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FIFAクラブワールドカップ ジャパン 2016 第2ラウンド
遠藤と金崎が決めた!鹿島がアフリカ王者を撃破、クラブワールドカップ準決勝進出!
世界での戦い、第二章も勝利の記憶で彩られた。FIFAクラブワールドカップ ジャパン 2016、第2ラウンド。アフリカ王者、マメロディ・サンダウンズと対戦した鹿島は、前半は相手の猛攻に防戦一方となったものの、曽ケ端が好守を連発してスコアレスでハーフタイムを迎える。そして後半、ボールポゼッション率を高めて主導権を握ると、63分に遠藤、そして88分に金崎がゴールネットを揺らした。2-0。完封勝利でベスト4進出を決めた。次は南米王者アトレティコ・ナシオナルとの激突だ。
鹿島は3日前の第1ラウンドで、ニュージーランドの雄、オークランド・シティーFCを2-1と逆転で破った。なかなかギアが上がらず、停滞感の漂う試合運びに終始した前半。そして後半立ち上がりに喫したセットプレーからの失点で、嫌な流れになりつつあった。しかし、途中出場の赤崎が自らの復活を強烈にアピールする同点弾を決め、終了間際には金崎がヘディングシュートで逆転へと導いた。2人のストライカーが結果を残し、底力を見せつけて第2ラウンドへと歩みを進めた。
あれから中2日。試合翌日のリカバリートレーニングを終えた選手たちは、横浜から大阪へと移動した。短期決戦のトーナメント、まずはコンディション調整が最優先事項となる。それと同時に、第1ラウンドで出場機会のなかった選手たちのアピールが競争意識を激化させ、チームを活性化させていた。石井監督は「チーム全員の力を合わせて戦う」と、総力戦で挑む姿勢を改めて強調。準備期間はわずかだが、チームは着々と集中力を高めていった。
指揮官はオークランド・シティーFC戦から先発メンバーを3名変更。起死回生の同点弾を挙げた赤崎を前線に起用し、2列目には中村を指名した。さらに最終ラインの一角には植田を配し、24回目の誕生日を迎えた昌子とのコンビで必勝を期す。赤崎とコンビを組むのは土居、2列目には中村とともに遠藤が入り、ボランチは永木と柴崎のペア。右サイドバックは西、左は山本と不動のラインナップだ。そして最後尾には曽ケ端が立ちはだかる。第1ラウンド同様、先発11名以外の残り12選手全員がベンチ入り。GKの櫛引と川俣、ブエノ、ファン ソッコ、伊東、ファブリシオ、三竿、杉本、金崎、平戸、小笠原、鈴木が控える。
市立吹田サッカースタジアムは穏やかな青空に包まれた。16時キックオフの第1試合では韓国の全北現代とメキシコのクラブ・アメリカが激突し、両チームのサポーターが熱狂的な応援を繰り広げた。世界大会ならではの独特な雰囲気がピッチを包む。そして、クラブ・アメリカが逆転勝利を収めた後、鹿島のチームバスがスタジアムに到着した。
厳しい冷え込みに見舞われた吹田の空に、アントラーズレッドの歌声が響き渡る。大阪まで駆け付けた背番号12は大きなチームコールで選手たちを出迎えた。そして、開催国王者としての誇りを見せつけるかのように、タオルマフラーが舞った。力強い後押しを背に受け、選手たちは19時30分にキックオフを迎えた。
立ち上がりから攻守の切り替えが速い試合となった。ボールを持つと一気にスピードを上げて深い位置まで攻め込んでくるマメロディ・サンダウンズに対し、鹿島は必死の守備で応戦。7分にはスペースに抜け出されてゴールライン際まで持ち込まれ、中央へ折り返される。ピンチとなったが、間一髪で植田がクリアした。
試合のペースに慣れ始めた鹿島は次第に敵陣でもボールをキープできるようになったが、シュートまで持ち込むことができない。マメロディ・サンダウンズの速い攻撃を受け、耐えしのぐ展開となった。13分には左サイドからスルーパスを通され、ペナルティーエリア左角から強烈なミドルシュートを打たれたものの、曽ケ端が右手で弾き出す。22分にはセットプレーからゴール前で混戦となってピンチを迎えたが、曽ケ端が落ち着いてキャッチした。
鹿島は25分、左サイドから細かいパスを連ねて柴崎がペナルティーエリア左側で前を向く。背番号10の選択はスルーパスだった。走り込んでいた赤崎がゴールライン際から中央へ折り返したものの、土居にはつながらず。相手の守備を崩すことには成功したが、シュートまで持ち込むことはできなかった。
25分以降、鹿島は敵陣でボールを回す時間を増やしていた。しかし、シュートチャンスを作り出せない。次第に流れはマメロディ・サンダウンズのものとなり、30分以降は猛攻を受ける形となった。1本の縦パスで鹿島陣内を独走されて強烈なシュートを打たれた場面では、曽ケ端が渾身のビッグセーブ。直後の31分には、鹿島の右サイドから上げられた低いクロスをファーサイドで合わせられたが、スライディングシュートは枠を越えた。
