日刊鹿島アントラーズニュース

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2018年11月16日金曜日

◆三竿健斗よ、世界へ羽ばたけ。国内最高の奪取力と危機察知能力、日本代表で長谷部誠の後継者に(フットボールチャンネル)






日本代表はロシアワールドカップを終えてから、ベテランたちがいなくなった大きな穴を埋めきれずにいる。長谷部誠をはじめとした偉大な先達たちが残したものは大きいが、去ったことで失うものも大きかった。とはいえ、今後は若い力でより大きな目標に挑む。中盤では22歳の三竿健斗が、新世代の旗手となるかもしれない。(取材・文:舩木渉)


ACL制覇。イランでの貴重な経験


 このところ、本田圭佑や長谷部誠といったロシアワールドカップを最後に日本代表から去った者たちの「ロス」が叫ばれている。彼らの役割を引き継ぐのは誰なのか。2列目のアタッカー陣の充実には目を見張るものがあるものの、他のポジションが必ずしも安泰とは言い切れない。

 一方で、次世代を担う選手たちが国際舞台で貴重な経験を数多く積んで成長速度を上げている。U-19日本代表はAFC U-19選手権で開催地インドネシアの6万人のサポーターに囲まれた完全アウェイの一戦を制し、来年のU-20ワールドカップへ進む権利を掴み取った。

 U-21日本代表も同じくインドネシアで、負けはしたもののソン・フンミンやファン・ウィジョらA代表クラスのオーバーエイジ選手を多数擁するU-23韓国代表と大熱戦を演じた。アジア大会の銀メダルは悔しさこそあれ、誇るべき勲章になった。

 そしてAFCチャンピオンズリーグでも、鹿島アントラーズの面々が頂点に立った。日本勢としては昨年の浦和レッズに続く2年連続の快挙。決勝2ndレグでは10万人にのぼるペルセポリスのサポーターが、イランの首都テヘランの巨大なアザディ・スタジアムを埋め尽くし、鹿島の選手たちを威圧する。

 鹿島がボールを持てば、8年前の南アフリカワールドカップで大流行した「ブブゼラ」らしき、けたたましいホーンの音がスタンドのいたるところから威嚇してくる。そんな環境でペルセポリスの猛攻に耐えきり、“常勝軍団”はクラブ史上20個目となるタイトルを獲得した。

 アザディ・スタジアムでピッチに立っていた鹿島のMF三竿健斗も「あの雰囲気はなかなかない」と振り返る。「鹿島が獲ったことのないタイトルなので、それを獲って歴史に名を残すというのをずっと考えていた」という22歳は、これ以上ないほど貴重な経験を積むことができた。

「ゴールキックになった瞬間、ボールがすぐ出て、置いて、蹴るというのはJリーグではまずない。(ゴールキックに)なった瞬間にスプリントして戻ることもないので、なかなかない経験でしたけど、海外とか特にスピード感とか、ああいう感じだと思うので、経験できてよかったと思います」

パナマ戦で見せたいぶし銀の働き

 ペルセポリスのホームということもあり、鹿島の選手が放ったシュートがラインの外へ消えると、その瞬間ボールボーイからGKアリレザ・ベイランバンドへ新しいボールが渡される。そしてロシアワールドカップでも活躍した守護神は間髪入れず、距離の出るゴールキックを鹿島陣内に蹴り込む。

 ボールがラインを割ってからものの5秒で自陣に相手選手がなだれ込んでくる。ペルセポリスは序盤から徹底してカウンターを狙い、展開が早すぎてお互いに攻守の切り替えが間に合わないような瞬間もある。それでも鹿島にとってあれほどの過酷な完全アウェイの中で失点するのは危険すぎた。

 攻守を司る中盤の選手として、三竿の頭は整理されていた。守備を怠らず、バランスを保ちながら「奪う回数もあまり多くなかった」とは言うものの、常にリスクに対して目を光らせていた。

