日刊鹿島アントラーズニュース

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2017年2月2日木曜日

◆アントラーズの監督が教えてくれた、強い組織ができるまで(文春オンライン)




 昨シーズン、Jリーグと天皇杯を制し、他クラブを圧倒する「19」のタイトルを獲得した鹿島アントラーズ。クラブOBである石井正忠監督は4-4-2のシステムから日々のトレーニングまで伝統を重んじ、「強い鹿島」を復活させた。就任して1年半で、3つのタイトルを手にした彼が思う鹿島アントラーズの組織力とは――。



――クラブハウスのロッカーの入り口には、ジーコの教えをつづった『「献身」「尊重」「誠実」=ESPIRITO(ポルトガル語で「精神」の意味)』が掲げられています。石井監督はジーコからどのような影響を受けてきましたか?
「個人的には勝負に対する執着心が、ジーコイズムの根本にあると思っています。練習から一つひとつの勝負にこだわり、基本的なことを突き詰めてやる。たとえばプレッシング一つとっても、パス一つとってもプレーの質にとことんこだわるということですね」
――ジーコのプレーから学んだ、と。
「あの人は難しいプレーをやりません。基本的なことを判断良く、正確にやる。僕はそう学び取りました。先のCWC(クラブワールドカップ)でもレアルのモドリッチを見てもそうですよね。シンプルなプレーを心掛けつつ、判断がいい。凄く動く選手だし、技術もしっかりある。本当に素晴らしい選手だと感じましたね」

影響を受けた監督を一人挙げるなら……

――石井監督は02年からフィジカルコーチ、アシスタントコーチとしてブラジル人監督のもと働いてきました。影響を受けた監督を一人挙げるとすれば。
「オズワルド(・オリヴェイラ=07年から史上初の3連覇を達成)でしょうね。彼は選手にああしろ、こうしろとはあまり細かくは言わなかった。選手の自主性を引き出そうとする考え方は、僕とかなり近いんじゃないかなと思います。選手だけじゃなく、コーチ、スタッフに対しても同じような姿勢でしたし、僕もその一人として凄くやり甲斐を感じながらやらせてもらっていましたから」
――オリヴェイラは選手のモチベーションを高めるために、選手には内緒にして家族のメッセージつきビデオをミーティングで流したりしていましたよね。
「僕もそういう映像を一緒になってつくっていました。オズワルドも『何かいいアイデアはないか』って、常に選手のモチベーションを高めることを考えていた人でした」
――現在のコ―チは大岩剛、柳沢敦、羽田憲治、古川昌明と全員クラブOBですね。
「コーチのみんなにはそれぞれのキャラクターを出していってもらって、やり甲斐を感じてやってもらえればいいかなって思いますね」

すべての部署がタイトル獲得に向けて本気

――鹿島と言えば、組織の強さがあると思います。鈴木満強化部長いわく「編成は強化の仕事」。厚すぎず薄すぎずの編成を心掛けることによって若手にもチャンスが与えられるような枠組みにしています。また強化部門だけではなく、事業や運営も現場とのコミュニケーションが非常に多いように感じます。
「鹿島というクラブは現場だけじゃなく、すべての部署がタイトル獲得に向けて本気で取り組んでいます。たとえばCWCの登録メンバーは23人のみでした。でも強化は登録外の選手も全員、大会に連れていくという判断をしてくれました。これは全員で勝つんだぞというメッセージ。クラブにはとても感謝しています」
――強いチームをつくるには何が大切だと思いますか?
「ウチのクラブで言うならば基本的な部分を突き詰めることプラス、闘う姿勢、勝負をあきらめないことを90分やり続けることができるかどうかじゃないですかね。それも全員でやらなければならないということ。組織としては、クラブが一体となってタイトルを本気で目指すということだと思います」
――座右の銘じゃないですけど、好きな言葉はあります?
「アントラーズのスポンサーであるイエローハットの創業者・鍵山秀三郎さんのメルマガ『鍵山秀三郎一日一話』のタイトルにもなっている『ひとつ拾えば、ひとつだけきれいになる』という言葉とか、『凡事徹底』でしょうか。当たり前のことをコツコツやり続けることが大切なんだとあらためて感じています」
――これまで石井監督が語っていることとうまくリンクしている言葉ですね。
「そうだと思います。基本を毎日、積み重ねていくことが大切ですから」



バルセロナの守備の個人戦術が僕は好きですね

――失礼ですが、石井監督には真面目というイメージを持ってしまいます。息抜きできる時間などありますか?
「自宅で海外のサッカーを観るときが、いい息抜きですね。勉強もかねて」
――サッカーを観るのも仕事じゃないですか!
「いやいや息抜きです、本当に(笑)。小学3年生の娘が寝る9時ぐらいに僕も寝て、午前3時に起きて欧州の試合を観るのが好きなんです。だってテレビを独占できますし、じっくり大好きなサッカーを誰にも邪魔されずに観ることができるわけですから」
――どこのチームを観ることが多いですか。
「好きなのはバルセロナです。パスワークもいいですけど、ボールを奪いに行く守備の個人戦術が僕は好きですね。勉強になります」
――では最後に。今シーズン、チームとして個人としてどのような目標を立てていますか?
「どのタイトルも取りに行くのが鹿島ですが、まだ取ってないACL(AFCチャンピオンズリーグ)は取りたいですね。アジア王者として、またCWCに出たいです。CWCは最高の舞台でしたから、絶対にまた出たい。個人的には、監督という魅力ある仕事を長くやっていくためにも経験値を上げていければいいかなと思います」



いしい・まさただ 1967年生まれ。千葉県出身。選手としてはJ1通算95試合出場3得点。93年のJリーグ開幕年にはボランチとして活躍し、ファーストステージ優勝に貢献。現役引退後、アントラーズのコーチに就任し、2015年7月より現職

写真=杉山拓也/文藝春秋

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