日刊鹿島アントラーズニュース

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2020年1月5日日曜日

◆常勝の宿命を背負った2年半――酸いも甘いも経験した大岩剛監督が鹿島に残したレガシー(THE DIGEST)






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 有終の美を飾ることはできなかった。

 2020年の元日に“新国立競技場”で行なわれた天皇杯決勝は、今季限りで退任を公表していた大岩剛監督にとって鹿島でのラストゲーム。もちろん、勝って終わりたかった。だが、思い描くような結果は得られなかった。

 対するはイニエスタ、ビジャ、ポドルスキといった世界的なスター選手を擁し、急速に台頭しつつある神戸。2019年11月19日のベネズエラ戦で日本代表デビューを果たし、知名度を上げた古橋亨梧や鹿島キラーの呼び声高き藤本憲明もいて、難しい試合になることは予想された。

 常勝を掲げる鹿島の指揮官たるもの、相手がどこであろうと、決勝まできたら“優勝”の二文字しか見えていなかった。一戦必勝。それが鹿島に息づく哲学にほかならない。

 だが、前半の2失点が重くのしかかり(オウンゴールと、またも藤本にしてやられた)、令和初となる天皇杯覇者の栄誉に浴することはできなかった。

 大岩監督は「非常に残念な結果」と悔しさをにじませながらも「選手たちが最後までしっかり戦ってくれたことを評価しているし、感謝している」と言葉をつないだ。

 試合後の記者会見では、まず「ゴールを奪えなかった要因」について問われた。

「シーズンを通して、(この試合に限らず)リーグ戦もそうだけど、得点が取れなくて苦労した。今日も相手がしっかり守備を固めてきたなかで、サイドに起点を作って攻撃を仕掛けることを徹底したが……」

 ここまで話し終えると、大岩監督は少しだけ言い淀んだ。来季の指揮を執るわけではない自分がチームの課題や反省点について言及することが果たして適当なのか、と逡巡しているようでもあった。「ふだんなら、こういう結果を踏まえ、(次に向かって)改善していく意識でいるけれど、今は冷静に分析できないというか……」と、複雑な胸中をのぞかせた。

 負けた事実をすんなりと受け入れることができなかったのかもしれない。勝つために、もう少し違うやり方があったのではないか。そう自問しているようでもあった。

 タイトルを義務付けられる鹿島の監督に就任したのは、2017年5月31日のことだった。シーズン序盤からチーム状態がなかなか上向かず、また、ACLラウンド16での敗退も重なり、石井正忠監督との契約が解除された。その後任として大岩コーチが内部昇格したのだった。

「シーズン途中での監督就任なので、周りから“大変じゃないか”といわれるけれど、チームが難しいときにこういう話をいただいて、逆に光栄に感じている。プレッシャーはあるけれど、覚悟と責任をもって取り組んでいきたい」と、腹をくくっていた。

 初采配は就任からわずか4日後の広島戦(Jリーグ第14節)だった。アウェーに乗り込んでの一戦を3-1で勝利し、好スタートをきる。そこから5連勝とチームを勢いづかせ、ひとつの引き分けを挟んで、さらに3連勝。およそ2か月にわたって“負け知らず”を演じた。

 鹿島に移籍してきて2年目の若手ボランチ、三竿健斗(当時21歳)をスタメンに定着させるなど、チーム改革に着手した。

 攻守にアグレッシブなサッカーを展開する新生・鹿島は第21節の時点で、首位に立つと、その勢いのままに快走し続けた。ところが、ラスト2試合でまさかの失速。ともにスコアレスドローで終え、追いかけてくる川崎に最後の最後に勝ち点72で並ばれ、得失点差で首位を明け渡す結果となった。

「チームを優勝に導けなかったのは(監督としての)自分の経験不足」
 最終決戦の地はテヘラン・アザディスタジアム。観衆は10万人ともいわれた完全アウェーの雰囲気のなか、0-0で引き分け、クラブにとって長年の悲願だったアジア王者に上り詰めた。

「鹿島はタイトルが義務付けられたチームだけれど、そこにばかり意識がいくと何だか漠然としてしまうので、まずは今日の練習だったり、目の前の試合だったり、そこに集中することが大事。自分たちがやるべきことは何か。一日一日、1試合1試合の積み重ね。その先にタイトルがある」

 これが大岩監督の揺るぎない持論だ。

 ACL初制覇から18日後に朗報が舞い込む。アジアサッカー連盟の年間最優秀監督賞に選出されたのだ。日本人監督として8人目の栄誉である(男女両部門合わせて)。

 波乱万丈――。

 大岩監督の鹿島における2年7か月の監督人生を一言で表すなら、この言葉がピタリとくるのではないか。

「いいときもあれば、つらいときもあった。試合に勝てないときはファンやサポーターの皆さんからたくさんの批判も受けたけれど、それらすべてが自分の糧になっている。非常に充実していた」

 今後については「まだどうなるかわからない」としながらも「これまでの経験を生かせるような仕事ができたら」と明言。その真意とはやはり「監督」になるのだろう。

 そう遠くない未来に、どこかのJクラブから“大岩監督、就任”のニュースが届くのではないか。

取材・文●小室功(オフィスプリマベーラ)




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