 三竿は鹿島に加入して3年目。日本代表では国内組のみで臨んだ2017年のEAFF E-1サッカー選手権(E-1)で初招集&初キャップを刻んだ。Jリーグでは東京ヴェルディ時代のJ2も含め、まもなく通算100試合出場を達成する。

 10月のパナマ戦では日本代表初先発を飾り、堂々たるプレーでその場にふさわしい実力を備えていることを証明した。ビルドアップ時にはセンターバック2人の間に落ちてボールを引き出し、青山敏弘とともにチーム全体を前進させていく。守備時には常に危険な場所をケアしつつ、積極的なプレッシングで相手の攻撃の芽を摘んだ。

 青山が最終ラインの中央まで下がってプレーしている際は、起点となる相手ボランチにプレスをかける三竿がかわされればバイタルエリアに広大なスペースを与えてしまうリスクもあったが、的確な判断でピンチを最小限に抑える、地味ながら大きな役割を遂行していた。

 これがまさに三竿の真骨頂。基本的にはダブルボランチの一角で相方とバランスをとりながら、常に最も危険なところへの監視を怠らず、ボールを奪えるとみるや一瞬の寄せで体を入れて奪いきる。味方がプレスをかけてポジションを外れた後のカバーリングにも気を利かせ、1対1の状況になればゴールへの最短経路を確実に消し、相手のプレーの選択肢を削る。

 そしてボールを奪えば、対角線への正確なサイドチェンジや、自らの飛び出しでゴールにも関わる。今季はJ1ですでに4アシストを記録し、以前よりも攻撃面で存在感を出せるようになった。

今こそ、日本の外へ羽ばたく時


 日本では珍しく「ファウルで潰す」ことのできる魅力もある。相手にカウンターのチャンスを与えた時、日本では多くの場合チーム全体で下がりながら、時間をかけさせることが重要とされる。危険な状態でボールを失った瞬間に、相手陣内でファウルで止めてしまうような選手は少ない。

 だが、三竿は危険だと判断すれば、即座にファウルでプレーを止めさせる「勇気」がある。“鹿島らしさ”と言ってしまえばそれまでなのかもしれないが、勝つために最善の選択をするという当たり前のことを、22歳の若さでもしっかりこなす。これが国内最高の守備的MFと評価される所以だろう。

 だからこそ、三竿にはできるだけ早く海外へ飛び出してもらいたい。長谷部は身長180cmと日本人MFとしては長身の部類に入り、今では所属クラブでセンターバックも担う。身長181cmと体格に恵まれた三竿にも偉大な先輩とほぼ同等の身体的ポテンシャルがあって、成長への意欲に溢れる。

 さらに幼少期をカナダで過ごしていたことによって、海外に挑戦するうえでの前提条件となる英語でのコミュニケーションも苦にしない。明るい性格で新しい環境に飛び込むことも苦手ではないはずだ。

 サッカーで肝になるセンターラインを固め、日本代表のこの先の戦いをより安定させていくには、三竿の成長が不可欠。かつて長谷部は24歳になる直前に浦和レッズからドイツ1部のヴォルフスブルクへと旅立ち、サムライブルーのキャプテンを務めるまでになった。

 三竿は4年後のカタールワールドカップを26歳で迎える。長谷部も初めてのワールドカップ出場は2010年の南アフリカ大会。初戦の直前に岡田武史監督から日本代表のキャプテンマークを託された時、彼は26歳だった。やはり世界を相手により高いレベルで戦うには、できるだけ早い時期から欧州の第一線の競争力を体感しておくに越したことはない。

 現時点で三竿の日本代表での序列はダブルボランチの控えにすぎない。だが、11月のベネズエラ戦とキルギス戦、そして来年1月に迎えるアジアカップで自らの実力とポテンシャルを世に示せれば、将来への可能性は大きく広がるだろう。

(取材・文:舩木渉)

【了】






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