ACLグループステージ 第4節
鹿島、ホームで勝ち点1。シドニーFCと引き分け、グループ首位はキープ。
16日間での5連戦、第4章。総力戦で過密日程を突き進む鹿島が、力強く再出発を果たした。失意の今季初黒星から3日後に迎えたAFCチャンピオンズリーグ・グループステージ第4節。シドニーFCをカシマスタジアムに迎え撃つと、27分に金崎のヘディングシュートで先制したものの、70分に同点に追い付かれ、1-1の引き分けに終わった。
3日前、鹿島は聖地で不甲斐ない敗戦を喫した。J1第3節の広島戦、スコアは0-1。ミスから先制点を許すと、同点の絶好機だったPKも阻まれた。さらに、輝きを放っていた安西が交代を強いられるアクシデントも。のちに全治1ヶ月と診断される負傷で、戦線離脱となってしまった。苦々しき記憶とともに、今季初黒星を喫した。大岩監督が就任した昨年5月末以来、カシマで初めて味わう屈辱でもあった。
3試合連続での先発出場でありながら、切れ味鋭い突破を繰り返して推進力となった土居は、「相手GKを勢いに乗せてしまったかもしれない。それも含めて、自分たちの実力不足」と、決定機を活かせずに無得点に終わった90分を振り返っている。途中出場でオーバーラップに突破口を見出した伊東は「もっとバリエーションを増やさないといけない」と、自らの課題を口にしていた。
反省と悔しさ、そして奮起への決意を胸に、選手たちは次なる戦いへと向かう。下を向く時間はない。再びカシマスタジアムで迎える90分は、わずか3日後に待ち受けている。チームは翌11日、リカバリートレーニングを実施。そして12日には、クラブハウスで前日公式練習を行った。シドニーFCとのリターンマッチで、勝ち点3を掴み取るために――。会見に臨んだ永木は「しっかりと意思統一をして戦いたい」と決意を述べた。過密日程に身を置く中、負傷者が続出する苦境を打開するために、まさに総力戦で臨む90分だ。
「所属する選手全員がコンセプトを理解していると評価している」。前日会見でチーム全体への信頼を語っていた指揮官は、広島戦から8名の先発変更を断行した。ゴールマウスに曽ケ端、最終ラインには伊東と犬飼、そして公式戦初先発の小田が指名された。ボランチはレオ シルバと永木のペアで、2列目には金森が入る。そして前線は鈴木が先発した。その他、センターバックで犬飼とコンビを組むのは昌子、攻撃陣には中村と金崎が並ぶ。6日前、シドニーで激闘を演じた先発メンバーからは3名が入れ替わる形となった。そしてベンチにはGKのクォン スンテ、植田、山本、土居、三竿健斗、ペドロ ジュニオール、ルーキーの山口が座る。
朝から青空に恵まれた鹿嶋は、春の訪れを感じさせる穏やかな一日となった。夕暮れとともに気温が下がり、そしてキックオフの時が近づいてくる。平日のナイトゲームだが、アントラーズレッドの背番号12が続々とカシマスタジアムへ足を運んだ。負傷者続出のチームを鼓舞するために、ともに戦うサポーターが情熱を降り注いでいく。2年目にして初先発のチャンスを掴んだ小田を後押しする声もまた、19歳の若武者に勇気と活力を注入していた。
19時、再出発への90分が始まった。アントラーズレッドのスタンドへ向かって攻める鹿島は開始2分、レオがペナルティーエリア左角から右足を振り抜き、ファーストシュート。先制点への意欲を示してみせる。続く4分にはFKのこぼれ球を拾って右サイドへ展開し、永木がゴールライン際から低いクロスを供給。ペナルティーエリア内の金森がトラップから左足で狙ったが、相手DFにブロックされてしまった。チャンスを活かせなかったが、開始早々からシドニーFCの守備網を突破してゴールに迫ってみせた。
10分経過後はなかなか決定機を作るには至らなかったものの、13分には犬飼のパスカットからカウンターに転じ、最後は金崎が強烈なミドルシュート。背番号10はセンターサークル付近まで位置を下げてパスの中継点となる場面が多かったものの、要所ではしっかりとフィニッシュワークに絡んでいた。PK失敗から3日、責任感を胸にピッチに立ったエースは、勝利だけを目指して走り続けていた。
