日刊鹿島アントラーズニュース

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2016年3月9日水曜日

◆好調鹿島で「汚れ役」を全て担う男。 小笠原満男の背中に若手は続けるか。(NumberWeb)


http://number.bunshun.jp/articles/-/825219

36歳の鹿島のバンディエラは、いまだにプレー、メンタル双方でチームの中心に立ち続けている。

 遡ること1週間前、鹿島アントラーズはいきなり大一番を迎えていた。開幕戦で、ガンバ大阪が相手で、しかも場所は青と黒が取り囲む吹田スタジアム。そんな難関を力強く突破した。

 スコアは1-0の辛勝ながら、内容では圧倒。昨季途中に就任した石井正忠監督が徹底する攻守の切り替えの早さ、それを活かした高い位置からの守備、2トップとサイドハーフ、サイドバックが連動して敵陣のペナルティーボックス脇に侵入する縦に速い攻撃も見られた。

 視界良好。昨季のナビスコカップ制覇の勢いを継続し、悲願のリーグ王座奪還へ最高の形で2016年シーズンのスタートを切った――ように、見えた。

小笠原はチームの「対応力」を疑問視していた。

 ところが、闘将の意見は違った。G大阪戦の翌日、小笠原満男はこう語っていた。

「今年はチャンスだとか、そういう慢心が一番良くない。去年のナビスコ優勝から良い流れできているし、今年はなんとなくいけるんじゃないかって考えがちだけど、そんなに甘いもんじゃないから。去年ちょっとチームが良かったからって、今年も良いわけじゃない。目の色を変えてやらないと。

 実際、プレシーズンマッチやニューイヤーカップを戦ってみて感じたのは、鹿島のサッカーがかなり研究されてきているということ。去年、石井さんが監督になって『前から、前から』という守備をやるようになったけど、俺らが前からプレッシャーをかけたら、単純にその裏へ蹴ってくるチームが増えてきた。そういう時にまだ対応しきれていないし、みんなクエスチョンになっている。『あれ? ボール取れねえぞ』となった時の対応力を磨かないと。自分たちがやろうとしていることがハマっているうちはいいんだけど、対応力はまだまだだよね」

 3月5日、第2節のサガン鳥栖戦は、鹿島の「対応力」をチェックするには、絶好の機会となった。鳥栖の強力な武器はボール奪取からの間髪容れぬ速攻と、豊田陽平の頭を目掛けて蹴り込むロングボールとクロス。相手のプレッシャーが強いと見るや、シンプルに豊田の高さに攻撃の活路を見出すチームだから、鹿島にとってはやっかいな相手になる。

鳥栖戦を観戦した内田篤人の小笠原評。

 案の定、鳥栖戦は難しい試合になった。

「今までの試合より、少し相手を押し込むところが少なかったと思います。あと、相手を押し込んだところでボールを動かすというところも、なかなか思ったとおりにはできなかったと思います」

 試合後に石井監督が語ったとおり、G大阪戦のように高い位置でボールを奪って相手を押し込む時間帯が短く、序盤と終盤にはクロスからゴールを脅かされる場面もあった。

 それでも鹿島は、2014年以来の開幕2連勝を飾った。31分に遠藤康のFKから金崎夢生が決めた先制ゴールを守り切った。「前から」の守備がハマらず、苦しんだチームを支えていたのは、やっぱりあの男だった。

 試合後、右膝の再検査のために一時帰国し、このゲームをスタンドから観戦していた鹿島OB・内田篤人(シャルケ)は、古巣の戦いぶりをこう語っている。

「満男さんが、みんなが嫌がる汚れ役を全部やっている。その上で、若い選手がおいしいところを持っていっている。もしも若い選手たちが汚れ役をできるようになれば、鹿島はもっと強くなる」

 例えば22分。敵陣右サイドでのパスワークが乱れてボールを失い、鳥栖の鎌田大地にボールが渡った瞬間、誰よりも早く動き出してファウルで食い止めたのが小笠原だった。

 例えば63分。敵陣左サイドでカイオがボールを失い、再び鎌田に縦パスが出された瞬間、コースとタイミングを読み切り、インターセプトしたのも小笠原だった。いずれも、鎌田に前を向かれればカウンターの大ピンチを迎えていたはずだ。

 これら以外にも、小笠原は豊田へ送られるクロスやロングボールがこぼれる位置を素早く察知し、セカンドボールを拾い続けた。自身がボールを持った際にはらしくないミスも散見されたが、「汚れ役」に徹した背番号40が、完封勝利の立役者だったのは間違いない。

献身性に対応力がついてくれば。

 小笠原が危惧するとおり、今季の鹿島にまだ「対応力」が足りないことは、鳥栖戦で明らかになった。相手の特徴に応じた戦術の使い分けや、リードした状況での試合の終わらせ方などは、リーグ3連覇を果たした'07~'09年のチームと比べると、まだまだ幼い印象だ。

 それでも彼らには、チームのためにハードワークし続ける献身性がある。2トップの金崎と赤崎秀平は、ピンチと見るや最終ラインまで下がってボールに食らいつくし、サイドハーフの遠藤と中村充孝がタッチライン際の上下動をサボることはない。

「鹿島ではそれをやらないことには試合に出られないし、自陣深くまで全力で下がって守備をすることも、今は楽しいから」(中村)

 あとはこの献身性をベースに、いかに相手と展開を読み解く「対応力」を磨き、状況に応じた「汚れ役」を全員がこなせるようになるか。鹿島が再び王座に座るための課題は、彼らが秘める伸びしろでもある。

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