日刊鹿島アントラーズニュース

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2016年4月9日土曜日

◆リオ五輪予選を経た植田直通の変化。「強い相手とやりたい」。更なる強敵を欲する飢餓感(フットボールチャンネル)


http://www.footballchannel.jp/2016/04/08/post146517/

島アントラーズのU‐23日本代表DF植田直通の存在感が際立っている。ファーストステージの5試合を終えた時点でリーグ最少の2失点に貢献している21歳は、ロンドン五輪の覇者・メキシコから白星をあげた3月下旬のポルトガル遠征で物足りなさを覚えながら、アントラーズにおける結果と自らをさらに成長させる強敵を求めてキックオフの笛を待ち続けている。(取材・文:藤江直人)

U-23日本代表の植田直通

ターニングポイントとなったリオ五輪最終予選

 鹿島アントラーズの最終ラインにそびえるU‐23日本代表DFの植田直通はいま、不思議な感覚のなかでプレーしている。

「どの試合に出ても、余裕をもって前が見えていると自分でも思っている」

 視覚を通して飛び込んでくる情報の、量も質も変わった。簡単に言えば、自身の目に映るピッチ上の光景が変わったと感じたのは今年2月に入ってからだった。

 ターニングポイントには当たりがある。今回ばかりは無理だろう、という芳しくない下馬評を鮮やかに覆し、リオデジャネイロ五輪切符に23歳以下のアジア王者の肩書を添えるまでの約1ヶ月間の日々だ。

 U‐23アジア選手権が開催されたカタールへ飛び立ったのが1月2日。文化も習慣も気候もまったく異なる地で、決勝までの6試合のうち、延長戦ひとつを含む5試合、計480分に先発フル出場を果たした。

 そのなかには自ら叩き込んだゴールを死守した北朝鮮代表とのグループリーグ初戦もあれば、後半アディショナルタイムの劇的なゴールで難敵イラク代表を下し、リオデジャネイロ行きを決めた準決勝もある。

 2点のビハインドを背負いながら決して下を向かず、チーム一丸となって逆転勝利をもぎ取った韓国代表との決勝を含めて、すべての瞬間が血肉になったと植田は振り返る。

「やっぱり最終予選。あの試合を戦ってきたことで、余裕ができたのかなと思います」

 コメントのなかに出てくる「余裕」を「自信」に置き換えても、意味は十分に通じるだろう。深夜の羽田空港に凱旋帰国した1月31日。肉体的にも精神的にもすり減っていた状態を心配したアントラーズのスタッフに、植田はこんな言葉を返している。

「オフはいりません。自分は若いので、休む必要はないと思っています」

 言葉通りに、一夜明けた2月1日にはアントラーズがキャンプを張っていた宮崎へ移動。2日にはロアッソ熊本とのニューイヤーカップに途中出場している。おそらくはこのときから、自身が抱く感覚の変化に気づいていたはずだ。

自信により開花した潜在能力

 カタールの地に刻んだ確固たる実績が拠りどころとなったのだろう。小学生時代に二刀流で挑んだテコンドー仕込みの強靭なフィジカルを含めて、186cm、77kgの身体のなかでくすぶっていた潜在能力が一気に解放され、熊本・大津高校3年時に10チームが獲得に動いた逸材を輝かせている。

 迎えたJ1での戦い。2歳年上の昌子源とセンターバックコンビを組んだ植田は、現時点で全5試合に先発フル出場。完封勝利が3試合を数えるなど、リーグ最少の2失点に封じる堅守の立役者となっている。

 昨シーズンのセカンドステージを振り返れば、植田はわずか2試合、151分間の出場にとどまっている。ライバルの元韓国代表・ファン・ソッコの負傷離脱もあるが、植田が自らの力で奪い取ったと言っていいだろう。

 実際、シーズン開幕を前に、植田はレギュラー再奪取へ並々ならぬ決意を表している。

「鹿島で試合に出られなければ、リオデジャネイロ五輪の代表に選ばれる可能性も低くなるので。年の初めにアジアのチャンピオンを取れたことはすごく大きなことだし、いいスタートが切れたと思っているけど、本当に大事なのはこれから。オリンピック本番はオーバーエイジもあるし、再び競争も始まると思うので、鹿島でスタメンを張ってまずはしっかりと結果を出したい」

 2014シーズンには20試合に出場して、ポジションを手中にしかけた植田の課題はメンタルにあった。日本人離れした身体能力の高さを誇る一方で、試合中に犯したミスを引きずる傾向が強かった。

 カタールにおける戦いでも、もちろんミスを犯している。たとえば後半は波状攻撃にさらされ続けた北朝鮮戦を、植田は「最終ラインをズルズルと下げてしまった」と振り返っている。

 もっとも、逆境で歯を食いしばって耐え抜き、コンビを組んだ岩波拓也(ヴィッセル神戸)とともにロングボールをはね返し続け、最後の一線だけは譲らなかったことがいわゆる成功体験になった。