前半終了までの10分超は、肝を冷やす場面の連続となった。35分にはペナルティーエリア手前から強烈なミドルシュートで枠を捉えられたが、曽ケ端がまたもチームを救う。しっかりとコースを読み、的確な反応でシュートを弾き出した。その後もマメロディ・サンダウンズの猛攻を受けたが、百戦錬磨の守護神が鬼気迫るプレーで得点を許さない。何とか最後の一線を割らせず、必死になって耐え抜いた。前半はスコアレスで終了した。
ハーフタイム、大型スクリーンに映し出されたハイライトに、鹿島の攻撃シーンはほとんどなかった。スタジアムに足を運んだ2万超の観客のうち、前半の内容を踏まえて鹿島の勝利を予想した者はほとんどいなかったかもしれない。アントラーズレッドの背番号12を除いては——。大阪まで駆け付けたサポーターは「ゴール鹿島」チャントを送り、チームの奮起を促した。ハーフタイムに石井監督から戦術面の修正を施された選手たちは、得点を切望する背番号12とともに後半キックオフを迎えた。目指すは、アントラーズレッドの待つゴールだ。
鹿島は前半とは見違えるようなプレーを見せる。開始直後に中村が左サイド深くまで進入し、クロスを供給。相手DFに阻まれたとはいえ、積極的な突破は“変化”を予感させるもので、相手のプレースピードや間合いに慣れ、自信を持ってピッチに立った証左だった。仮にボールを奪われても、出足の速いプレスと激しいタックルでセカンドボールを確保。鮮やかなパスワークも増え始め、試合の主導権を握った。
53分、鹿島は波状攻撃を仕掛ける。左サイドから山本が上げたクロスを遠藤が頭で落としたボールは合わなかったが、こぼれ球を拾ってさらに攻め込む。最後は遠藤がペナルティーエリア右手前からシュート。相手GKの頭上を狙った一撃はわずかに枠を越えたが、得点の予感を漂わせた。56分にも左右に揺さぶった攻撃から土居が惜しいシュートを放ったが、相手DFにブロックされてしまった。
鹿島の攻勢は続く。60分には山本がゴールライン際までオーバーラップし、緩やかなクロスを送る。ファーサイドへ走り込んでいたのは西だった。得意のボレーは枠を捉えたが、ゴールライン上で相手DFにクリアされてしまった。両サイドバックがペナルティーエリア内まで進入する、鹿島らしい攻撃を披露した。
そして、歓喜の瞬間は63分に訪れた。赤崎が最終ラインの背後に飛び出し、柴崎からの正確なフィードに反応。飛び出してきた相手GKよりも先にボールを確保し、右サイド深くまで持ち込む。ファーサイドへ飛んだクロス、落下点に入った土居はヘディングで丁寧にゴール前へ。走り込んでいたのは遠藤だった。得意の左足を振り抜くと、強烈なボレーシュートが相手GKの手を弾いてゴールネットを揺らした。
ついにリードを奪った鹿島は、70分に永木が強烈なミドルシュートで枠を捉えるなど、追加点を狙っていく。時折訪れるピンチも、昌子や植田、曽ケ端を中心とした守備陣がしっかりと阻止。途中出場の金崎も前線で存在感を見せ、ポストプレーで起点となった。それぞれがしっかりと役割を果たし、1点リードのまま、試合は終盤に突入した。
石井監督は84分に鈴木を投入。貪欲にゴールを狙う若武者をピッチに送り出し、追加点への期待を託した。そして88分、その願いが結実した。右サイドのスペースでパスを受けた鈴木が、深い位置まで持ち込んでから中央へ折り返す。フリーで待っていた金崎は、トラップから左足シュートをゴール右隅へ届けてみせた。2-0。エースの3戦連続弾で、鹿島が勝利を決定付けた。
2-0での勝利を告げるホイッスルが鳴り響くと、アントラーズレッドの歓喜が爆発した。21時以降は鳴り物を使った応援を禁じられている吹田の地で、しっかりとルールを守って熱い応援を貫いた背番号12。その素晴らしいサポートが選手に届き、ともに戦った結果が準決勝への切符だ。
準決勝は14日、再び市立吹田サッカースタジアムでの戦いとなる。対峙する相手は南米王者のアトレティコ・ナシオナルだ。中2日で迎える決戦へ、今この瞬間から準備は始まっている。
【この試合のトピックス】
・クラブワールドカップ初出場でベスト4進出を決めた。
・金崎が公式戦3試合連続、今大会2試合連続のゴールを決めた。
・遠藤がクラブワールドカップ初ゴールを決めた。
・アフリカ大陸のクラブとの初対戦で、初勝利を収めた。
監督コメント
[ハーフタイム]
鹿島アントラーズ:石井 正忠
マメロディ・サンダウンズ:ピツォ モシマネ
[試合後]
鹿島アントラーズ:石井 正忠
前半は耐える場面が多かった。それはなぜかと言うと、アフリカ大陸のクラブとの対戦が今回が初めてだったから。スピードや身体能力への対応に戸惑った部分がある。自分たちがボールを敵陣で回せれば、攻撃の形は作れると考えていたが、途中でボールを奪われる時間が多くて劣勢になってしまった。後半は自分たちで敵陣でしっかりとボールを動かすという形をチーム全体でやってくれた。攻撃の形や敵陣でのプレーが増えて、得点のチャンスをうまく決めることができて、最後まで安定した形で相手にチャンスを与えなかったと思う。
Q.監督からハーフタイムに働きかけたことは?
