鹿島アントラーズ三連覇[本/雑誌] (単行本・ムック) / 茨城新聞社
J1の鹿島アントラーズは20日、オンラインで取材に応じた。練習後に対応したザーゴ監督は、ようやく挙げた今季初勝利の余韻に浸ることなく、一喜一憂せずに自分たちが目指すサッカーを追及する姿勢の継続が重要だと強調した。
つなぐよりも縦の意識が重要だった
想像以上の長い時間を経て、ついに常勝軍団・鹿島が今季初勝利を挙げた。しかも、昨季のJ1チャンピオンの横浜F・マリノスから4ゴールを奪っての快勝だった。
長いトンネルを抜けたことで、当然ながらトレーニングに臨む選手たちにも安どが広がっているようだが、「それは当たり前のこと」と、ザーゴ監督は表情を崩さない。むしろ、これまでの試合でも、「選手たちがつくり出しているものは、数字に表れていたと思う。それをやり続ければ結果は出ると言い続けてきた。結果が出たからやり方を変えるというのではなく、やり続けることだ」と、これまでと変わらぬ姿勢を選手に求めた。
前節ではポゼッションサッカーを志向する昨季王者を相手に、あえてボール保持だけにこだわらずにロングボールも効果的に使って勝利を引き寄せた。ただし、これもコンセプトの転換ではなく、「サッカーは相手がいてこそのもの。相手を分析し、試合で相手から与えられる条件下では、つなぐよりも縦の意識が重要だった。僕からの指示で、それを選手が実践してくれた」と、自分たちが狙った形を具現化したものであると強調した。
勝利がない時期は、得点もオウンゴールによる1得点のみと、寂しい時間が続いていた。だが、ゴールへと続く道のりは「これまでの試合でも見せてきた」とザーゴ監督は語る。
「ファイナルサードまでいかに持っていくかは、監督の仕事の一つ。そこから先のアイディアやいくつかのパターンを提示するが、あとは選手の個の能力、ひらめきによる。最後の一番大事な得点にはつながらなかったが、形もできていたし、個の能力もあった。両方を試合の中で出せるような状況にならないといけないし、どちらかに傾いてもダメだと思う」
そのための道筋を、選手とともにトレーニングを通じて描こうとし続けてきた。
自分たちの力とコンセプトを信じつつ、相手をよく理解しながら勝ちにいく。「今日の練習でも、湘南への対策として狙うところを準備し始めた。それをしっかりと、試合で自然と出せることができればなと思う」。指揮官の口調に、最後までブレはなかった。
取材◎杉山孝 写真◎鹿島アントラーズ