日刊鹿島アントラーズニュース
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2015年11月14日土曜日
◆【THE REAL】鹿島アントラーズ・カイオが日本代表入りを熱望する理由…日本への感謝の想いを込めて(CYCLE)
http://cyclestyle.net/article/2015/11/13/29790.html
左右を綺麗に刈り取り、中央部分だけが残る髪の毛にたっぷりとジェルを塗って固める。シーズンを戦いながら仕立ててきたモヒカンを、パリッと際立たせてからキックオフの笛を待つ。
鹿島アントラーズのMFカイオが試合前に必ず行う髪型のセット。おそらくは国民的な流行となったラグビー日本代表・五郎丸歩の「ポーズ」に通じる、集中力を高めるためのルーティンなのだろう。
ウルトラセブンのアイスラッガーをほうふつとさせる、巨大なモヒカンに込めた想いを聞いてみる。はにかむような笑顔とともに、母国ブラジルの英雄の名前が返ってきた。
「ネイマール、です」
クライマックスを迎えた今シーズンの戦いにおいて、憧れの存在に近づけとばかりに、カイオのパフォーマンスがさらにまばゆい輝きを放っている。
アントラーズが通算6度目の頂点に立った、10月31日のナビスコカップ決勝。途中出場した背番号7は後半41分、電光石火のカウンターからガンバ大阪の息の根を止める3点目を叩き込んだ。
1週間後の11月7日。ホームに横浜F・マリノスを迎えたセカンドステージ第16節は、負けはもちろんのこと、引き分けてもサンフレッチェ広島の優勝が決まる正念場だった。
ここでもカイオが群を抜く存在感を放つ。4試合ぶりに先発すると前半10分に先制弾、後半19分にはダメ押し弾をゲット。キックオフ前の時点で最少失点を誇った、マリノスの堅守に風穴を開けた。
1ゴール目はカウンター。自陣から約40mをドリブルで突破していったMF遠藤康の左後方をトップスピードでフォローして、スルーパスを難しい角度から左足で叩き込んだ。
「中盤の攻防から僕たちが競り勝って、そこからカウンターを仕掛ける形になった。いい形でフリーになった僕を見てくれた味方には感謝したいし、幸いにも得点につなげることができてよかったです」
■入団2年目でゴールは二桁に到達
圧巻は2ゴール目だ。センターサークル付近でボールを受けると、柔らかいボールタッチを駆使して、間合いに入ってきたマリノスのMF三門雄大を一瞬にして置き去りにする。
そのままドリブルで攻め上がり、ペナルティーエリアの外、約20mの距離から右足を一閃。狙い澄ました一撃が、ゴール右隅に吸い込まれていった。
入団2年目で堂々の二桁に到達させるファインゴールを、カイオは自信を込めて振り返る。
「ちょうど仕掛けていったところで、相手のディフェンスラインがズルズルと下がっていってシュートコースもできた。練習通りにミートできたというか、ボールの当たりが非常によかったので、見ての通り綺麗な形のゴールとなりました」
千葉国際高校を卒業し、アントラーズの一員となった昨シーズン。初先発を果たした4月6日のガンバ大阪戦で初ゴールを決めると、カイオは一気に注目を集める。
173cm、69kgのやや華奢な体に搭載された、多彩なテクニックと圧倒的なスピード。クラブの高卒新人最多得点記録を更新する8ゴールをマークするなど、決定力も高い。柳沢敦の1年目は5ゴール、大迫勇也は3ゴールだった。
シーズン後の12月に行われたJリーグアウォーズでは、アントラーズでは柳沢、柴崎岳に次ぐベストヤングプレーヤー賞を外国人選手としてJリーグ史上で初めて受賞した。
アントラーズへの感謝を込めながら、カイオは晴れ舞台でこんなスピーチを残している。
「これは一歩前に踏み出しただけであって、これ以上のものを出せるように、献身的に忠実にこれからも頑張っていきたい」
存在がクローズアップされるごとに、カイオに対する「ある期待」も膨らんでいった。日本国籍を取得しての日本代表入り。アウォーズ後にはカイオ自身も、日本人になる夢があることを初めて明かしている。
