日刊鹿島アントラーズニュース

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2020年4月16日木曜日

◆高速ドリブラーの異名を持つ松村優太が プロの世界で描くストーリーとは?(高校サッカードットコム)



松村優太 Yuta.Matsumura


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 前を向いてボールを受けたら、まず仕掛ける。ときには強引とも思えるようなシチュエーションであっても果敢に挑んでいく。少々粗削りながら、そんなギラギラした姿勢がいちばんの魅力だろう。

 Jクラブ最多の20冠を誇る鹿島アントラーズで、プロのキャリアをスタートさせた松村優太は生粋のドリブラーだ。しかもそこに“高速”がつく。そうした所見に違わぬプレーを、公式戦で、トレーニングマッチで、日々の練習のなかで、披露している。

「プロの選手としてやっていけるのは10年ちょっと。そう考えたら、1年目だからといって遠慮などしていられない。どんどん試合に絡んで結果を出していきたい」と、ふだんから繰り返しているが、同時に「自分にはまだまだ足りないところばかりなので、日々、吸収していかなければいけない」と、しっかり足元も見ている。

 公式戦の出場チャンスはいきなり巡ってきた。

 今季のJリーグ開幕を1週間後に控えていた2月16日、ルヴァンカップ第1節の名古屋戦で、早々にプロデビュー。81分、プロ10年目を迎える大先輩の土居聖真に代わり、ピッチに飛び出した。

1点のリードを許す展開のなか、3枚目の交代カードとして登場。慣れ親しんだ右サイドハーフのポジションに入った。試合の残り時間を考えたら、アディショナルタイムを含め、10分あまりだ。エンジンはすでに温まっていた。ピッチに入ると、すぐにトップギアだ。

ボールを要求し、積極的にゴールに向かった。まずは同点に、できれば逆転を。そんな思いでプレーしていたであろうことは容易に想像がつく。

 ところが、勝利への飽くなき情熱が裏目に出てしまった。

 試合終了間際の90分。自慢のドリブルでペナルティエリアに進入すると、相手選手に挟まれる形でゴチャとなり、ボールが大きく前方にこぼれていく。必死に足を伸ばした松村は、その先にいた相手GKと激しく交錯し、一発レッドを受けてしまったのだ。

 プロの第一歩は苦い記憶とともに胸に刻まれた。

“松村優太”の名が全国に広まるきっかけになったのは、やはり先の第98回全国高校サッカー選手権だろう。“シズガク”こと静岡学園(静岡)の攻撃のキーマンとして24年ぶりの大会制覇に貢献。背番号はもちろん10番だ。

 準決勝の矢板中央(栃木)戦では、試合終了間際に自らのドリブル突破から得たPKを冷静に決め、決勝進出の立役者となった。たとえ相手2人に挟み込まれてもスピードに乗ったドリブルで、その間をグイグイいく姿に歓声が上がった。

 意外に、華奢なんだな。それが個人的な第一印象だった。次に、目力があるなと感じた。困難にぶち当たったとしても、そこを乗り越えていこうとする意志の強さが目に表れているような気がした。自分の考えを明確にいうし、聡明だ。

 お笑いの街・大阪出身だからかもしれない。無茶ぶりされてもすぐに一発芸で返せる引き出しをいくつか持っているのだとか。

 プレースタイルそのままに負けん気が強く、向上心にあふれ、笑いの感性も持ち合わせる松村は、4月13日に19歳になった。“まだ”ではなく、“もう”というはずだ。

 高速ドリブラーの異名を引っ提げてプロの世界に飛び込んできた高卒ルーキーが、これからどんなストーリーを、どんなスピード感で、描いていくのか、心底楽しみでならない。

(文=小室功)


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