プレッシャーをかけられても、味方の動きがよく見えている

鹿島で植田とセンターバックのコンビを組む昌子源

 アントラーズでの戦いに置き換えれば、リーグ最少失点を誇る「盾」を成す要因をこう説明する。

「僕とゲン君(昌子源)で、試合中も常に声を出し合っている。カバーとチャレンジをしっかりやっていこうと話し合っているので、少しずつ実践できていると思っている」

 だからといって、現状には到底満足できない。相手のミスか1点を先制しながら追いつかれ、そのままドローとなった2日の川崎フロンターレ戦後。試合中に相手選手と激突した左目の下を氷袋で冷やしながら、植田は笑みひとつ浮かべずに取材エリアに姿を現した。

「鹿島自体がナビスコカップで2連敗していて、いい流れではなかったので、この試合は非常に大事になるとわかっていた。上位に行くためには絶対に負けられないとみんなで話していたので、引き分けで終わったことはすごく悔しい。攻撃陣が1点を取ってくれたので、僕たちが失点しなければ勝てていたので」

 脳裏に刻まれているのは、前半36分の失点シーン。MF田坂祐介にノールックの体勢から浮き球のパスを通され、ディフェンスラインの裏に抜け出されたFW小林悠にループ気味のシュートを打たれる。

 シュートそのものは枠をとらえていなかったが、フォローしたMFエウシーニョにゴールを陥れられた。悔やまれるのはエウシーニョの動きでも、ましてや小林の動きでもないという。

「その(小林の)前の段階ですね。僕がもっと早く声を出していれば防げた失点でもあったので」

 心身両面で余裕が生まれ、視界が広がったからこそ、新たに見えている課題がある。たとえば、自身がボールをもった時点で、動き出している味方の前線の選手をより俯瞰的にとらえられるようになった。

「僕のところにかなりプレッシャーをかけられますけど、それでも味方の動きはすごくよく見えている。ロングボールは僕のよさでもあると思うので、だからこそもっと精度の高いボールを通していかないと」

手応えより物足りなさを覚えた欧州遠征

欧州遠征では相手に物足りなさを覚えた

 ハリルジャパンがワールドカップ・アジア2次予選を戦っている期間中に、U‐23日本代表はポルトガル遠征を実施。リオデジャネイロ五輪出場決定後で初めての対外試合に臨んだ。

 現地時間3月25日にはロンドン五輪で金メダルを獲得したU‐23メキシコ代表を2対1で下し、同28日にはクラブチームのスポルティングCPと1対1で引き分けた。

 植田は前者との試合で先発フル出場、後者では後半途中からピッチに立っている。4年前のチームとはメンバーもすべて異なるので一概に比較はできないが、それでも今夏の五輪にも出場する強豪メキシコとの90分間に、植田は手応えよりも物足りなさを覚えていた。

「今回のメキシコもスポルティングもかなり弱かったので、うーん、あまり…チーム全体としては攻撃のやり方や守備のやり方というのは徹底してできたと思いますけど、(個人的には)もっと強い相手とやりたい、という思いはあります」

 成長の速度をさらに加速させるためにも、もっともっと強い相手と対峙したい。大胆かつ不敵な言葉を発するようになった21歳の視線は、リオデジャネイロの先に待つロシアの地へも向けられている。

 右ひざの故障で代表を辞退したDF内田篤人(シャルケ)に代わり、植田はハビエル・アギーレ前監督のもとで臨んだ昨年1月のアジアカップのメンバーに抜擢されている。

 準々決勝で敗退するまでの4試合で出場機会が訪れなかったこともあり、植田自身も「あれは別物です」とA代表歴にはカウントしていない。それでも、目指すべき場所はしっかりと脳裏に刻んだ。

「ただ、A代表の先輩たちが真剣勝負を繰り広げている姿を間近で見ることができた点で、すごくいい経験にはなった。普段はどのような生活をしているのかもわかったし、オリンピックだけではなく、最終的にはやはりA代表を目指さなきゃいけない。すでに始まっているワールドカップ予選に自分が関わっていくためにも、今年はしっかりと鹿島で結果を残していかないといけない」

クラブでも高まり続ける存在感

 植田とハリルジャパンに招集された昌子を欠いて臨んだナビスコカップのグループリーグで、前年覇者のアントラーズはまさかの連敗スタートを喫している。2試合で6失点と守備が完全に崩壊した。

 2人の存在感の大きさを物語る一方で、そろって戦列に名前を連ねた6日の名古屋グランパス戦は3対1で快勝した。前半に直接FKで先制されるも踏ん張り、後半に3ゴールをあげる逆転劇を呼び込んだ。

「まだまだだな、という思いが一番強い。試合に出続けていけば、当然ですけど課題もたくさん出てくる。それを持ち帰り、日々の練習で直して、試合に臨むことの連続だと思っているので」

 名門アントラーズの最終ラインに仁王立ちしながら、植田は充実感と飢餓感を胸中に同居させている。後者を満たしてくれるのは、もしかすると開会式に先駆けて8月4日に幕を開ける4年に一度の祭典まで訪れないかもしれない。

 11日からは静岡県内でU‐23日本代表の短期合宿が行われ、もちろん植田も招集メンバーに名前を連ねている。そして、合宿終了から一夜明けた14日には、16ヶ国が覇権を争うリオデジャネイロ五輪の組み合わせ抽選会が聖地マラカナンスタジアムで行われる。

(取材・文:藤江直人)

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