日刊鹿島アントラーズニュース
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2016年6月15日水曜日
◆鹿島の“真髄”を象徴するあるプレー。 浦和の流れを覆したFWのプレス。(Number)
http://number.bunshun.jp/articles/-/825869
何でもないプレスのようで、鹿島アントラーズの真髄が見えた気がした。
6月11日に埼玉スタジアムで行われたJ1ファーストステージ第15節。浦和レッズのペースで進んだ前半が終わり、後半が始まった直後のことだ。
オフサイドによるリスタートで浦和のGK西川周作が近くの遠藤航にボールを預けた瞬間、鹿島の2トップ、金崎夢生と土居聖真が襲いかかる。遠藤が慌ててボールを戻し、西川がクリアしたが、そのボールを鹿島が拾ってマイボールにした。
ここからしばらく鹿島の攻撃が続く。遠藤康と山本脩斗が柏木陽介を挟み込んでミスパスを誘発し、土居が森脇良太からボールを奪い取って速攻を繰り出す。さらに、阿部勇樹のパスもインターセプトし、攻撃に転じていく。
セカンドボールを次々と拾って二次攻撃、三次攻撃を仕掛ける様子は、スタイルこそ違うが、前半20分ぐらいまでの浦和を見るようだった。
金崎による52分の先制ゴールは、こうした“鹿島の時間帯”の中で生まれた。
「何かを変える」という意志をプレーに反映。
「何かを変えないと、このままではヤバいと思っていました」
前半の出来をそう明かしたのは、センターバックの昌子源である。前半の終盤にはカイオ、遠藤康、金崎らが立て続けに決定機を迎え、鹿島が挽回したように見えたが、昌子はそう思ってはいなかった。
「とにかく前半45分はまるでハマらなくて、どうしたらいいんだっていう心境でした。何かアクションを起こして、少しずつでいいからリズムをうちに持ってこないとダメだと。それで例えば、本来ならすぐにブロックを作るところで、追ってみる。夢生くんと聖真にはしんどいかもしれないけど、一歩追ってほしいって伝えたし、みんなからも『もう一回整理しよう』っていう声も出ていました」
鹿島の2トップが見せた後半開始早々のプレスは、「何かを変えなければならない」という気持ちが起こさせたアクションであり、「前からボールを奪いに行くぞ」というチームとしての意思表示だったのだ。
前で取れないなら、水際で止める。
それにしても感心させられるのは、鹿島のゲーム運びだ。
昌子も言うように前半の鹿島は、とりわけ立ち上がりの20分間は、浦和に翻弄されていた。流動的に動く浦和の1トップ2シャドーを捕まえられず、面白いように縦パスを入れられ、自陣に押し込まれてしまう。
だが、それならそれで焦らずに我慢し、嵐をやり過ごせるのが鹿島の強みだ。右サイドバックの西大伍が言う。
「本当はもっと前から取りに行きたかったんですけどね。前半は本当に苦労させられたけど、最後のところでなんとか体に当てようと思っていました」
前でボールを奪えないのなら、最後のところだけはやらせない――。そうした想いはピッチで体現されていた。武藤雄樹のシュートを体を張ってブロックし、興梠慎三へのクロスを寸前のところでクリア。こうして決定機を許さずにいると、カウンターを繰り出して少しずつ反撃し、ハーフタイムを境に流れをひっくり返してしまった。
柴崎が感じた“得点の匂い”を浦和は見逃した。
先制点の場面、宇賀神友弥のミスパスをカイオが拾ったとき、柴崎岳は自陣のペナルティエリアにいた。そこから相手のペナルティエリアまで一気に駆け上がり、カイオからパスを受け、ファーサイドに走り込んだ金崎にアシストした。
タイミングを見計らって金崎にパスを通したセンスと技術は抜群だったが、そもそも“得点の匂い”を嗅ぎ取り、長距離を走っていなければ、このゴールは生まれていない。
このとき、“失点の匂い”を嗅ぎ取った浦和の選手たちが、どれだけいただろうか。少なくとも柴崎以上のスピードで自陣に戻ってくる選手はいなかった。
先制してから、浦和に流れが傾き始めたあとの石井正忠監督の交代策も的確だった。
66分にピッチに入った右サイドハーフの杉本太郎は、ファーストプレーで阿部に激しいタックルを見舞った。ファウルになってしまったが、果たすべき使命がしっかり整理されているようだった。74分にFWとして投入された鈴木優磨は、前線からのプレスを強めただけでなく、終了間際にPKまで獲得。87分に投入された永木亮太は、ボールに対する鋭いアプローチでクローザーとしての役目をまっとうした。
攻守に圧倒的な存在感を放った小笠原満男。
昌子が言う。
「優磨は普段、サイドハーフに入るし、カイオはだんだん守備ができなくなってくるから今日もサイドハーフに入れるのかと思ったら、FWに入れた。そうしたら優磨がPKを取って決めるんですから、監督、すげえなって」
最後に、小笠原満男にも触れないわけにはいかないだろう。浦和に2-0で完勝したこの試合のマンオブザマッチは彼だと思う。李忠成を何度も潰して浦和の攻撃を寸断し、ディフェンスラインに入ってクロスを跳ね返した。攻めては絶妙なフィードを前線に送り、ミドルシュートも放つ。PKにつながるクロスを入れたのも、背番号40だった。その運動量は、13歳下の柴崎に勝るとも劣らないものだった。
思えば、昨年10月にこのスタジアムで行なわれたナビスコカップ決勝でも、出色の出来でチームにタイトルをもたらしたのは小笠原だった。大一番になればなるほど存在感を高めるキャプテンの、なんと頼もしいことか。
2位の鹿島と3位の浦和の大一番は、鹿島の老獪さが随所で際立ったゲームだった。
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