A.相手陣内で慌ててボールを失っている場面が多かった。テンポ良くボールを回して敵陣で動かそうという話をした。当然、能力のある選手が揃っているので、しっかりとできれば落ち着いてボールを回せると思っていた。相手の守備はそこまで組織的ではなかったので、そこをうまく崩せればと考えていた。そこが後半になって良くなった。前半は自分たちでボールを失うことが多かった。
Q.次の相手はアトレティコ・ナシオナルだが、どう思うか?
A.まだ1試合しか観ていないが、南米のチームと対戦する時には技術や戦術はもちろん、試合に勝つための賢さがある場合が多い。試合の流れを見ないといけない。その流れの中で、自分たちの良さをどのように出すかを考えていきたい。
Q.前半は精神的にも受け身になったように思うが、メンタル面で変えようとしたことは?
A.(精神面については)何か言葉をかけたわけではなく、戦術的な話をした。(選手間では?)キャプテンの満男は「こういうところで、変な試合はできない」とミーティングで言っていた。それは試合に出ている選手の心に響いたと思う。
Q.相手のスピードは予想以上だったと思うが、後半はどのように抑えようとしたのか?相手がペースダウンをしてブレた面も見えたが、どう感じていたか?
A.相手がブレたというより、自分たちの守備の形がよりはっきりしたという印象だった。前からプレッシャーをかけてパスの出所をマークする形ができたと思う。前半、立ち上がりでの相手のプレースピードや間合いに慣れなかった部分があったが、後半は慣れたと思う。選手間の距離を大事にしようという話はハーフタイムにしていた。
マメロディ・サンダウンズ:ピツォ モシマネ
良い試合だった。試合には前半と後半があるということだ。結果については残念だ。選手たちの戦い方には不満はない。前半でしっかりと仕留めることができなかったのが残念だ。ただ、サッカーにはそういうこともある。決めるべき場面で決めることができないと、時間が経つにつれて状況が変わるのがサッカーだ。相手がこのような試合をすると思っていたが、期待したとおりにはいかなかった。我々はクラブワールドカップではルーキーだ。また戻ってきて、このようなレベルの国際大会で試合をしたい。
選手コメント
[試合後]
【金崎 夢生】
チームが勝ったことが一番。次も試合ができることが嬉しい。前半は耐える場面が多かったけど、全員が守備意識を高く持ってできた。それが後半につながったと思う。
【鈴木 優磨】
ハーフタイムに満男さんが「この相手にビビっていたらダメ。これからもっと強い相手とやるんだぞ」と言って、引き締まった。映像で見ると強かったので相手をリスペクトしすぎた。試合を見ていて、出場すればやれるという感覚があった。
【遠藤 康】
スコアレスだったので、焦らずに戦い抜けば大丈夫かなと思っていた。後半にチャンスは来るとは思っていて、良い時間帯に点を決めることができた。シュートは、ちょっと当たり損ないだった。前半が悪い戦いになったので、それは反省して、みんなで次の試合に向けてやっていきたい。
【昌子 源】
前半に歯が1本、折れた。ナオにも「急に元気がなくなった」と言われた。言い訳になるけど、風が当たるだけで痛くて集中できなかった。ハーフタイムにはみんなに「前半はごめん。後半は集中し直すから」と伝えた。後半は集中できていた。ソガさんに助けられた試合だった。
【植田 直通】
前半は自分たちのミスが多かったけど、それをカバーできたことが良かったと思う。焦りはなかったし、そういう時間帯はあると思っていた。アフリカの選手という感覚はあまりなかった。対戦したことのない相手なので、試合を進めながら判断した。
【赤崎 秀平】
前半は苦しかったけど、後半は耐えてうまくやれたと思う。前半の最後の方から相手が疲れていて、そのことをみんなが共有していた。前半はやられすぎていたので、後半はギアを上げないといけないと思っていた。途中から出た夢生くんや優磨が良いプレーをしてくれた。
【曽ケ端 準】
失点しなかったことが大きかった。チームとして失点しなかったことが後半につながった。前半はリズムが掴めなかったけど、我慢強くやった結果だと思う。
【永木 亮太】
前半に耐えて、無失点で抑えたことが良かった。後半はいけるという手応えがあった。より攻撃的に行こうと話していた。スペースも空いてきて、セカンドボールを拾えた。試合に勝てたことが一番。自分自身はイージーなミスもあったので、それは反省したい。試合は引き締まった内容で90分できたと思う。