先制点を狙う鹿島は21分に鈴木、23分には金崎が強烈なミドルシュートを放ってシドニーFCを脅かす。時折、自陣ペナルティーエリアまで攻め込まれる場面もあったが、公式戦では初めてコンビを組んだ犬飼と昌子が安定した守備を披露。冷静なカバーリングと粘り強いボディコンタクトで相手に自由を与えなかった。
そして27分、聖地の夜に歓喜が響き渡った。左CKをショートコーナーで始めると、小田がペナルティーエリア左手前から右足でクロス。相手DFのクリアがゴール手前へ浮き上がったところを、鹿島のエースは逃さなかった。至近距離からのヘディングシュートが、ゴールネットとアントラーズレッドのスタンドを揺らした。1-0。前節同様、セットプレーから均衡を破ってみせた。
リードを奪った鹿島は30分経過後、シドニーFCに押し込まれる場面も増えていった。それでも永木がミドルゾーンで気迫に満ちたプレスを敢行し、伊東と小田の両サイドバックも粘り強い守備で応戦。広島戦から3選手が入れ替わったDFラインを曽ケ端が最後尾から的確な指示で統率し、チームに秩序をもたらしていた。1-0。リードを保ったまま、ハーフタイムを迎えた。
背番号12のサポートを背に受け、追加点を目指す45分が始まった。鹿島は51分、レオのボール奪取からカウンターに転じ、鈴木がペナルティーエリア左側に入ってシュート。相手DFにブロックされたが、前半同様に立ち上がりから積極的にゴールを目指した。58分には昌子が相手FWとの競り合いで額から出血するアクシデントもあったが、背番号3はテーピングを巻いてピッチへ帰還。戦いを続ける。
互いに決定機を作れないまま、65分が経過。次第にオープンな展開へ推移していく中で、次のスコアはビジターチームのものだった。70分、鹿島は右サイドのスペースを突かれ、緩やかな軌道のクロスからマシュー サイモンにヘディングシュートを決められてしまった。
同点に追い付かれ、残りは20分だ。ホームで勝利を目指す鹿島は、74分に土居を投入。攻撃陣の活性化を試みる。背番号8は登場直後の75分、小田とのワンツーでペナルティーエリア内へ突破したものの、シュートまでは持ち込めなかった。敵陣でボールを動かしていても、なかなか決定機を作れない鹿島。苦しい展開となったが、選手たちは必死にゴールを目指した。
大岩監督は82分に山本、そして85分には山口をピッチへ送り出す。両サイドにフレッシュな選手を配して勝ち越しを狙った。しかし、最後まで歓喜の時は訪れなかった。アディショナルタイム3分、レオのミドルシュートが枠の右へ逸れ、タイムアップ。1-1。勝ち点1を得る結果に終わった。
11日で4試合目。過酷な日程を突き進む中、鹿島は今日も勝利を収めることができなかった。だが、初先発の小田が果敢な突破を繰り出し、先制点につながるクロスを上げたこと、そしてルーキーの山口が途中出場ながら2本のシュートを放って可能性を示してみせたことは明るい材料と言えるはずだ。グループステージは4試合を終了し、鹿島は依然として首位。残り2戦にラウンド16進出を懸ける。
そして次戦は5日後、J1第4節の鳥栖戦だ。16日間での5連戦、最終章。4日間の準備期間を経て、アウェイで難敵との対峙に挑む。しばしの充電期間を設けて心身のリフレッシュを図った後、15日からトレーニングを再開。中断前最後の90分へ、チーム一丸で準備を進めていく。
【この試合のトピックス】
・シドニーFCとの対戦は通算4回目で、3勝1分となった。
・金崎が今大会3得点目を記録した。
・加入2年目の小田が公式戦初先発、ACL初出場を果たした。
・犬飼が先発出場し、鹿島の一員として初めてカシマのピッチに立った。
・ルーキーの山口が途中出場。鹿島の一員として初めてカシマのピッチに立った。
【動画】試合後会見:永木 亮太&大岩監督
監督コメント
[ハーフタイム]
鹿島アントラーズ:大岩 剛
シドニーFC:グラハム アーノルド
[試合後]
