日刊鹿島アントラーズニュース

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2015年10月15日木曜日

◆「イニエスタを見習え」本田のヒントを突破口に課題克服が求められる柴崎岳(サッカーキング)


http://www.soccer-king.jp/news/japan/national/20151014/359452.html


イラン戦で先発出場した日本代表MF柴崎岳 [写真]=兼子愼一郎


「イラン戦では何人かの選手を代えることになる。50パーセントの変更と思って間違いない。選手の可能性を探るためにもこの試合を有効活用し、若く経験を積んでいない選手がどんなプレーをするのか見てみたい。少しリスクはあるが、親善試合なので、それを実行したい」

 ヴァイッド・ハリルホジッチ監督が前日練習時にこう宣言した通り、13日のイラン戦(テヘラン)に向け、日本代表は8日のシリア戦(マスカット)から先発を5人変更。若い世代を思い切って抜擢した。

 中でも注目されたのが、6月のシンガポール戦(埼玉)以来、久しぶりに長谷部誠(フランクフルト)とボランチを組んだ柴崎岳(鹿島アントラーズ)。「最近、代表の試合に絡んでないので、自分自身のプレーを示したいし、チームのために自分を生かせればいい」と本人も意欲を見せていた。アジア最強の呼び声高いイランに柴崎の攻撃センスが通用するか否か。そこは一見の価値があった。

 ただ、イランの激しい守備は予想以上で、前半の日本はほとんど攻めの形を作れなかった。「フィジカルの強い相手にどう戦っていくのかを考えなきゃいけない」と香川真司(ドルトムント)は苦渋の表情を浮かべたが、柴崎にしても同様に不完全燃焼感を味わったに違いない。ゲームメークになかなか関与できず、決定的なパスを出せないうえ、球際の部分でほぼ競り負けていた。柴崎らしい輝きが潜めたまま、後半72分に柏木陽介(浦和レッズ)との交代を強いられたのだ。

「なかなか効果的な攻撃ができなかった。シュートが少なかったんで、自分がもっと前線に配給することも必要ですし、ゴール前での攻撃を増やさないといけない。中盤の組み立ては問題ないかと思うので、そこから先のクオリティを考えないといけない」と彼自身も内容には満足していなかった。

 ハリルホジッチ監督も強調するデュエル(決闘)の部分は柴崎にとって以前から指摘されている課題の1つ。9月のカンボジア戦(埼玉)以降、長谷部と山口蛍(セレッソ大阪)のコンビをボランチに据えているのも、その部分で強さを発揮できるからだろう。

 ただ、本田圭佑(ミラン)はこの問題点をそこまで深刻には捉えていない様子。柴崎にこんなヒントを与えていた。

「岳には岳にしかない特徴があるんで、それをもっと出すために、このレベルに慣れていかないといけない。別に岳がパワーをつける必要はないと思うし。実際、(アンドレス)イニエスタ(バルセロナ)はそこまで球際強くない。そうならない(球際や局面で負けない)うまさがあるんですよね。このプレッシャーをいなす形を普段の練習や普段の公式戦から身に着けていけばいいだけ。スピード、フィジカル、ドリブル、テクニックという部分がまだまだ足りないということだと思います」

 確かにイニエスタは170センチという小柄な選手だが、当たり負けしてボールを失ったり、ドリブルで持ち上がってつぶされるようなミスは滅多にしない。強さやパワーでは見劣りしても、それを補って余りある高度で洗練されたテクニック、そして百戦錬磨の経験を持ち合わせているからだ。小柄な日本人がイランのような屈強な肉体を持つチームと互角以上の試合を演じようと思うなら、やはりスキルやスピードの部分をブラッシュアップさせていくしかないのだろう。

 ちょうど1年前、シンガポールで行われたブラジル戦に0-4で惨敗した後、柴崎はこんな発言をしていた。

「並大抵の成長速度では、自分が現役のうちにこういったチーム(ブラジル)に対応できないのではないかと思う。自分のトップフォームの期間内で成長速度を上げながら、またこういうチームとやれる時にいい部分を出せるように1からやり直すというか、見つめてやっていく必要はあると思います」

 あれから1年の間に、今年1月のアジアカップ・UAE戦(シドニー)や今回のイラン戦のようなインパクトの大きなゲームに出ている柴崎だが、まだまだ国際経験が不足している面は否めない。

 本田は「フィジカルの差を埋めていくために一番いいのは、そういう環境に身を置くこと。これが本当のスタンダードの感覚にならないといけない。若い選手はもっと海外に出ていくべき」と改めて強調していたが、柴崎は鹿島に戻ってから何を思うのか……。

 いずれにせよ、今回の悔しさを絶対にムダにしてほしくない。中田英寿、遠藤保仁(ガンバ大阪)が背負ってきた「背番号7」の後継者として、柴崎にはイラン戦で出た課題を脳裏に焼きつけ、前向きかつ貪欲に取り組む努力を続けてもらいたい。

文=元川悦子

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