野と正確な左足でゲームメイクするディエゴ・ピトゥカのコンビ。両サイドハーフを主戦場とする樋口雄太が、試合途中からボランチに回るのが定番の起用法だった。

流動的な動きで攻撃を彩るサイドハーフは、右がピンポイントのプレースキックで決定機を演出する樋口、左は神出鬼没な位置取りが光る仲間隼斗がファーストチョイス。終盤戦に存在感を示した松村優太は、来季に本格ブレイクの予感が漂う。

2トップは攻守に働く絶対的エース・鈴木優磨を軸に、ハードワークが身上の垣田裕暉、3トップ採用時はウィングにも対応した知念慶、最終節の横浜FC戦で推進力を見せた師岡柊生がポジションを争った。

トップ下および右FWで起用された荒木遼太郎は、残留となれば来季の復活に期待だ。

岩政監督のスタイルは徐々に浸透も……

岩政体制2年目の今シーズンは、序盤から苦しむも立て直した前半戦。そして、逆転優勝の可能性がありながらも終盤に失速した後半戦とふたつの顔を見せた。

今季限りで退任となった岩政大樹監督だが、志向するスタイルは徐々に根付いていた。特に攻撃においては、ビルドアップから絶対的エース・鈴木優磨を軸とした流動的な崩しが構築されつつあった。

左サイドハーフの仲間隼斗は局面に応じたポジショニングが光り、“影のキーマン”と呼べる活躍を披露。スピードスターの松村優太もゴールに直結する動きが増加し、着実に成長していた。

攻撃の形が見えてきた一方で、悲願のリーグ優勝を達成したヴィッセル神戸と2位の横浜F・マリノスには今季4戦全敗に終わり、リーグ戦は5位フィニッシュ。カップ戦(ルヴァンカップおよび天皇杯)も勝ち取ることができなかった。

岩政監督の退任により、来季の指揮官(※本稿執筆時点で未定)はここ10シーズンで8人目の監督となる。近年の監督交代をまとめると以下の通りとなる。

・2015シーズン:7月下旬にトニーニョ・セレーゾ監督を解任、石井正忠コーチが昇格
・2017シーズン:5月末に石井監督を解任、大岩剛コーチが昇格
・2019シーズン:シーズン終了後に大岩監督が退任(契約期間満了)
・2021シーズン:4月中旬にザーゴ監督を解任、相馬直樹コーチが昇格
・2021シーズン:シーズン終了後に相馬監督が退任(契約期間満了)
・2022シーズン:8月上旬にレネ・ヴァイラー監督が退任、岩政コーチが昇格
・2023シーズン:シーズン終了後に岩政監督が退任(契約期間満了)

特に昨季途中のヴァイラー監督退任は、リリース時点で5位だったこともあり波紋を呼んだ。退任に際して一部ブラジル人選手との不和やマネジメントを巡るフロントとの齟齬などが報じられたが、ザーゴ体制からの相次ぐ監督交代により志向するスタイルは定まらず。

ポゼッションスタイルなのか、それとも縦に速いスタイルなのか。明確な方向性を見失ったクラブは、5年連続でタイトルから遠ざかった。極めて難しい状況で重責を務めた岩政監督には、同情を禁じ得ない。

課題は迷走した監督人事だけにとどまらない。

昨夏に移籍した上田綺世(現・フェイエノールト)の穴がいまだ埋まっておらず、今季のリーグ戦でふた桁得点を記録したのは14ゴールの鈴木のみ(次点は知念慶の5ゴール)。今季の総得点43は2019年からの5シーズンで最も少なかった。

得点数が順位に直結する訳ではないが、やはりゴールは多ければ多い方がいい。

今季のJ1を制した神戸(総得点60)は、MVP&得点王の大迫勇也が22ゴールと別格の輝きを放ったが、10ゴールの武藤嘉紀も随所で活躍を見せた。複数の得点源を用意する重要性が分かる好例だろう。

話を鹿島に戻そう。5シーズン連続で無冠の現状を打破し、来季こそタイトル獲得を実現するためには何が必要なのか。補強面と戦術面の両方から考察していきたい。

「上田綺世の穴埋め」が今オフの最優先課題

タイトル獲得に向けて、まず着手したいのは「外国籍選手を中心とした補強」だ。特にフォワードは、得点源だった上田綺世の穴埋めがいまだ完璧にできていない。来季も<4-4-2>で戦う場合、鈴木優磨の相棒探しは急務だ。

上田移籍後に獲得したエレケは、怪我もあり約1年半でリーグ戦6試合出場・1ゴールとノーインパクトのまま退団が決まった。献身的な守備も光った垣田裕暉、序盤戦に躍動した知念慶、最終盤に出番を得た師岡柊生もいるが、ここはふた桁得点が期待できる外国籍ストライカーを獲得したい。

理想は攻守に働くことができ、ゴールはもちろんチームのためにプレーできる“鹿島らしい”点取り屋だ。かつて在籍し、2007シーズンからのリーグ三連覇に大きく貢献したマルキーニョスのようなストライカーを迎え入れたいところ。

今季リーグ戦13得点をマークした湘南ベルマーレ・大橋祐紀の獲得に動いているようだが、仮に獲得できたとしても、外国籍FWは必ず補強したい。いずれにせよ、上田の穴埋めは今オフの最優先課題だ。

