日刊鹿島アントラーズニュース

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2016年12月2日金曜日

◆【THE REAL】遅咲きの28歳・永木亮太が築いた居場所…常勝軍団・鹿島アントラーズで放ついぶし銀の輝き(CYCLE)


http://cyclestyle.net/article/2016/11/29/43546.html

サッカー日本代表の永木亮太 参考画像(2016年11月11日)

数字がすべてを物語る。新天地・鹿島アントラーズでプレーした2016シーズン。ファーストステージとセカンドステージとで、ボランチの永木亮太はピッチのうえにおける存在感を大きく変化させている。

出場試合数こそ「14」と「15」でほぼ変わらないが、先発回数は「2」から「11」へ、出場時間は「374分」から「1064分」へと激増。時間の経過とともに、常勝軍団のなかに確固たる居場所を築きあげた。



アントラーズのダブルボランチは、キャプテンを務める37歳のベテラン・小笠原満男、入団6年目の今シーズンから背番号「10」を託された24歳の柴崎岳が、長くファーストチョイスだった。

しかし、セカンドステージ以降は小笠原と永木が組む機会が一気に増えた。その場合、柴崎は二列目にポジションを上げている。チーム内における序列の変化は、永木自身が実力で勝ち取ったものだ。

■アントラーズ・石井正宙監督が寄せる信頼

川崎フロンターレのホーム・等々力陸上競技場に乗り込んだ11月23日のJリーグチャンピオンシップ準決勝。ボランチで先発した永木は、後半途中からほとんど経験のない二列目の右サイドに回っている。

おりしも登里亨平が二列目に投入されたフロンターレの左サイドが、左サイドバック・車屋紳太郎とのコンビネーションを生かして、前へ出てくる圧力を強めた直後の配置転換だった。

「(永木)亮太の特徴として、前へかなり距離をとってプレッシャーをかけにいけるので。あとはボールを奪ってから、攻撃のところでさらに行けるという狙いで、亮太をサイドへ出しました」

登里と車屋にひとりで対峙し、そのうえでボールを前へと運ぶ力も発揮してほしい。永木の武器でもあるボール奪取力とスタミナへ、アントラーズの石井正宙監督が寄せている信頼の大きさが伝わってくる。

JFA・Jリーグ特別指定選手として登録された中央大学在学中の2010シーズンを含めて、6年間という時間を共有し、2013シーズンからはキャプテンを務めていた湘南ベルマーレから移ってきた。

アントラーズからオファーを受けるのは、2014シーズンのオフに続いて二度目だった。どこでプレーすれば自分が最も成長できるのかと自問自答を繰り返した結果、最初は丁寧に断りを入れている。

迎えた2015シーズン。ベルマーレは年間総合順位で8位と躍進し、悲願でもあったJ1残留を勝ち取った。チームの心臓として攻守両面で絶対的な存在感を放った永木としても、大きな達成感があったのだろう。

再び届いたアントラーズからのラブコールに、今度は応える決断をくだす。他にもJ1クラブからオファーを受け、なかにはアントラーズよりもより高い条件を提示してきたクラブもあった。

それでも、2年連続でアントラーズが高く評価してくれたことが嬉しかった。小笠原と柴崎という難攻不落の壁がそびえ立っているのは承知のうえで、J1で最多となる17ものタイトルを誇る名門の一員になった。

■小笠原満男から受けたカルチャーショック

後半からの途中出場が続いたファーストステージ。ベルマーレ時代から一転して、ピッチに立つ時間がなかなか増えない状況を、永木は「想定内のことです」と一笑に付し、むしろ充実感を漂わせていた。

「練習の段階からレベルがすごく高いですし、その意味では自分にはまだまだ足りないところがあると気づかされた。足元のテクニックが高い選手が大勢いるので、ボール回しひとつをとっても、いままで高い意識のもとでやれていなかったのかな、と思ったこともあります。

そういう点を逆に意識することで、自分の足元のテクニックもあがってくる。加えて、90分間を通して『勝つために何をすればいいのか』ということを、選手全員が明確に理解している。それが鹿島アントラーズというチームのスタイルになっているし、本当に勉強になっています」



何よりもアントラーズの伝統を語り継ぐ、小笠原の一挙手一投足を間近で見られる。実に14個ものタイトル獲得を経験してきたレジェンドの存在感は、28歳になった永木にカルチャーショックを与えている。

「(小笠原)満男さんは存在感だけでなく、ポジショニングが的確でコーチングもすごい。さまざまな経験を積んできた選手なのでインプットすることが本当に多いし、ボールを奪うだけでなく、マイボールにした後に前へ、前へと出ていく力もすごい。自分ももっと見習わないといけないですね」

■小笠原と組んで最強の盾になる

自分の武器をさらに磨き上げたところへ、自分自身をアントラーズのカラーに染めて、必ず石井監督のファーストチョイスになってみせる。目標を明確に描けたからこそ、永木に焦りはなかった。

「自分のベースは湘南ベルマーレで培われた。そして、鹿島アントラーズでしか得られないものもある。それはポゼッション力であり、ボランチとしてゲームの展開を読む力であり、勝者のメンタリティーだと思っている。特に勝者のメンタリティーは、試合にあまり出ていないにもかかわらず、ひしひしと感じられた。これから先はもっと大きくなってくるし、自分としてもすごく楽しみなんです」