「僕のなかでは常に日本人になりきってプレーしているので、日本人になれるのならば非常に嬉しい。日本は僕をサッカー選手として大きく成長させてくれた国なので」
■心に日本人のメンタリティーを宿す
サンパウロで生まれ育ち、名門サンパウロFCなどの下部組織でプレーしていたカイオが、千葉国際高校へ留学するために来日したのは2011年10月。17歳のときだった。
公の場では通訳を介するが、いまでは日本語でチームメイトとのコミュニケーションを取っている。日本帰化の要件のひとつ「引き続き5年以上日本に住所を有する」を来年秋には満たす。
何よりもJリーグ屈指の伝統と厳しさを誇る名門アントラーズで鍛えられてきた日々で、カイオは日本人のメンタリティーをその心に宿している。
たとえば今シーズンの先発回数。ファーストステージの13回が、指揮官がブラジル人のトニーニョ・セレーゾ監督から石井正忠監督に代わったセカンドステージは7回とほぼ半減している。
「確かに先発として出場できるほうが、選手としては嬉しい部分はあります。ただ、先発であろうとベンチスタートであろうと、チームのために全力を尽くすという自分の考え方はまったく変わりません」
決して腐ることなく、練習から常に全力を尽くしてきた。その結果が、リーグ戦ではチーム最多となる10ゴールをあげる源となっている。ここでもカイオはチームに感謝の思いを捧げる。
「練習は嘘をつかないという部分で、僕はしっかりと取り組んできた。ただ、試合へ向けた準備を積み重ねていくなかで、チームの結束、一体感といったものが、いろいろな部分でいい方向にはたらいている。それらが相乗効果となって、いい結果を生み出していると思う」
先発フル出場でチームの勝利に貢献したマリノス戦後。カイオはあらためて、日本代表への熱い想いを語っている。
「皆さんから聞かれるたびに、僕はぜひともそこ(日本代表)にたどり着きたいと常に言ってきた。ただ、どのような形で進めればいいのか、という詳細が僕にはわからない。そういった情報を教えてもらえれば非常に助かります。さまざまな情報が行き来しているので。プロサッカー選手になるチャンスを与えてくれた日本という国に対して恩返しができれば本当に嬉しいし、そのような形になればと思っている」
カイオが言う情報には、要件のひとつとして前掲した「住所」が民法第22条で定められた「生活の本拠」であり、その定義が曖昧となっていることも含まれているのだろう。
留学ビザでは日本在住と見なされない、という報道もあった。そうなれば今年は日本在住2年目となってしまうが、同じように留学先の渋谷幕張高校を卒業してプロになったトゥーリオは、J2の水戸ホーリーホックに在籍していたプロ3年目の2003年秋に日本人の田中マルクス闘莉王になっている。
日本国籍取得には他にもさまざまな条件があり、申請しても承認まで半年から1年近くの時間を要することもある。つまり、先のことにあれこれ頭を悩ませてもしょうがない。いま現在のカイオの気持ちは、この言葉に凝縮されている。
「アントラーズで結果を出し続けることが、そこ(日本代表)につながっていくと思うので」
■偉大な先輩に続きたい
セカンドステージも残すは1試合。首位サンフレッチェとの勝ち点差は「3」だが、得失点差で大きく離されている現状を考えれば、2位につけるアントラーズの逆転優勝はほぼ絶望的といっていい。
それでも、アントラーズに消化試合はあり得ないとカイオは力を込める。
「アントラーズは常に勝利を求められるチーム。僕だけではなくて、チーム全員が同じ気持ちで最終節へ向かっていく。サポーターの方々もマリノス戦以上にスタジアムへ足を運んで、応援と声援で僕たちの力になってほしい」
最終節の相手はDF闘莉王を擁する名古屋グランパス。日本への帰化から日本代表となり、ワールドカップの舞台にも立った偉大な先輩から奪う初ゴールを未来へつなげるために。カイオはカシマスタジアムで大暴れする自身の姿を思い描きながら、キックオフ前に再びジェルで黒髪を固める。
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