また、ディエゴ・ピトゥカの退団が決定済み(古巣のサントスFCへ完全移籍)のボランチも、重要な補強ポイントとなる。

ボランチは9月に柴崎岳が復帰しており、コンディションが整うであろう来季はピトゥカの穴を埋めてくれるはずだ。しかし、日本代表での飛躍も期待される佐野海舟は海外移籍が十分考えられるだけに、やはり補強しておきたい。

理想は攻守に計算が立ち、“心臓”として存在感を示せるタイプ。イメージとしては、かつて在籍したレオ・シルバだ。もちろん、ピトゥカやレオ・シルバに匹敵する選手を獲得するのは難しいかもしれないが、フロントの働きに期待したい。

加えて、試合の流れを変えられるサイドアタッカーも補強すべきセクションだ。松村優太をスタメン起用した場合、現状ではジョーカータイプのアタッカーがベンチに不在となっている。ベンチワークの選択肢を増やす意味でも、スーパーサブの存在は重要だ。

藤井智也、または(残留すれば)荒木遼太郎にジョーカー役を期待したいところだが、外国籍選手を獲得するのも手だ。かつて在籍した選手で言えば、レアンドロやカイオのような“一発の怖さ”があるプレーヤーが望ましい。

スーパーサブ起用を前提とすれば、守備には目をつむり、攻撃に特化したタイプをターゲットにしても面白いだろう。

そして、サイドハーフとフォワードを兼務したアルトゥール・カイキの退団により、マルチな外国籍アタッカーの獲得にも動く可能性もある。仮に外国籍FWを獲得できたとしても、すぐにフィットできるとは限らない。よって、中央とサイドに対応するアタッカーを獲得するのは理に適うはず。

かつてのセルジーニョやエヴェラウドのような万能型を迎え入れることができるか。来季のタイトル獲得に向けて、試されるのはフロントの“本気度”だ。

伝統への回帰が常勝軍団復活の足がかりに

来季のタイトル獲得に必要なのは、補強面だけではない。「どのようなスタイルで戦うか」という明確なコンセプトもまた、フロントおよび新監督が示すべき重要ポイントである。

志向するスタイルを考えた時、構築と成熟に時間を要するポゼッションサッカーよりも、短期間で結果につながりやすい「堅守速攻」を標榜すべきだと考える。なぜなら、早急にタイトルを獲得して「勝ちぐせ」をつけることが、現状の脱却に何よりも必要だからだ。

リーグ戦、ルヴァンカップ、天皇杯のうち、もっとも難しいのがリーグ制覇だ。長丁場のリーグ戦は総合力がモノを言う。現状のチーム力を踏まえると、来季の優勝は現実的ではないだろう。

上述したように、ヴィッセル神戸と横浜F・マリノス(以下横浜FM)には今季4戦全敗。補強次第ではあるが、現状では上位クラブとの差が大きいのも理由となる。

そうなれば、カップ戦(ルヴァンカップおよび天皇杯)でのタイトル獲得に照準を合わせていくべきだ。もちろん、そう簡単にカップ戦を勝ち取ることができないのは、ここ5年の成績が証明している通り。だが、総合力がモノを言うリーグ戦よりは、戴冠の可能性があると見る。

来季のカップ戦制覇に向けてお手本としたいのが、今シーズンのルヴァンカップ王者・アビスパ福岡と天皇杯準優勝・柏レイソルだ。両チームともソリッドな「堅守速攻」を基本コンセプトとし、スキのないコンパクトな守備ブロックとスピーディーかつ推進力のある攻撃を特長とする。

慎重な展開になる一発勝負のカップ戦では、堅守速攻型のチームが勝ち上がりやすい側面がある。カップ戦を制して6年ぶりのタイトル獲得を実現するためにも、現実路線を歩むべきではないか。

鹿島というクラブは元来、カウンターまたはセットプレーからの一発をしたたかに逃げ切るスタイルを武器としてきた。今こそ伝統の戦い方へ回帰し、まずはカップ戦を勝ち取る――。

かつて石井正忠氏(現・タイ代表監督)のもと、伝統を体現していた昌子源、土居聖真、柴崎岳らの存在も心強く、「堅守速攻」の下地は整っている。

岩政監督の後任人事は現在着手中であり、候補となる外国籍監督の具体的な名前も報じられている。

新監督がどのようなスタイルを打ち出すかという点は、来季のみならず今後の命運を大きく左右するに違いない。当然ながら、新監督の意向に沿った積極的な補強もマストとなる。

クラブの強化部長を長年にわたり務めた鈴木満氏は、2017年6月に刊行された著書『血を繋げる。勝利の本質を知る、アントラーズの真髄』(幻冬舎)の中で、「(前略)勝った者はまた勝ちたいという思いを強くする。優勝の歓喜を味わうと、またタイトルを取りたいという欲望がさらに膨らむ。鹿島はその繰り返しで19冠(※刊行当時)を重ねてきた」(p.157)と“勝利のサイクル”を記した。

ひとつのタイトルがきっかけとなって、更なる栄光をつかんでいく。まさに、タイトルがタイトルを呼ぶのである。

今の鹿島には、その“きっかけ”がない状態だ。川崎フロンターレ、横浜FM、そして神戸がJ1の盟主となる中、鹿島は取り残されている。

中期的にリーグ優勝を狙うのであれば、来季にカップ戦を制して“きっかけ”を手にするほかない。「堅守速攻」への回帰が、常勝軍団復活の足がかりとなるはずだ。




◆鹿島アントラーズ、5季連続無冠…“きっかけ”を手にするために必要な「伝統への回帰」。まずはカップ戦を狙え!(Qoly)





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