ファーストステージ開幕直後に残していた言葉そのままに、永木はアントラーズに必要不可欠な存在となった。先のフロンターレ戦でも、小笠原と組んだボランチは中盤における最強の盾となった。

たとえば前半27分。縦パスを受けたエースのFW大久保嘉人に、まずは韓国代表経験をもつDFファン・ソッコが激しくプレッシャーをかけ、間髪入れずに小笠原と永木がはさみ込んだ。

最終的には小笠原のファウルをとられたが、フリーキックを与えても問題のないエリアだったことも踏まえての選択だった。激しく、執拗に。アントラーズの伝統が凝縮されたシーンでもあった。

「意識したことは、満男さんとふたりで前にいかないこと。バイタルエリアの真ん中でしっかりと構えて、ボールを奪う際にふたりでいく必要があるときには、迷うことなくいきました。前線から連動して守備をしてくれるので、ボランチとしても狙いやすい部分もある。途中から(中村)憲剛さんが入ってきて、大久保さんとポジションが頻繁に入れ替わりましたけど、それでも完璧に崩されたシーンはなかったので」

■ハリルホジッチ監督も期待をかける

シーズン中盤から終盤にかけて、充実感と躍動感を同居させるようになった永木を、ベルマーレ時代から注目していた日本代表のバヒド・ハリルホジッチ監督が放っておくはずがない。

故障者が出た関係で、急きょ追加招集された3月の代表候補合宿は序章にすぎなかった。9月に幕を開けたワールドカップ・アジア最終予選。10月シリーズで、永木は初めてA代表に名前を連ねた。

「長く追跡してきた選手だが、最近はいい存在感を出している。レポートが毎週あがってくるが、しっかりとボールを奪い取れるいい選手だ。手元に呼んで、グループのなかで見てみたい」

ハリルホジッチ監督の言葉からも、フランス語で「決闘」を意味する『デュエル』の体現者として、遅咲きの花を咲かせようとしている永木に大きな期待をかけていることが伝わってくる。

イラク、オーストラリア両代表と対峙した10月シリーズこそ出番はなかったが、11月シリーズで再びメンバー入り。迎えた11日のオマーン代表との国際親善試合で、永木は待望のデビューを果たした。

舞台はアントラーズのホーム・カシマスタジアム。ボランチで先発した永木は後半23分までプレーし、果敢なボール奪取と前への推進力から、FW大迫勇也(ケルン)が前半にあげた2ゴールに絡んだ。

「代表はそれほど遠い場所ではないと思っていますけど、だからといって代表のことばかり意識しても仕方がない。要はどれだけ所属クラブの力になれるか。ひたむきに頑張っている姿を見てもらえれば、必ずチャンスは巡ってくると思っています」



フロンターレの下部組織でプロを目指していた少年時代から、年代別の代表に無縁だった永木の口癖だ。それでも、地道に積み重ねてきた努力は嘘をつかない。28歳でのA代表デビューを、永木はこう振り返る。

「レベルがさらに高い選手たちとプレーするなかで、意識も変わりました。やっているサッカーは鹿島とは違うし、代表はより縦と横を意識しないといけませんけど、鹿島でも落とし込めるところは落とし込んでいます。ボールを奪う力や球際の部分を評価されて代表に呼ばれたと思っているので、そういう強さをもっている選手からさらに学んで、自分の特徴をさらに伸ばしていきたいですね」

■「3位の僕たちに失うものは何もありません」

今シーズンのアントラーズはファーストステージを制し、チャンピオンシップ出場権を獲得した。しかし、その後に心のエアポケットに陥ってしまったのか。セカンドステージは一転して不振に陥る。

開幕戦から黒星がかさみ、最後は4連敗を喫して11位に甘んじた。それでも一発勝負となるチャンピオンシップ準決勝へ向けて、全員がメンタルをしっかりと切り替えて、伝統の勝負強さを取り戻した。

後半5分にエース金崎夢生が決めたダイビングヘッドによる先制弾を、身上とする激しい守備で危なげなく守り切ったフロンターレ戦は、浦和レッズが待つ決勝へ向けて、永木に新鮮な驚きを与えてもいた。

「タイトルを獲っている選手が多いし、そういう選手が要所を締めてくれる。なので、タイトルを獲れるような雰囲気があるんです。浦和レッズは本当に強いチームで、セカンドステージでもほとんど負けていません。誰が出ても同じサッカーをしてくるけど、だからこそ準決勝のような気持ちのこもった試合をする。

年間総合順位で3位の僕たちにとっては、失うものは何もありませんからね。準決勝で久しぶりの勝利を味わえたことはすごくよかったし、第1戦を僕たちのホームで戦えることも含めて、この流れを自分たちのアドバンテージにしていきたいですね」

これを縁と呼ぶのかもしれない。アントラーズは2010年7月14日に永木がJリーグデビューを果たしたときの相手であり、場所も29日夜に決勝第1戦のキックオフを迎えるカシマスタジアムだった。

そして、ボランチを組む小笠原は、永木が長く憧れの存在としてそのプレーを追いかけてきた選手。万感の思いを胸の奥に秘めながら、自身にとってはプロ入り後で初のタイトルがかかる大一番に臨む。

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