鹿島アントラーズ:大岩 剛
引き分けに終わってしまい、結果としては少し残念だ。日程のことはあまり言いたくないが、このなかで選手たちはしっかりプレーしてくれたと思う。
Q. 先制する理想的な展開だったが、アントラーズらしさが見せられなかった原因は?
A. 自分たちがボールを持っているなかで、どこでスイッチを入れるのか、どこでスピードアップするのか、相手のウィークポイントを突いていくタイミングなど、ゲームのなかで共通認識が持てなかったのではないか。ロストが多ければ、当然カウンターを受ける回数が増える。特に後半はゲームをコントロールすることができなかった。
Q. 先発メンバーを入れ替え、若手を起用するなかで決勝トーナメント進出に前進した。この結果をどう評価するか?
A. 確かに小田をはじめ、なかなか試合に出る機会がない選手たちで、最初はゲームに入れていない場面もあった。しかし、時間を追うごとにしっかりゲームに入ってくれた。ホームであり、たくさんのサポーターが来てくれたので勝利で終えたかった。残りの2試合、しっかり相手を分析して臨みたい。選手たちには「しっかり原点に戻ろう」と話した。
シドニーFC:グラハム アーノルド
我々はよいパフォーマンスを見せられたと思う。またしてもセットプレーから失点してしまったことはとても残念だ。先週の試合から、3つのコーナーキックで得点を決められてしまった。流れから失点していないので、そこは残念だ。我々のほうが勝利に値するパフォーマンスを見せたのではないかと思う。ここから前進するのみだ。
選手コメント
[試合後]
【小田 逸稀】
アントラーズは勝たないといけないチーム。試合に出場すれば、2年目であろうが関係なく勝利を求められる。サポーターの方も納得してくれないと思うので、悔しさの方が強い。連戦でまたチャンスはあると思うので、次は自分が試合に出て勝てるようにしたい。
【犬飼 智也】
シドニーFCはアウェイで対戦した時よりもやることがはっきりしていた印象で、90分を通して、高いテンションでプレーしていた。アントラーズに入って初めてカシマでプレーしたけど、やっぱりいいスタジアムだと思った。サポーターの皆さんも熱いし、だからこそ勝って喜びたかった。
【永木 亮太】
本当に悔しい試合。やっている自分たちが一番わかっていることだけど、力を出し切れば勝てる相手だし、勝たなければいけない試合だった。悔しいという気持ちしかない。
【山口 一真】
相手DFが疲れていたので、まずはしっかりと守備から入ったうえで仕掛けて行けという指示だった。チャンスはあったけど、決め切れなかったことが自分の課題だと思う。
【昌子 源】
相手は前節のリベンジということで強く来ると思っていた。いい形で1点を取ってから、2点目を取れないことが今のうちの課題。もったいない試合になってしまった。
【伊東 幸敏】
チャンスを作るだけでは意味がない。結果につなげることができず、悔いが残っている。ゴール前の選手と合わなかったり、精度の問題だったり、そういうことが改善できていない。突き詰めていかないといけない。
【山本 脩斗】
8番の選手がタイミングよく上がってきていたので、カバーする意識を持っていた。守備から入って、チャンスがあれば攻撃参加しようと思っていた。
AFCチャンピオンズリーグ2018 グループステージ 第4節